研究課題/領域番号 |
20K02554
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 山口学芸大学 |
研究代表者 |
松村 納央子 山口学芸大学, 教育学部, 教授 (50341136)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | フレーベル / 言語 / 媒介学校 / 読むこと / 書くこと / 対話 / 就学前教育 / 教育遊具 / 母の歌と愛撫の歌 / 図像 / 教授 / 自己教育の立方体 / 初等教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、幼稚園から初等学校を経て上級学校へという学校構想を含む「人間の発達」を企図、実践に携わった教育者のひとりとしてフレーベル(1782-1852)を捉え、学習者の内的変化のプロセスと教育者の関与に寄与する原理として彼の言語教授に関する議論を検討する。フレーベルの教授論においては、言語は事物の直観の一要素としてばかりでなく、事物の諸要素をひとつの認識に結び付けるもの、概念と行為とを内包する領域として捉えていた。その論理的枠組を解明するために19世紀後半以降の編集版に加え、2000年以降に編集された原典批判を伴う資料・手稿を採用し、言語教授の就学前教育から初等教育への架橋モデルを提示する。
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研究実績の概要 |
2022年度、日本ペスタロッチー・フレーベル学会第39回大会にてシンポジウムを企画、実施した。その趣旨説明において、就学前教育から初等教育への接続モデルとしてフレーベルの「リナはどのように読み書きを学ぶか」(1850)を基礎資料とした。この「リナはどのように読み書きを学ぶか」に登場する6歳の女児リナは媒介学校段階にあり、「父に手紙を書きたい」という願いから、その母、おじ達との対話を通して、書くこと・読むことを学んでいく。学びの過程として、まず幼稚園で遊んだ棒片からラテン大文字を形づくる。その際音と文字とを結びつけつつ活動する。そして石盤を用いて文字を書く練習へと進み、父への手紙に何を書こうか考え、物語中盤ではラテン大文字で父に手紙を綴るに至る。また、リナは幼稚園の年下の子ども達からどのように読み書きを学んだか実際にやってみせるよう求められ、それに応答する場面があり、子ども達の中で遊び、学ぶ際にも対話が展開されている。 就学前教育と初等教育との接続において、フレーベルの対話、教育遊具ならびに教材により構成される言語教授は、子どもにとっては遊びの延長線上での活動であっても、その子どもに応答する大人の関わりはフレーベルの学校教育学的な言語教授を基盤とするものである。その点では、就学前教育において子どもに関わる者と初等教育において子どもに関わる者両者が何に携わっており、何を目指しているか共有した上でそれぞれの実践に生かす試みである。就学前・初等教育いずれにおいても対話を媒介とする教育方法を採用することによりその連続性を提示しようとしたことが確認できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、ドイツの図書館・公文書館での資料収集と読解を行うこととしていたが、コロナ禍により海外渡航を控えていた。従って、書簡・構想を含む手稿資料の調査・収集やフレーベル存命中の刊行物を活用した言語教授論の精査にまで至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
2023年3月、ドイツ テューリンゲン州立フレーベル博物館にて資料調査を行い、同館長イザベル・シャムベルガーと意見交換を行った。この調査で得られた知見を手がかりに、更にドイツの図書館等に所蔵されている文献についても資料調査を行う。幼稚園と初等学校の中間段階とされた「媒介学校」の教授論のみならず、言語そのものを習得する教育活動ならびに言語を媒介とする(換言すれば教育者と児童生徒との対話を前提とする)教育活動の教授論的性格ならびにその構成を描出するために、書簡・構想といった手稿の分析による理論-実践の往還を抽出したい。
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