研究課題/領域番号 |
20K02825
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
近藤 裕 奈良教育大学, 数学教育講座, 教授 (80551035)
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研究分担者 |
熊倉 啓之 静岡大学, 教育学部, 教授 (00377706)
下村 岳人 島根大学, 学術研究院教育学系, 講師 (90782508)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 算数 / 数学 / 説明 / 証明 / 評価 / 算数・数学教育 / 評価者間信頼性 |
研究開始時の研究の概要 |
算数・数学科における「説明」の自由記述の評価に関して,一つの「説明」の記述に対する評価結果が,評価者によって大きく異なるという,評価者間信頼性の問題がある。一方で,中学2年生以降の「証明」の研究に対して,その学習以前に行われる「説明」を対象にした研究は少なく,適切な評価の枠組み等が明らかにされていない。 本研究の目的は,「説明」の自由記述を評価するための,評価者間信頼性のある評価の枠組みとその運用方法を開発し,それをもとに,学年集団としてみられる「説明」の能力の傾向を,事例と共に明らかにすることである。そうした適切な評価の確立は,子どもの「説明」の能力育成を効果的に進めることに直結する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,「説明」の自由記述を評価するための,評価者間信頼性のある評価の枠組みとその運用方法を開発し,それをもとに,学年集団としてみられる「説明」の能力の傾向を,調査及び授業実践に基づく検討を通して,事例と共に明らかにすることである. 申請書に記載の2022年度の研究実施計画は,「ワークショップ形式の調査を拡大して実施し,その結果の分析に基づき改善を加え,評価の枠組み及びその運用方法の確立を図る」こと,また,「蓄積してきたデータを基にして,学年集団としてみられる『説明』の能力の傾向を,事例と共に明らかにする」ことが主な内容であった.これまでの取り組みにより,「研究の目的」に掲げた内容のうち,「学年集団としてみられる『説明』の能力の傾向を,調査及び授業実践に基づく検討を通して,事例と共に明らかにすること」がより重要であることが見いだされ,取り組みの方向性を,「評価の枠組みを確定し,具体的に運用すること」から,「子どもの『説明・証明』の自由記述の特徴を,より詳細に把握すること」へと研究の焦点をシフトして検討を進めてきている. 昨年度に引き続き,奈良・東京・静岡・熊本・イギリスをオンライン形式でつなぎ,1回3時間程度の研究者会合を年度内に合計で7回,対面式で1回開催した.また,新たに小学校教諭1名に協力者に加わっていただき,協力者会合を2回開催した.また,子どもの実態をより詳細に把握するための新たな問題を開発し,小学校における授業実践を2校2クラスで実施した.また,年度末には,小・中学校(義務教育学校含む)3校の小学4年生から中学3年生を対象とする紙面調査を実施した. これらの取り組みを通して,子どもの「説明・証明」の自由記述の特徴および学年集団としてみられる「説明」の能力の傾向を一部明らかにすることができ,複数の論文で公にすることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,「説明」の自由記述を評価するための,評価者間信頼性のある評価の枠組みとその運用方法を開発し,それをもとに,学年集団としてみられる「説明」の能力の傾向を,調査及び授業実践に基づく検討を通して,事例と共に明らかにすることである.このうちの,後者にあたる子どもの実態をよく把握することが第一に重要であり,評価の枠組み設定と教室での具体的な運用は,その上で,それを運用する指導者の価値観等と照らして,教育上有意義となるように行わなければならない. これまでの取り組みで,子どもの「説明・証明」の自由記述が包含する様々な要素から,「自身の主張の妥当性を図形の性質に結びつけて示すこと」の観点を,教育上着眼する価値のある観点として抽出し,紙面調査や授業実践等を通して,その観点に関する小学校5年生から中学校3年生までの横断的な傾向を把握して,各学年が抱える課題や学習指導改善への示唆を見いだすことができた.あわせて,説明に用いる図形の性質の種類に応じた説明の記述の困難性の違いがある可能性があること,また,紙面調査として一人で説明の記述に取り組むときと,授業で他者と交流する機会がある中で説明の記述に取り組むときとの記述内容の違いや,その違いが生じる要因の考察等を行うことができた.さらに,説明の対象となる問題が平面図形か空間図形かで,問題によっては,説明方法に本質的な違いが生じることがあり,その場合の子どもの反応事例等を収集することができた.このような,子どもの実態把握を一層詳しく進めることが,本研究の目的の達成において,まずは重要であり,それを推進するための新たな調査問題を開発し,実施することができた. 以上の理由から,2022年度の研究の進捗を,総合して「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載の本研究の目的は,「説明」の自由記述を評価するための,評価者間信頼性のある評価の枠組みとその運用方法を開発し,それをもとに,学年集団としてみられる「説明」の能力の傾向を,調査及び授業実践に基づく検討を通して,事例と共に明らかにすることであった.その研究の取り組みを進める中で,評価の枠組み設定と教室での具体的な運用は,それを運用する指導者の価値観等と照らして,教育上有意義となるように行わなければならないこと,そして,それに先んじて,子どもの実態をよく把握することが,第一に重要であることが顕在化した.そこで,申請書に記載した目的のうち,「学年集団としてみられる『説明』の能力の傾向を,調査及び授業実践に基づく検討を通して,事例と共に明らかにすること」に焦点を絞って,今後の取り組みを進めていく. 既に,昨年度末に,新たに開発した問題を含めて紙面調査と授業実践を実施済みである.まずは,それらのデータの整理と分析および考察を行う.その結果から,「説明に用いる図形の性質の種類に応じた説明の記述の困難性の違い」の有無,「他者意識が与える説明の記述への影響」,「説明の対象が空間図形の問題である場合の子どもが用いる説明の仕方の特徴」等が明らかになることが見込まれる.そこで得られた知見に基づく授業を計画し,研究協力者の小中学校教諭による授業実践を行い,より精緻に,子どもの「説明・証明」に関する実態を捉えていく. 会合については,引き続きオンライン会議システムを活用しつつ,再開され始めている各学会における対面式での議論を重ねながら取り組みを推進する.特に,今年度は,国際学会における研究発表を行い,より広い視点からの検討も行う.そして,これまでに引き続き,研究の成果を論文として公にしていくことを目指す.
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