研究課題/領域番号 |
20K02714
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
|
研究機関 | 同志社大学 (2022-2023) 京都女子大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
瓜生 淑子 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (20259469)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 育児休業制度 / 21世紀出生児縦断調査 / 幼児の性格特性 / 潜在クラス分析 / 多項ロジスティック回帰分析 / 早期集団保育 / 早期集団保育の効果・影響 / 待機児童対策 / 3歳児神話 / 乳児保育の今日的意義 / 0歳児保育 / 休業取得のジェンダー・アンバランス / 北欧の部分育休制度 / 女性のキャリア発達 / 子どもの非認知能力の発達 |
研究開始時の研究の概要 |
育休制度の普及が進むが、乳児期から安心して子どもを託せる保育所保育制度の充実と連動させた上で、これ以上母親の休業期間を長期化させない制度の改革を提案していきたいという目的の下、研究計画は大きく3つに分かれる。 1)乳児保育経験児と未経験児の発達、とくに非認知能力の違いを分析する発達心理学的研究。 2)保育の現場の「育休明け保育」の大変な実情について、保育所調査を行う保育学的研究。 3)労働経済学的観点から、「部分育休制度」および、育休制度と保育制度との補完的関係、それら諸制度と女性の就労実態との関係について、国際比較を行う。 これらをふまえて、「部分育休制度」の導入を政策提言していきたい。
|
研究実績の概要 |
昨年度の発達心理学会発表に続き,厚労省「21世紀出生児縦断調査」の個票データを使用した分析を行った。今回は,幼児のパーソナリティ分類のために2値の分析に優れたMplusを利用して潜在クラス分析(LCA)を行った。LCAに際しては,項目指標が4因子で説明されることを組み込んだモデルとし,「局所独立違反」の問題に対処した。また発達の遅れがクラスの特徴に混入することを避けるため出産時のハイリスク児を除外した。養育態度変数も予測要因に加えた。 その結果,3歳半時点での性格特性17項目を指標にLCAを行い, C1[控えめ](活気なく内向的で人見知りが強い,18.5%),C2 [やんちゃ](活発で多動気味で強い自己主張,13.9%),C3[活発](活発で外向的,52.9%),C4[内弁慶](人見知りが強いが自己主張も強い,15.6%)の4クラスが抽出された。次に,クラスの予測要因を多項ロジスティック回帰分析によって検討したところ,C1[控えめ]は,男児・第一子が多く,また,父学歴・父年収から捉えた家庭階層が高い傾向が示された。また,乳児期からの早期保育経験者が少ない傾向にあった。C2[やんちゃ]は,体罰容認の傾向が強かった。家庭階層も低位であった。C3[活発]は,第二子以降が多く,家庭規模が大きめで,ふれあい重視傾向が強かった。C4[内弁慶]は,女児で第二子以降が多く,父学歴が低めであった。早期保育経験に関しては,C1[控えめ]が少なく,他の3クラスでは差がなかった。 以上より,保育経験についていえば,早期保育経験がない場合に,大人しく対人的に消極的である可能性が示唆された。分析ケースを絞ったことや,潜在クラス分析に因子分析を盛り込むモデルとしたことなどの変更があったが,おおむね,前年度の結果と同様の結果であった。この結果は,日本心理学会第87回大会(2023年9月17日)で発表された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会発表を繰り返し,潜在クラス分析に様々なアドバイスを受けつつ,厚生労働省のビッグ・データの解析に取り組み,それなりに説得力のある結果が得られたと思っている。これによって,これまでの心理学や保育学において実証的に示されてこなかった,早期に子ども集団の中で育つことの積極面を示すことができたと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
育児休業制度や子育て支援制度の改革が急ピッチで進められているが,拙速に進められるならば,様々な問題を引き起こしかねない懸念がある。本研究の成果である子どもが早期から安定した子どもどうしの関係性が保障された環境で育つことの大切さを他分野の研究者にも示し,育児休業制度の改革に向けて議論する場をシンポジウムとしてもうけて,その改革に心理学者として寄与していきたい。
|