研究課題/領域番号 |
20K02634
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
山下 倫実 十文字学園女子大学, 教育人文学部心理学科, 教授 (30514799)
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研究分担者 |
加藤 陽子 十文字学園女子大学, 教育人文学部, 教授 (40409701)
石田 有理 十文字学園女子大学, 教育人文学部, 准教授 (00618168)
布施 晴美 十文字学園女子大学, 教育人文学部, 教授 (00227505)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 夫婦関係 / 育児ストレス / 親アイデンティティ / 育児サポート / 夫婦間サポート / 父親 / 母親 / 親役割の受容 / 出産前教育プログラム |
研究開始時の研究の概要 |
近年,母親たちの子育てで感じる孤独感やストレスが問題となっている。父親の育児参加に対する社会からの要請は非常に大きいものの,どのように育児に参加すればよいのか戸惑う男性の現状もある。 そこで,本研究では第1子出生後の夫婦を対象に,(1)母親が父親に求める育児サポートと実際の育児サポートの不一致,(2)育児サポートの不一致が夫婦双方の育児ストレスに及ぼす影響過程,(3)「親としての自分」の受容に必要な夫婦間サポートについて明らかにする。 そして,(1)~(3)をふまえた父親を対象とする出産前教育プログラムを開発し,良好な夫婦関係を基盤とした新しい子育て支援の形を提案することを目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度については,研究目的に沿ってペアデータを回収できる新たなWEB調査会社を選定し、7月初旬に変更となった研究方法について再度倫理審査を受け,7月中旬に承認された。そのため、7月末より予定していた①育児サポートの不一致が育児ストレスに及ぼす影響過程,②親役割の受容を促進する夫婦間サポートの仕組みの両方について検討するための調査に向けた準備を開始し,10月31日に調査が終了した。このデータについては現在分析を進めており、その成果の最初の報告として、2024年度の日本心理学会での発表を予定している。今後,早急に目的に沿った分析を進め、論文を執筆することを予定している。また,これまでの分析結果を基に支援モデルの検討に入ることも予定している。 また昨年度,既に分析を終えて日本心理学会で発表予定であると報告していた2022年度に学内の助成金を得て実施した調査データの分析結果について発表し、その内容についても新たな研究結果を含めて紀要論文として投稿した。具体的には,子どもの発達段階別に構造方程式モデリングによる分析を行い,①幼児期から児童期前期にかけては,夫婦関係の良好さが育児の肯定感にもつながり,親アイデンティティの獲得を促進すること,②児童期後期からは,夫婦関係の良好さは育児の負担感や不安感の軽減にもつながり,親アイデンティティを支えるという結果を報告した。これらの結果は,夫婦の関係性評価をいかに乳幼児期から良好に維持することが重要かを示す1つの根拠であり,今後のプログラム作りに役立つ知見であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで本研究課題を進める前提となる大規模調査面接(2020年度)のコロナウィルスの感染拡大による遅れから始まり,2021年度には共同研究の枠組みを大きく変更せざるを得ない事態の発生,さらに2022年度の調査実施の延期により,計画全体に遅れが出ていたが,2023年度は産後3年未満の夫婦300組を対象とした調査を実施することができ、現在も分析を進めている最中である。 また、これまでの研究結果について、2024年5月8日にNPO法人新座子育てネットワークが開催した「父親支援フォーラム」にて講演を行い、地域で父親支援をしている団体との関係づくりも進めている。このような取り組みも、2024年度に予定している父親を対象とする出産前教育プログラムの計画・実施に向けた準備の1つである。 2023年度までに得られた夫婦の関係性が親IDにどのようなプロセスを経て影響するのか,どの時期に介入するのが効果的なのかを示唆する結果は,本課題における父親を対象としたプログラム検討にも十分に活用されうるものである。 以上をふまえると,調査の実施はやや遅れたものの,今年度は本研究課題の目的に沿った調査が円滑に進められ,研究計画通りに研究を終えることが可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
遅れていた①育児サポートの不一致が育児ストレスに及ぼす影響過程,②親役割の受容を促進する夫婦間サポートの仕組みの2つを明らかにするための調査を1回にまとめて実施した。今後は分析を急ぎ,この調査で得られた結果については2024年度内に論文を投稿する予定である。また,2度の調査を実施する予定であったが,それらを1回にまとめたことで明らかにならなかった点があれば,親になる過程を明らかにする研究で有効だった夫婦間サポートに関する半構造化面接を実施するなど,研究の質が落ちない工夫をする。 また,今年度はこれまでの研究成果に基づく支援モデルの作成を行っていく予定である。研究の過程で,①夫婦の関係性評価が良好であることが,幼児期から青年期前期までポジティブな親IDを支えること,②育児期の夫婦関係および親IDの形成には、父親が子どもの世話を行うという直接的育児行動よりも母親に対して支援する間接的育児行動が重要であること,③男性側の親アイデンティティが否定的な場合には,妻側の育児ストレスにも影響し,夫婦関係も悪化することなどを明らかにしてきた。これらの知見を整理し,子育てにおける母親へのサポートという側面的支援を夫婦間で擦り合わせるための父親を対象とした出生前プログラムの開発を目指す。
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