研究課題/領域番号 |
20K02623
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
廣田 英樹 国立教育政策研究所, 生涯学習政策研究部, 特任総括研究官 (80402650)
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研究分担者 |
本田 由紀 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (30334262)
白川 優治 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 准教授 (50434254)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | PIAAC / 教育と仕事 / 教育とスキル / 男女の賃金格差 / 長時間労働 / 項目反応理論 / 低生産性 / 国際比較 / ミンサー型賃金関数 / 労働生産性 / ミクロデータ / 標本調査法 / 職業と教育 / スキル / ミスマッチ / 国際成人力調査 |
研究開始時の研究の概要 |
2011年に日本を含む世界24か国で実施された国際成人力調査(PIAAC)は、教育の成果としてのスキルを、①リテラシー、②ニュメラシー、③ITを活用した問題解決能力の3つのテストで測定したが、①と②で日本の回答者の平均得点は参加国中最高を記録した。他方でPIAACは、回答者の属性に関して延べ228問にも上る質問を行っており、それによれば、自分の仕事に対して自分の学歴が過剰であると考えている者の割合が参加国中最多に上るなど、日本においてスキルと仕事と教育との間に大きなミスマッチが存在する可能性が示唆されている。本研究は、PIAACのデータを独自に分析して日本が抱える課題を客観的に分析・評価する。
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研究実績の概要 |
令和5年度においては、令和4年度に実施したインターネットのモニター調査の結果を分析し公表することが活動の中心となった。具体的には、9月に開催された日本教育社会学会で、廣田は「日本の男女のスキル使用の格差についての分析」と題する発表を行い、研究分担者の本田も「仕事における大学教育の『役立ち度』とスキル使用が収入に及ぼす影響-ジェンダー差に注目して-」と題する発表を行った。これらの発表の元となったモニター調査は、「日本の典型的なホワイトカラーサラリーマン」の仕事と生活の実態を把握するために大卒正社員を対象として実施したものである。前者の発表では、①多くの人は生活に必要な収入を得るために残業に従事していること、②配偶者の有無、とりわけ子供の有無によって、男性は残業時間が増える一方で、女性の残業時間は増加せず家事時間が増加する傾向があり、いわゆる「男性稼ぎ主モデル」が現在でも強固に残っていることなどを明らかにした。また後者の発表では、男性と女性とで、大学教育の「役立ち度」と仕事で使用するスキルの種類に違いがあり、男性は大学教育の役立ち度に関する評価が高く、スキルに関しても収入との相関が大きいものを多く使用する傾向がある一方で、女性はそうではない傾向があることを明らかにした。またその後も廣田は、国立教育政策研究所の紀要第153集に「大学卒業者の認知スキルの国際比較」と題する論文を作成して投稿したが不採択となった。投稿した論文の内容は、リテラシーやニュメラシーなどの認知スキルに関して日本の大学卒業者は参加国中で最高レベルにある一方、学ぶことへの積極的な態度に関しては逆に参加国中で最低レベルにあることを明らかにした上で、その原因を考察したものであるが、内容を更に改善した上で、令和6年5月に開催される日本高等教育学会の年次大会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度実施したモニター調査の結果について分析を行い、それを発表するという目標は一応達成することができた。しかしその一方で、モニター調査の結果の分析方法について疑問が生じるに至った。具体的にはスキル使用をどのように数値化するかという問題である。OECDによるPIAACの公開データにも、スキル使用に関して項目反応理論に基づいて算出されたスコアが収載されているが、この処理については項目反応理論の基本的な原理に照らして重大な瑕疵がある疑いがある。具体的な問題点は、①仕事におけるスキルの使用は、学力のように一直線上にその高低・大小を位置付けることは困難であること、②仕事におけるスキルの使用は被験者集団全体で正規分布していないにもかかわらずベイズ推計法を用いて推計していること、の2点である。研究成果全体の取りまとめを行う上でこの問題について究明することは必須であるので、令和6年度はまずこの問題について決着を付け、その上で研究成果全体の取りまとめを行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度実施したモニター調査の結果について分析を行い、それを発表するという目標は一応達成することができた。しかしその一方で、モニター調査の結果の分析方法について疑問が生じるに至った。具体的には、OECDによるPIAACの公開データには、背景調査におけるスキル使用の設問への回答から、項目反応理論に基づいて算出されたスコアが収載されているが、この処理については項目反応理論の基本的な原理に照らして重大な瑕疵がある可能性に気付くに至った。モニター調査でもPIAACのスキル使用と同様の設問を用いているので、令和6年度中にこの問題について究明して、研究成果全体の取りまとめを行いたい。
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