研究課題/領域番号 |
20K02594
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
小松 太郎 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (20363343)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 平和教育 / 平和構築 / 平和 / 紛争 |
研究開始時の研究の概要 |
今日、武力紛争は場所を選ばずに起きている。国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)は、持続的な平和構築に教育が果たす役割に期待している。本研究では、武力紛争に影響を受ける社会で実施されている平和教育の思想背景、カリキュラム構造、実践とその効果を整理・分析することで、持続的な多文化共生を促す教育についての政策的示唆を導き出す。具体的には、体系的なデスクレビューおよび多様な地域・コンテクストを踏まえて選んだ複数の事例研究を行う。研究対象は、平和教育の主たる場であり、創造的実践が可能でかつ地域社会に根差したノンフォーマル教育とする。
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研究実績の概要 |
研究3年目では、サラエボ(ボスニア・ヘェルツェゴビナ国)での現地調査を実施した。コロナ禍のために研究2年目において研究内容を修正した上で、事例対象国をボスニアに絞り、ノンフォーマル平和教育(NFPE: Non-formal peace education)の実態調査を行った。具体的には、ボスニア全土の学校教員を対象とした異文化間対話を促す事業「ETHOS initiative」を行っているTPO Foundation Sarajevoの関係者、NFPEに詳しいサラエボ大学教員2名にヒアリングを行った。世界的に、学校教育では批判的思考や創造性を強化する方向にあるが、ETHOSは、協働や共感といった人間関係を重視した価値観を推進している。また、民族の違いを超えた教員間のネットワーク構築を促しているところに特徴があることが判った。また、公教育での比較検討科目「民主主義と人権」(現地では市民教育を表現される)の担当教員3名、米国国際開発庁による委託評価を行った関係者に聞き取りを行った。地方自治体に高校生が政策提言を行う実践的な学びの機会があるが、この試みが教師の意欲に左右されることなどが問題点として挙げられている。また、生徒の保護者によるクレームを恐れて教師が政治問題などについて議論することを躊躇う傾向が見られる。民族政治の影響が強い公教育の場で、教師がいかに意欲を維持し、自由な議論が出来る環境を作れるかが課題である。加えて、今回の現地調査では、戦争と平和に関する展示を行っている博物館を三つ訪問し視察した。中でも、「子ども戦争博物館」は、戦時中の子どもの生活を紹介したものであるが、戦争の悲惨さを伝える日本の平和教育に通じるものがあり、公教育で十分に伝えきれない暴力の実態を紹介しているという点で意義深い。ETHOSのようなノンフォーマル教育事業がこのような資源を活用する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究内容の修正を行ったため、予定通りの期間で研究を終了出来る見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究内容修正時には、2~3か国での調査を予定していた。しかしながら、2022年度にもコロナ禍の影響は残ったため、調査対象国をさらに絞ることとした。研究期間が残り2年間であることを鑑み、今後は基本的にボスニア・ヘェルツェゴビナ国のみを調査対象とする(状況次第では、もう1か国を調査対象とする)。その理由としては、研究者がこの国で長く研究を続けてきたこと、そのため、現地調査を行いやすく、また、今後コロナの新型が発生するなどのリスクへの対応も出来ると判断したためである。具体的な研究内容としては、2022年度のサラエボでの調査結果を基に、構造的暴力が残る分裂国家において、いかにNFPEが自律性(政治的中立性、民主的運営、系統主義にとらわれないプログラム、等)を生かして平和教育を実現しているか、そしてそれは持続可能なのかという問いを追求する。2023年度は、サラエボでNFPE(特にETHOSの関係者)、および公教育での市民教育を担当する教員や関係者へのヒアリングを進める。また、可能であれば、プログラム提供者および受講者への自記式アンケートおよび集団面接、関連活動の非参与観察(指導法や講師と受講者のインターアクション)を行う。最終年度では、現地での補足調査を行う予定である。調査結果は、これまで行ってきた先行研究レビューや、他の研究費で同時に進めているタイやヨルダンでの教育調査の結果にも参照し、新制度派理論等を用いつつ分析を行う。その結果は国際開発学会や比較教育学の国内外の関連学会等で発表する。また、これら学会の紀要誌への投稿を行う。
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