研究課題/領域番号 |
20K02721
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
|
研究機関 | 岐阜聖徳学園大学短期大学部 |
研究代表者 |
大西 薫 岐阜聖徳学園大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (80616532)
|
研究分担者 |
大西 将史 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成・院), 准教授 (20568498)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 虐待的係わり / 不適切保育 / 同僚保育者 / 子どもの人権 / 保育者の専門性 / 第三者的視点 / 保育者による虐待 / 不適切な保育 / マルトリートメント / 保育者 / 教育虐待 / 子どもの最善の権利 / 保育の質 |
研究開始時の研究の概要 |
日本における保育を取り巻く環境は大きく変化し、繰り返されてきた保育制度の規制緩和によって保育の質の低下、保育士不足や離職率の高さが問題視されている。特に、保育時間中の死亡事故や事件は後を絶たず、近年では、保育者による保育虐待も報告されている。子どもの命や人権を守る取り組みは喫緊の課題であるにもかかわらず、その基礎となる実証的研究がなされていない。そこで本研究は、保育者による虐待的係わりの実態把握及び予防対策に向けた基礎資料を得ることを目的とし、保育者の虐待的係わりとなる背景要因や社会における構造的問題を実証的に明らかにする。
|
研究実績の概要 |
保育者による虐待的係わりについて、厚生労働省およびこども家庭庁による全国自治体への調査が行われ、保育者による不適切な関わりについて世論の関心も高まっている。子どもを侮辱する言葉かけ、無視、小突く、大声で威嚇する、罰を与えるなど、特に暴力や体罰に関しては、たとえ「しつけ」と称しても法律で禁止されているなか、子どもの人権を守り保護する立場にある保育者がそれを行うこと自体問題である。しかし、最も問題なのは、保育者が自分たちの行為を虐待と認識してないケースである。このような問題が第三者による通告や保護者からの訴えで明らかになっていることからも、保育者の自覚を促すだけでは限界がある。 本研究では、第三者の視点を中心として「不適切保育」の実態を明らかにしようと試みている。そもそも保育者は何をもって「不適切保育」とみなすのか、マルトリートメントに代表されるような、虐待的な係わりから、子どもの発達にそぐわない行き過ぎた早期教育や、保護者や大人から見た見栄えの良い保育、子どものやる気や意欲を伴わない保育も「不適切」と言うことができるだろう。 虐待的な保育者の係わりは、どのような背景によって生起するのか。本研究では、同僚保育士という第三者からの視点を通した不適切な関わりの実態についてその内容を収集している途中である。その中には、虐待的な係わり(もしくは不適切と考えられる保育者の係わり)を第三者が認識しても、その保育を修正したり辞めさせたりすることの難しさや、不適切と理解し、否定していたにもかかわらず、そのような保育に巻き込まれてしてしまう保育者の実態もあった。このように考えると、保育者個人の問題とは言い切れない問題も関連している可能性も示唆されてた。今後、さらにデータを蓄積し、虐待的係わりが起こる要因や背景を明らかにしていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
保育者による虐待的な係わりなのか、それとも不適切な保育といえるのかについては、明確な定義がなく、本研究においては、保育者自身が何を「不適切」としているのかについて明らかにしよう試みている。調査の中で、保育者がとらえていた不適切は、ほぼ、保護者による子どもへの虐待の定義と一致していることを日本子ども虐待防止学会で発表した。 保育者および保育実習生への質的データが十分な量を確保しているとは言い切れず、やや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
近年の保育者による虐待的係わりに関する報道が次々となされていることから、基礎データの収集は引き続きおこなっており、虐待的保育が起こる背景要因、特に保育者の労働環境(慢性的な人的不足と、残業の多さ)、保育者の知識不足などが考えられた。今後も継続して基礎データを収集していく。 保育職に就いた卒業生を対象とするインタビュー調査に関しては、当初予定人数よりも確保が難しい状況が続いたが、新型コロナウイルス感染症による社会状況が改善してきており、十分なデータの蓄積を目指していきたい。同時に、保育実習生が実習中に見聞きした不適切な保育に関するエピソードも今後継続して増やしていく。 本研究では、虐待的保育がどのような構図でおこるのか、単にその行為を行う保育者の資質を非難するのではなく、保育制度の構造的問題についても検討していく予定である。
|