研究課題/領域番号 |
20K02674
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小田倉 泉 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10431727)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
|
キーワード | ユマニチュード / レット症候群 / 意見表明権 / 聞かれる権利 / 非言語的コミュニケーション / コミュニケーション / 子どもの参画と意見表明権 / 保育者の応答技術 |
研究開始時の研究の概要 |
レット症児は言語によるコミュニケーションは困難であると考えられているが、有意語を発することができる子どももおり、相手からの言語的メッセージを受け取る能力を十分に有していると言える。また、相手の目をじっと見つめて凝視し、視線を合わせて意思伝達しようとすることができることから、このようなレット症児が、保育・教育の場で、保育者・教師との信頼関係を築き、幼児期・児童期を充実して過ごすための関わり方の基準が必要である。そこで、本研究ではレット症児との応答的関係を確立する方法として、ケア技法であるユマニチュードの特性を基本とする保育者の行動技術を提案することを目指す。
|
研究実績の概要 |
レット症候群の診断基準の一つには音声言語コミュニケーションの喪失が挙げられているが、レット症候群の患者は言葉以外の方法でコミュニケーションをとることが報告されている。 国連子どもの権利委員会は、障害者権利条約採択に先立って一般的意見第9号「障害のある子どもの権利」(2006)を発表している。ここでは、障害児が自分に影響を与えるあらゆる手続きにおいて意見を表明し、自分に影響を及ぼす事柄の決定に参加することが不可欠であることが述べられている。この3年後に出された一般的意見第12号「子どもの聞かれる権利」においては、障害のある子どもが意見を聞いてもらうことに困難を経験している現実について更に強い言及が為されており、そこには聞く側の聞き取りの困難さにもあることをも暗に示されている。本研究では、障害のある子どもの意見表明権保障のための手段としてのユマニチュードの可能性を検討し、ユマニチュードと権利保障の実際的な結合を明らかにすることを目指した。 「ユマニチュード=人間らしさ」と命名されたケア技法は、ケアを行う患者を常に対話の対等な相手、コミュニケーションのパートナーとして見、相手から発せられる言語的、非言語的メッセージを敬意をもって受け止めようという傾聴の姿勢がある。その実践には意見表明権の保障、更に、聞かれる権利の保障、という2つの権利の保障が見いだされ、それらは障害のある子どもの権利保障のための車の両輪とも言えるものである。従って、ユマニチュードのケア行動には、基本的権利を保障するという意味が含まれており、それは価値を実現させる手段としての技法である。これらのことから、障害のある子どもの人間としての尊厳を尊重し、価値ある大切な存在であるというメッセージを確実に子どもに伝達し、且つ子どもがそれを確実に実感するための基本的理論と実践技法をユマニチュードは内包していることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
子どもの権利に関する国際文書における障害のある子どもの権利、特に意見表明権に焦点を当て、国連子どもの権利条約及び子どもの権利委員会の言及から、それらの権利の実施に対する国際的視点を明らかにした。また、ユマニチュードの哲学と技法とを権利保障の観点から分析し、ユマニチュードが基本原理としている「人としての尊厳をもって生きる権利」が、技法を通して「人間として尊重されているという感覚に基づく人としての十全性の充足」を実現し、反応の困難な患者との双方向的なコミュニケーション方法が、意思表明に困難をもつ障害のある子どもの意見表明権と聞かれる権利の実施に対して多くの示唆を提供するものであることが明らかとなった。 数年間、コロナ禍のため実施することができなかったレット症候群の子どもの担任教師へのインタビュー調査を実施し、教師とレット症候群の子どもとのコミュニケーションの実際について分析を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
レット症候群の子どもの担任教師へのインタビュー調査結果の分析を進めると共に、インタビュー調査の対象を広げ、幼児期から児童期へのプロセスにおける傾聴、応答について明らかにすることを目指す。また、レット症候群の子ども特有のコミュニケーション手段に応じた技法をユマニチュードの哲学と技法を基に検討し、ユマニチュードを基にしたレット症候群の子どもとの応答技術の開発を行う。
|