研究課題/領域番号 |
20K02567
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
牛尾 直行 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 先任准教授 (10302358)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ケーララ・モデル / NEP2020 / DEGSN / 就学奨励策 / 基礎教育の普遍化政策 / 義務教育 / ケララ州 / インド / タミル・ナードゥ州 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、インドにおける基礎教育の普遍化について、ドラヴィダ文化圏の南部2州(タミル・ナードゥ州・ケララ州)の教育政策・教育制度・社会文化的背景等を比較考察するものである。そのために、3年間にわたり数次の現地教育調査を実施し、2000年代に入ってからのSSAやRTEの政策実施・法施行の実際を中心に、都市部・地方部の差、SC/ST/OBCsといった集団などに着目して解明するものである。
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研究実績の概要 |
2022年度中に実施した本科研に関わる研究は主として以下の4つ。 1.ケーララ州などにおけるインド現地調査:日本とインドの新型コロナ感染症の状況が改善し、2022年8月には本科研研究開始以来初めてインドのデリー・ケーララ州等において現地教育調査を実施した。特にケーララの調査では、ケーララ州の学校(公立・エイデッド・プライベイト)の様子を視察し、同時に大学教員や学生から「なぜケーララは教育先進州になり得たのか」を聞き取ることができた。帰国後の文献考証によっても以下の点を確認したのは、①ケーララ・モデルと呼ばれる民主的な社会開発モデルの存在、②それの背景には開明的な藩王主の存在、キリスト教ミッショナリーの影響、独立後の共産党政権があること、③その結果、インド国内ではいち早く1958年に教育法(Education Act)が作成され、④無償給食制度や無償教科書・制服給与制度など様々な就学奨励策が古くから採られてきたことである。 2.NCERTのDEGSNユニット:また、上記の現地調査ではデリーのNCERT内にあるDEGSN(Department of Education of Groups with Special Needs)も訪問し、数名の教授たちとインドの教育を受ける権利保障についてディスカッションを行い、このユニットが現代インドの障害者だけではなくSCやSTなどマイノリティも含んだ教育上の権利保障を手がけていることを学んだ。 3.NEP2020などインドの教育政策研究:現代インドにおける重要な教育政策文書であるNEP2020について、主に基礎教育普遍化に関わる箇所について読解を行った。 4.日本教育制度学会発表「インド・ケーララ州における基礎教育普遍化とその社会的背景」:11月には日本教育制度学会第29回大会の自由研究発表として、上記1~3の内容を要約的に報告をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.新型コロナ感染症の流行・蔓延のため、2020年度および2021年度にインド現地調査が実施できなかったことが、本研究の進捗遅延の最も大きな理由である。本研究は、ケーララ州を中心とするインドの教育制度・政策研究であるため、文献やWEBから収集できる情報には限界があり、現地教育調査が必須である。その意味では、2022年度は夏に現地調査が実施できたことは本研究の進展に大いに役立った。また、現地教育調査が実施できなかった2020年度・2021年度に行った日本国内での文献研究による基礎研究が、現地教育調査の際に大きく役立ったことも、進捗は芳しくないながらも地道に継続していかなくてはならないと考えている。 2.理由の第2は、当初予定していたインド・ケーララ州の調査協力者と連絡が途絶えてしまい、新しい調査協力者の方が教育専門ではない子とも関係して、ケーララ州での調査がスムースに進まないことも一つの要因である。今後は、昨年夏の調査で研究協力関係を築いた現地協力者を中心に、ケーララ州州都トリバンドラムなどに地域を限定して調査を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
本来、本研究課題が予定していた研究期間は2020年度~2022年度の3年間であったが、主に世界的なコロナ渦のため、2023年度1年間分を研究期間延長をして、以下のことに取り組む予定である。 1.2度目の現地調査:2023年夏に2度目のインド現地教育調査を予定している。昨年の現地調査では、①デリーのNCERTのDEGSN研究室で現代インドの社会的弱者層に対する様々な施策が複雑に存在し、それがどのように機能しているのか?まだ未解明のまま、②ケーララ州の初等・中等学校における調査が不十分、③2000年代に入ってからのRTE2009法やサルバシクシャアビヤーン政策等と、現在のNEP2020との関係が検証できていないなどの課題が山積している。それらの解明につながるキューを探る必要がある。 2.主にケーララ州の基礎教育普及について社会文化的背景に基づく歴史検証が必要:上記のためにも、独自の教育発展を遂げているケーララ州に着目し、社会文化的背景とケーララモデルと呼ばれる独自の社会開発モデルと基礎教育普及策について考察を深める。 3.2000年代に入ってからインド全体の教育施策とケーララ州のそれとの比較考察:この課題を追求するために、上記①と③をつなげていく考察が必要となる。それが本研究課題のインドにおける基礎教育普遍化が一見成功しているが、様々な課題を内包していることの解明につながると考えている。
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