研究課題/領域番号 |
20K02865
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
阪井 恵 明星大学, 教育学部, 教授 (00308082)
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研究分担者 |
酒井 美恵子 国立音楽大学, 音楽学部, 教授 (10407075)
布施 光代 明星大学, 教育学部, 教授 (10454331)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | フィギャーノート / 読譜 / 音楽科 / 教員養成課程 / UDL / 学びのユニバーサルデザイン / 五線譜 / ディスレクシア / 音楽科教育 / 発達性読み書き障害 |
研究開始時の研究の概要 |
五線譜の判読が、障害により不可能な場合があることは十分に知られていない。本研究では、取材に基づきその実態を明らかにする。また当事者たちが音楽科授業への導入を望む「フィギャーノート(FN)」の有効性を探り、教科書に準拠した具体的な活用法の提案を行う。障害の実態調査に基づくビデオ作成、ビデオ視聴とFNの体験を含む実験的授業の実施、受講した児童生徒及び学生の、FN活用に関する意見調査と分析、学会における意見交換、などを通して「選択肢としてのFN」導入実現を目指すものである。
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研究実績の概要 |
共同研究者の布施光代(明星大学)を中心に,これまでに,教員養成課程の学生(音楽大学生221名,音楽大学以外の学生619名)の回答を得た質問紙調査の分析を行った。 フィギャーノート普及のために制作したビデオの視聴は,ユニバーサルデザインとフィギャーノート,ディスレクシアに対する理解度や関心を深めたか。またフィギャーノートを知ることで,音楽の授業や器楽指導における楽譜の扱いについての考えが変化したか,フィギャーノートを導入するために課題となることは何か。前半は以上について分析をした結果,動画視聴の効果は示された一方,学生全体としては,音楽指導において五線譜が重要であるという指導観も明らかになった。また,フィギャーノートの採用に当たっては,個々の音楽授業担当者だけではなく,管理職や保護者を含む環境全体での理解が必要である,無料あるいは安価である,入手しやすい仕組みが必要である,などが明らかになった。 さらに,音楽大学生とそれ以外の学生では,音楽や音楽指導に対する考え方が異なるこ とが予測されたので,比較をとおして,音楽大学の学生の特徴を検討した。その結果,音楽大学の学生は,学校教育における音楽科を重視している一方で,音楽を選択科目でもよいと考えていることも示唆された。また,音楽大学の学生は,五線譜を重視する考えが強く,音楽を専門としない学生に比べ,フィギャーノートを許容しない傾向も観られた。以上はフィギャーノートの普及戦略のために,大変有効な示唆であった。 また,フィギャーノートの使いやすい仕組みづくりのため,教科書著作権協会への働きかけを行い,障害者手帳のある人にはフィギャーノートの無料配布が可能になった。しかし通常学級における学習補助手段としてのフィギャーノート使用の条件は,まだ十分に整わない現状である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では,最終的にはフィギャーノートを活用した授業の実際を提案することにしていた。しかし2020年度から3年にわたるコロナ禍のため,音楽授業全体が様々の変更を余儀なくされ,結果的に授業方法の変化の兆しも生まれた。タブレットの活用方法などと,どのように調和を図っていかれるかという問題,検定教科書の2024年度(小学校),2025年度(中学校)改訂を見ながら教材づくりをするという問題などが,新たに視野に入ってきた。また,フィギャーノートの自由使用のためにバリアとなっている,音楽著作権と教科書著作権の問題が解決できていない。 それらへの取り組みのため,計画よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた,教員養成課程の学生だけでなく,現職の教員からも,フィギャーノート普及のために作成したビデオの視聴後の質問紙への回答が得られたので,2024年度は其れについて分析を進める。学生・教員を併せて900名強からの回答をもとに,フィギャーノートが選択的に採用されるための条件をまとめる。よりインクルーシブな音楽科の在り方に繋がることとして,教育哲学や現代社会の動向や他教科との連携など,視野を広げて考察していく。 また現場の教員がフィギャーノートを使いやすくするために必要な事項が,これまでの研究プロセスから見えてきた。学術的というより,物理的に技術的な問題であったり,行政的な問題であったりするが,本研究終了以後に継続して必要なことであるので,一応の方略を立て,まとめておく。
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