研究課題/領域番号 |
20K02744
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
北澤 俊之 東洋大学, 文学部, 教授 (70553741)
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研究分担者 |
三澤 一実 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (10348196)
榎本 淳子 東洋大学, 文学部, 教授 (50408952)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 身近な事物のとらえ直し / 造形的な視点 / 発達 / 造形的な見方・考え方 / とらえ直し / ユーモア / 造形的なとらえ直し / 造形教育プログラム |
研究開始時の研究の概要 |
テーマに掲げた「とらえ直し」とは、身近な事物をいつもとは違った視点から改めて見たり味わったりすることを指す。これまで研究者は、小・中学校の子どもたちを対象に、日常を造形的な視点でとらえ直すことを促すプログラムを開発してきた。いくつかの学校でその検証を行ったところ、1)対象を造形的に「とらえ直す」際の着眼点や方法は、学齢により異なる傾向を示す、2)同じ対象でも、学齢によりそれを「とらえ直そう」とする意識に違いが見られる、という興味深い結果を得た。そこで継続研究となる本研究では、「子どもの造形的な『とらえ直し』を、発達の見地から明らかにする」という目的を設定し、研究をさらに発展させようと考えた。
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研究実績の概要 |
本研究は、子どもたちが身近な世界を造形的にとらえ直す姿を発達の見地から明らかにしようとするものである。本年度は、とらえ直しの中でも特に「見立て」に焦点をあて、小学生から高校生までの子どもたちを対象に調査を実施した。その目的は、①とらえ直そうとする(見立てようとする)意欲、②とらえ直す際の視点と方法、③とらえ直されたものの斬新さ、がそれぞれれ子どもたちの発達とどう関係するのかを明らかにすることであった。調査にはワークシートを用いた。その内容は「不完全画像への自由加筆」と「釣をする人形を校内のどこに設置したいかを問う」ものである。子どもたちは、提示された「形態」や「状況」を個々のスキーマを通して網かけるが、その際、たとえば自明のものごとは素直にそうとらえたと表明するのか。あるいは遊び心を発動させ、あえて異なるものと結んでみせるのか。子どもたちの回答から、彼らが対象や状況を再度異なる視点からとらえ直す際の意識や造形的な方略、また見立てた作品の斬新さについて、発達との関係から分析・考察を行った。 その結果、次のことが明らかになった。 ①年齢とともに見立てようとする意欲が高まる。②とらえ直す際の視点や方略は、発達にともないより多様に、より精緻化する傾向がある。③とらえ直しの斬新さは、学年が上がるにしたがって高まる傾向がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前回の調査では一つの不完全図像をとらえる課題のみを対象としたが、今年度はそれに加えて複数の形をとらえる課題、さらに「状況」をとらえる課題を実施することができた。その結果、より複雑な認知プロセスの一端をとらえることができたことは大きな成果だといえる。特に、学齢が高い子の中には課題の情報から核となる基本構造を的確にとらえ、その構造を柔軟に他のイメージに写像する子が多くみられたが、そこに至るまでには事物の特徴をとらえ、他とつなげる際の視点の広がりや多様化、精緻化など、いくつかの段階をふむ必要があることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は事物を造形的にとらえ直すプロセスを、より詳細に分析したい。特にとらえ直す際の着眼点や、破綻のない説得力のある精緻化の表れと発達との関係を改めて丁寧に分析したい。また、今回はすべての課題において発達とともにとらえ直しへの意欲やその斬新さが高まる傾向が認められた。ただし、ヴィゴツキーやガードナーらの先行研究をふまえれば、今回の調査対象となった子どもたちがたまたま望ましい発達を遂げている可能性も排除できない。調査対象者の選定に偏りのないよう配慮したり、調査時の環境の統制を工夫したりするなどして、継続的に検証していく必要がある。
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