研究課題/領域番号 |
20K02896
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
中島 由佳 大手前大学, 現代社会学部, 教授 (80712835)
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研究分担者 |
亀井 暁子 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 教授 (80711754)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ホスティング飼育 / 学校動物 / 児童への心理的効果 / 動物愛護 / 教育プログラム / ホームステイ型飼育 / ホスティング型飼育 |
研究開始時の研究の概要 |
学校での鳥・哺乳類の飼育や触れ合いは,生命の大切さを学ぶことのできる貴重な機会であり,飼育を行うことにより,他者への思いやり等を涵養することができる。一方で教員の負担を軽減し,動物愛護に則った適正な飼育環境の維持も担保するには,現行の飼育体制から脱却した「持続可能な学校動物飼育」の構築が不可欠である。そこで本研究は,「持続可能な学校動物飼育」の一つの仕組みとして「学校動物ホスティング(貸与)方式」を立ち上げ,①ホスティング型の飼育により得られる児童への心理的効果と従来型の学年飼育等での心理的効果の比較,②動物飼育を組み込んだ教科領域,単元における教育プログラムの開発と評価,の2点を検証する。
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研究実績の概要 |
ホスティング方式の飼育実施とホームステイ飼育の導入:生活科の授業の一環としてホスティング飼育を行っている小学校のうち,大阪府の小学校では校長の退職に伴いホスティング飼育が終了した。福岡県の小学校では年度前に次年度の飼育学年との引継ぎが行われ,新年度より新1年生の飼育が開始され,引継ぎおよび児童の飼育の様子の説明を受けた。また飼育されているモルモットおよび飼育の状況に関する説明をホスティングを担当する獣医師より受けた。6月にはホスティング飼育担当獣医師による検診や飼育方法についての講話・指導が各小学校で行われた。一方で,本科研費研究終了後の持続可能な飼育のあり方を小学校と模索した。具体的には2日以上の学校休業の期間中に児童の家でモルモットを預かり飼育する「ホームステイ」の導入を小学校側と協議。各地域での「ホームステイ」の実施方法を調べて小学校と情報共有するとともに,「ホームステイ」の具体的な計画を策定した。年度半ばより試験的に「ホームステイ」が行われている。 調査:児童への質問票によるデータ採集が飼育前(3月),夏期休業前,2学期(11月),飼育終了時(3月)の4回,各校にて行われた。獣医師に対しては適時,ホスティングの状況・問題点について聴取を行い,ホスティング飼育の問題点を探った。またホスティング飼育とホームステイ飼育の併用を開始したことから,児童及び家庭の反応,飼育の問題点等について協議を行った。また年度末には小学校と,今年度の総括,飼育実施と授業への取入れにおける利点および問題点,今後の飼育の形に向けた課題等を協議した。 本年度における研究の意義と重要性:「ホスティング飼育」を昨年度に続いて継続し,動物飼育の児童の心理に対する効果を引き続き検証するとともに,より持続可能な飼育方法としての「ホームステイ」飼育の模索を開始し,両飼育方法の利点および改善すべき点を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の開始時期がコロナ禍が顕在化した時期と重なったため,当初よりホスティング飼育希望する小学校の数が計画より大幅に下回った。加えて,校内で飼育している他の動物の看護に専念するため,2021年度末を以ってホスティング飼育を断念する小学校が出現したが,新たなホスティング飼育校を募るにあたり,今般のコロナ禍下の状況において,各地域の教育委員会,研究協力者である各地域の獣医師との打ち合わせを行いにくい状況にあった。またコロナ禍に伴い動物飼育に関する行事(ふれあい教室など)を控える小学校も多く,動物飼育活動を控える傾向が各地域で広がる中,新規の動物飼育に手を挙げる小学校の確保が引き続き困難な状態にあり,ホスティング飼育を行う小学校数を増やすことができなかった。研究申請時の計画では4地域4~5校でホスティングを行う計画であったが,結局,初年度は3地域3校でのホスティング実施,2年目は2地域2校,3年目以降は1地域1校へと,計画規模の縮小を余儀なくされた。これにより,当初予定していた分析に十分となる標本数の確保に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
ホスティング方式の飼育では,教員の長期休業中の世話等の負担が削減でき,明治期以来の課題である「休暇中の動物の世話」への有用な解決策の一つを示し得た。その一方で,ホスティング飼育を行う獣医師にかなりの負担がかかること,ホスティング飼育を行いうる条件を満たした獣医師の確保の困難さ,ホスティング飼育にかかる費用負担の捻出等の課題も明らかとなった。自治体等の予算へのホスティング飼育の組み込みも困難であることから,新たな持続可能な飼育方法を模索しその効果を検証する必要がある。 そこで2023年度より試験的に開始した,児童の家庭で休日のモルモットの飼育を行うホームステイを2024年度も引き続き実施し,質的・量的データの採集を行う。飼育を行うことによる児童の心理への影響について,飼育を行わなかった群,ホスティング飼育,ホームステイ飼育の3群における比較を行い,効果を検証する。予算的問題,小学校を取り巻く状況に鑑みて,新たにホームステイを行う小学校の参加呼びかけは現実的でない。動物愛護法を遵守しつつ,現在ホームステイを行っている小学校と,動物にも児童にも教員にも負担のかからない飼育方法の模索を行う。
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