研究課題/領域番号 |
20K02709
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
鈴川 一宏 日本体育大学, 体育学部, 教授 (10307994)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 日本人学校 / 中学生 / ストレス / 体力 / 健康観 / 身体活動量 / 睡眠 / 生活習慣 / 睡眠習慣 / POMS / TMD得点 / 子ども / メンタルヘルス / 身体活動 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、子どもにおける精神的ストレスが問題となっており、子どもに対するメンタルヘルスケアの重要性が叫ばれている。一方、海外に暮らす日本の子どもたちは不安定な治安状況や日本と異なる自然環境の中で、日常的に精神的なストレスにさらされている。さらに、海外での生活には制約が多いことから身体活動量が日本国内の子どもよりも顕著に少なく、運動や遊びによるストレスの発散ができていないことが推察される。そこで、本研究課題では限られた期間の中で、これからのグローバル人材育成に資する海外子女教育環境の充実のためにも、海外に暮らす子どものメンタルヘルスにおける実態について特に身体活動量と生活習慣から明らかにする。
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研究実績の概要 |
日本人学校の中学生を対象とした昨年度の調査で、メンタルヘルスケアには不眠と健康状態が関係している可能が考えられた。また、身体活動量が自己の体力評価に影響することから、身体活動量の低下は活力の低下につながることが危惧された。本年度は、東南アジアにあるA日本人学校の中学1~3年生の109名に調査を行い、研究への同意が得られ回答に不備のない100名(男子43名、女子57名)を対象として男女別に分析を行った。 調査は、質問紙により生活習慣、身体活動量、睡眠の質、ストレス、そしてストレスや体力と健康に関する自己評価などについて行った。体力の自己評価として「体力がある」「あまり体力がない」「全く体力がない」の中から選択させ、各項目について3群における一元配置分散分析を行った。また、回答による出現率にカイ二乗検定を行い、さらにストレスの使用としてPOMS(短縮版)のTMD得点を従属変数としてアテネ不眠尺度、身体活動量を独立変数に投入して重回帰分析を行った。 結果、男女ともに体力があると回答した者はアテネ不眠尺度の結果が顕著に良好であった。そして、女子では体力があると回答した者はIPAQの高強度と総身体活動量が有意に高値を示し、体力と健康、さらに健康とストレスに関する回答出現率に有意な関係が認められた。一方、男子では体力がある者でPOMSにおける複数の尺度が顕著に良好であった。また、男女ともにTMD得点への影響にはアテネ不眠尺度が有意に関連していた。 以上のことから、日本人学校に通う中学生にとって、まず良好な睡眠習慣が重要と考えられた。また、男女で違いがあったものの体力、健康観、睡眠、ストレス、身体活動量が相互に関係していることから、身体活動が少ない日本人学校の子どもたちは、メンタルヘルス向上のためにも身体活動量を増やし、体力つくりをすることが望ましいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画は日本人学校の子どもを対象に2020年から2022年の3年間で調査を行う予定であった。しかし、研究1年目である2020年から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による感染拡大によって日本人学校は長期にわたって臨時休業となった。また、2021年になってもロックダウンのため海外に渡航できず、応募者は在外日本人学校に赴くことができずにいた。そして、ようやく3年目である2022年度の下半期から渡航が可能になり、現地における調査等が行えるようになったことから、2023年度は研究期間を延長して研究を行なった。したがって、本研究は2020年から2022年上半期までは研究が進まなかったが、ようやく研究が行えるようになり、大幅に遅れた研究計画も次第に取り戻せてきた。なお、現在の進行状況は以下の通りである。 ①COVID-19は2020年に世界的感染拡大となり、本研究課題がスタートした2020年4月には世界でロックダウンや外出禁止令が出されていた。さらに、調査校である日本人学校は2021年度についても臨時休校となったことから、2021年度の調査をweb調査で行った。2022年の下半期になってから調査校がある国の渡航許可が降りたことから、2022年に日本人学校を訪問することができ、紙媒体を用いた実質1年目の調査を行うことができた。 ②本課題研究が2020年から2022年までの計画であったことから、期間を延長し2023年度に実質的な調査2年目となった。2023年度の調査では、2022年度の調査結果を基に詳細な調査を行うことができた。 以上のように、2023年度の調査は応募した当初の研究計画2年目にあたった。現在、研究の遅れを少しずつ取り戻すことができ、2024年度には介入調査を予定している。したがって、現在の進捗状況はやや遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響により研究が1年目のスタートから遅れ、2021年度までは研究計画を十分に遂行することができずにいた。一方、WHOがCOVID-19に関するPHEICの宣言を終了したことから海外への渡航制限が緩和され、2022年度から現地での調査ができるようになった。そこで、2024年度は以下のように研究を遂行する。 ①学校長と養護教諭にインタビュー調査を行い、メンタルヘルスケアの必要性から学校保健や健康教育の必要性について検討を行う。また、2023年度に行った調査結果を学校長および養護教諭に報告し、その結果を学校保健・健康教育で活用することによってメンタルヘルスケアの実践を行っていく。 ②メンタルヘルスケアの実践として対象達の身体活動量を増やす取り組みを行い、介入前後の調査の結果から、身体活動量増加によるメンタルヘルスへの効果について検証する。また、調査結果を生徒に返却することで、生徒自身が自己の健康について考え、ヘルスリテラシーを向上させる取り組みを行っていく。 ③海外子女教育振興財団の協力を得ながら、複数の日本人学校についても調査協力の依頼をする。また、日本人学校の子どもたちの身体活動の様子を明らかにするため、国内における複数の学校、そして離島など本土と異なった環境にある学校の子どもについても調査を実施し比較検討を行う。 以上のように、新型コロナウイルス感染拡大によって本研究の実施は大幅な遅れをとっていたが、応募当初に予定していた3年目の調査を2024年度に実施する。本研究を遂行することによって日本人学校に通う子どもだけでなく、身体活動量の低下による体力の低下とストレスの様子について明らかにする。そして、健康教育を通し子どもたちが自らの健康について考えるヘルスプロモーションが可能となり、近年問題とされる子どもの行動体力と防衛体力の低下が改善されることが期待される。
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