研究課題/領域番号 |
20K02855
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
|
研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
渡邊 慶子 (向井慶子) 滋賀大学, 教育学系, 准教授 (00572059)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 証明 / 中高接続 / 中高一貫 / 三角形の性質 / 授業構成 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は数学的現象を探究することを目的とした「証明する」活動の新たな方法論を提案する。先行研究では小中一貫に着目が注がれている中,本研究では中高一貫に着目し,一つの命題に対してなされる複数の証明を用いて,それらを比較・検討するという新たな方法論の意義と具体的な方法を明確にする。つまり,基本的な証明の仕組みを学習し終えた中学3年生や高校生だからこそ証明の多様性に着目して数学的アイデアを分析したり考察したりできることに着目して,「証明すること」を核とした教材の開発だけでなく,その教材を用いた授業の構成原理も導出する点で,本研究は,証明指導の研究の新たな視点や方法論を提案できる。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は,「証明すること」を核にした中・高等学校を一貫する数学科教材を開発し,その教材を用いた授業の構成原理を明らかにすることであった。「証明すること」を介して数学的現象の理解を拡張・深化させることは,中・高等学校において数学的な創造力・構造力や判断力を高める一つの具体策と考える。本研究では,中高の学習内容を接続する教材「三角形の探究」を開発し,三角形に関する定理になされた複数の証明を比較・検討する場面を含む授業を構成して実施して,その授業を質的分析法で検討して構成原理を導出することを具体的な目標として研究を遂行した。 その結果,「三角形の探究」に関わる2つの教材を開発し,それらを授業実践することができた。また,それらの授業において生徒たちが数学的現象の理解をどのように拡張・深化させていったのかに関する理論的枠組みを2つ開発することができた。開発された教材の一つは,「三角形の一つの角の二等分線による対辺の分割比とその角を挟む2辺の関係」に関する定理の証明問題を用いた教材である。この教材は,中学3年生によって実施・分析・考察された(渡邊・小山,印刷中)。これは一つの証明問題に対して多様な証明が生徒たちから提示しされる教材で,多様な証明を比較する中高数学科授業における意義と方法を明確にできた。もう一つの教材も先述の証明問題を用いるが「二等辺三角形の頂角の二等分線」の場合の証明と「一般の三角形の一つの角の二等分線」の場合の証明を比較・考察される教材である。これは大学生に議論型の調査をするとともに,証明活動を自己参照するための枠組みを導出できた(渡邊・小山,2022)。これらの成果は,国内学会での発表と学会論文集,及び学会誌によって公表された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論に関する研究活動は,当初の予定に遅れることなく実施することができた。しかし,実践・実証研究に関しては,2つの教材のうち1つについては,大学生への調査にとどまり,中学生又は高校生に対しての授業実践は今後に送ることになった。これは,covid-19の感染拡大等の影響を受けたものである。 また,研究の成果を発表する場として,国際学会を考えていたが,covid-19の感染拡大等の影響や国際情勢の乱れによる渡航にかかる危険性の向上によってそれを実現することが叶わなかった。 以上の点で,現在までの進捗状況を「やや遅れている」と判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では,一つの定理に対して証明が多様にある状況に着目して研究を積み上げてきた。今後はその研究成果を生かして,多様な証明が示される授業の中で生じる生徒たちの相互作用を捉える研究を始める。 この研究は「証明について他者と対話する」という学習プロセスを重視し,構成主義的視座から研究されてきた「証明活動」を相互作用主義的視座から理論的に捉え直して,「相互作用主義的証明活動(証明を生成しその証明についての他者と対話する活動)」を捉える枠組みを構築し,数学的な構想力を具体的に捉えることを目的する。
|