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新教育運動期における自然保護運動の昂揚と環境教育の起源に関する比較史的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K02529
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分09010:教育学関連
研究機関関西学院大学

研究代表者

宮本 健市郎  関西学院大学, 教育学部, 教授 (50229887)

研究分担者 渡邊 隆信  神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30294268)
山崎 洋子  武庫川女子大学, 言語文化研究所, 嘱託研究員 (40311823)
山名 淳  東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (80240050)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
キーワード環境教育 / 自然保護 / 科学教育 / 新教育 / 自然学習 / 改革教育 / 生活改善運動 / 初等理科教育 / 都市計画 / 進歩主義教育 / エコロジー
研究開始時の研究の概要

1.子ども中心を理念とする新教育を主張した人物の思想、または新教育を実施した学校において、自然保護のための教育がどのような形で構想され、実施されたかを確認する。
2.人間が自然を利用して、生活の豊かさを求める限り、自然保護といいながらも、結果的に自然が破壊されることは避け難い。20世紀の環境問題はまさにその事例である。人間の生活の豊かさと自然保護との間にあったと思われる矛盾を解明する。
3.さまざまな形で出現した自然保護の思想と運動またはエコロジーの思想が、当時の新教育運動にどのような影響を与えたかを確かめる。そして、子ども中心(または人間中心)の思想を超えた新しい「新教育」の概念を提示する。

研究実績の概要

2023年11月にアメリカ教育学会が開催され、シンポジウムのテーマが「アメリカにおける環境教育の起源と現状と課題」であった。研究代表者(宮本)がシンポジウムを企画し、「環境教育の起源としての自然学習――Nature-Study Societyの活動を中心として――」を報告した。欧州やアメリカで19世紀末に急激に産業開発と都市化が進み、その反面で自然の破壊と生活環境の悪化を懸念する声が各地で出ていた。そこから自然保護運動が始まったのだが、それがただちに環境教育へと発展したわけではなかった。アメリカを見ると、19世紀末から自然学習運動が起こり、かなり普及し、小学校の教育実践に相当の影響を与えたものの、そのねらいは、自然への共感や生命への畏敬などの心情を重視することが中心であった。自然学習の思想は、人間と自然との関係を問い直すという点で、現代の環境教育の起点になったと見ることはできるが、実際には、1920年代になると自然学習は科学教育によって打破され、忘れ去られた。
しかし、自然学習の思想は完全に消滅したのではなく、20世紀後半になって、環境問題の深刻化を指摘したレイチェル・カーソンやアルド・レオポルドに受け継がれており、現代の環境教育に強い影響を残していた。以上のことが、シンポジウムとおして、ほぼ確認された。
新教育運動が環境教育にどのようにかかわったかは、本研究ではまだ解明されていない。自然学習を推進した人々が、進歩主義教育の隆盛期であった1920年代に忘れ去られていったのはなぜであるか。その原因としては、自然学習が科学教育に置き換えられたこと、自然学習の推進者が初等学校教師ではなく、裕福な教養人になったことがなどが考えられる。この点を確認することが今後の課題として残っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

アメリカについては、ほぼ順調に進んでいる。相当の量の一次資料がネットで収集できるのようになった。アメリカ自然学習協会の資料は、主としてコーネル大学にかなりあり、デジタル化も進んでおり利用しやすい。Nature-Study Reviewなどはすでに公開されており、それを活用して、かなりの情報を得ることができている。
イギリスについては、1900年ころのイングランド、ウェールズ、スコットランドの教育規定等を収集して調査したものの、自然学習や環境教育のテーマに合致するものは見つからなかった。教育規程と教育の実態とは一致するとは限らないので、さらに教育の実態を示す資料を詳細に見ていく必要があった。
ドイツについては、2023年度になってようやく海外調査が可能となり、資料収集を始めた。資料は集めたものの、分析にいたっていない。

今後の研究の推進方策

アメリカでは、1920年代以後、自然学習が科学教育に置き換えられ、自然との共感や生命への畏敬という思想が忘れられた。自然科学が急激に発展したことで、人間が環境を利用する方法がつぎつぎに開発され、自然は人間が利用すべき対象となったと考えられる。アメリカで発行された 『自然学習評論』や『自然雑誌』を詳細に調べることで、自然学習から科学教育への転換とその影響を確認することができると思われる。
イギリスについては、視学官トーマス・ゴドルフィン・ルーパーが、カリキュラムに自然学習を導入することに積極的であったことがわかっているので、彼の残した資料を手がかりに、初等学校の実態を詳細にみていく。また、イギリスでは、新教育運動の時期に『自然学習』が発行されており、その分析を進めれば、さらに詳細な実態が見えてくるはずである。
ドイツについては、バルケンホフ作業学校におけるフォーゲラーの思想と教育実践について、これまでに収集した一次資料を分析して、「自然」との調和を基調として同校での生活と学習の実態と特質を明らかにする予定である。
今年度の後半では、アメリカ、イギリス、ドイツの状況を比較して、各国における環境教育の起源を特定する。いずれの国においても、自然保護の運動が始まったことは確認できると思われるが、その運動が環境教育として発展したことを証明することは、おそらく困難であろう。そうであるならば、新教育運動の時期に、「自然との共感」(コムストック、ベイリ)、「生命への畏敬」(シュヴァイツァー)、「土地倫理」(レオポルド)という思想が生まれていたにもかかわらず、それらが継承され、発展して行かなかった原因を探らなければならない。それは、現代における環境教育が抱える課題とつながっているはずである。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (23件)

すべて 2024 2023 2022 2021 2020

すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 オープンアクセス 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 5件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] 新教育運動期における公江喜市郎の教育改革への提言 ―「自学主義」と女子教育思想に焦点をあてて―2024

    • 著者名/発表者名
      山崎, 洋子
    • 雑誌名

      武庫川女子大学女性活躍総合研究所紀要

      巻: 2 ページ: 1-15

    • DOI

      10.14993/0002000129

    • URL

      https://mukogawa.repo.nii.ac.jp/records/2000129

    • 年月日
      2024-02-26
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] アメリカにおける自然保護運動の起源と新教育運動――自然と子どもの関係史に関する予備的考察――2023

    • 著者名/発表者名
      宮本, 健市郎
    • 雑誌名

      教育学論究(関西学院大学教育学会編)

      巻: 15 ページ: 105-115

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Free spaces and ‘pedagogical protection’: On the asylum theory of Ortwin Henssler and its implications for education2022

    • 著者名/発表者名
      Yamana, Jun
    • 雑誌名

      Educational Philosophy and Theory

      巻: 56 (ahead of print) 号: 2 ページ: 162-171

    • DOI

      10.1080/00131857.2022.2094246

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] イギリス新教育運動初期における「自然学習」の勃興―社会改革と用語選択に着目して2022

    • 著者名/発表者名
      山崎洋子
    • 雑誌名

      言語文化研究所年報(武庫川女子大学)

      巻: 32

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Changing Principles of the NEF and Beatrice Ensor: Reflection on the Entangled History of the New Education Movement2022

    • 著者名/発表者名
      Yoko Yamasaki
    • 雑誌名

      Report of WEF 100th Anniversary, The 45th World Education Fellowship Tokyo International Conference, 2022

      巻: 45 ページ: 60-63

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際共著
  • [雑誌論文] 「全人教育」の歴史と展望:提言2022

    • 著者名/発表者名
      山名淳
    • 雑誌名

      教育新世界

      巻: 70 ページ: 10-14

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 小原國芳における「全人教育」の空間と思想―学園と田園都市の「新しい生活」2022

    • 著者名/発表者名
      山名淳
    • 雑誌名

      全人教育研究センター年報(玉川大学教育学部)

      巻: 9

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] アメリカの公立学校における国旗掲揚運動の起源と機能転換2021

    • 著者名/発表者名
      宮本健市郎
    • 雑誌名

      関西学院大学『教育学論究』

      巻: 13 ページ: 143-152

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「共同体としての学校」の起源と史的展開-ドイツ新教育における「ゲマインシャフト」概念に着目して2020

    • 著者名/発表者名
      渡邊隆信
    • 雑誌名

      教育学研究(日本教育学会)

      巻: 87(4) ページ: 29-41

    • NAID

      130008105810

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Philosophy of Education in a New Key: Voices from Japan2020

    • 著者名/発表者名
      Yamana Jun, et al.
    • 雑誌名

      Educational Philosophy and Theory

      巻: 54 ページ: 11-12

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] 環境教育の起源としての自然学習――American Nature-Study Society の活動を中心に――2023

    • 著者名/発表者名
      宮本健市郎
    • 学会等名
      アメリカ教育学会 (第35回大会シンポジウム、関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 災害の記憶をめぐる「浮遊するシニフィアン」――「郷土」への思いを継承する道徳教育に寄せて2023

    • 著者名/発表者名
      山名淳
    • 学会等名
      日本道徳教育方法学会(第29回大会、日本大学工学部)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] アメリカにおける環境教育の起源としての自然学習2023

    • 著者名/発表者名
      宮本健市郎
    • 学会等名
      関西学院大学教育学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] メディアとしての玉川学園――印刷物と空間の間で教育が展開する2022

    • 著者名/発表者名
      山名淳
    • 学会等名
      イデア書院設立100周年&児童百科辞典刊行90周年記念講演会「書物の海へ──イデアとメディア」
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Historical Studies of Western Education: An Overview2022

    • 著者名/発表者名
      Miyamoto, Kenichiro
    • 学会等名
      International Standing Conference for the History of Education
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] アメリカにおける自然保護運動の起源と新教育運動の展開-自然と子どもの関係をどのようにつくったか-2022

    • 著者名/発表者名
      宮本健市郎
    • 学会等名
      関西学院大学教育学会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] アメリカの公立学校における国旗掲揚儀式の起源と機能転換2021

    • 著者名/発表者名
      宮本健市郎
    • 学会等名
      アメリカ教育学会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] Changing Principles of the NEF and Beatrice Ensor: Reflection on the Entangled History of the New Education Movement2021

    • 著者名/発表者名
      Yoko Yamasaki
    • 学会等名
      World Education Fellowship (Tamagawa University)
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 「全人教育」の空間と思想―学園と田園都市における「新しい生活」2021

    • 著者名/発表者名
      山名淳
    • 学会等名
      世界新教育学会 (玉川大学)
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [図書] 森のような教師2023

    • 著者名/発表者名
      渡邊 隆信
    • 総ページ数
      176
    • 出版者
      共和国
    • ISBN
      9784907986742
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] 記憶と想起の教育学―メモリー・ペダゴジー、教育哲学からのアプローチー2022

    • 著者名/発表者名
      山名淳(編著)
    • 総ページ数
      324
    • 出版者
      勁草書房
    • ISBN
      9784326251674
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 実践につながる教育原理2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊隆信(共著)
    • 総ページ数
      196
    • 出版者
      北樹書房
    • ISBN
      9784779306785
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] イギリス新教育運動の生起と展開2022

    • 著者名/発表者名
      山崎洋子
    • 総ページ数
      644
    • 出版者
      知泉書館
    • ISBN
      9784862853547
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

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公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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