研究課題/領域番号 |
20K02907
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
松尾 大介 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (50377230)
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研究分担者 |
岩永 啓司 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (20758445)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 彫刻表現 / プレフィグラツィオン / 見方・考え方 / 教員養成系大学 / シラバス / 制作過程(プレフィグラツィオン) / 汎用的能力 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、これからの図画工作科・美術科における彫刻表現にかかわる教科内容を教員養成系大学の学生に教授するために相応しい表現や鑑賞の教材を検証・開発するものである。 新しい学習指導要領で重視されている「未知の状況にも対応できる『思考力・判断力・表 現力』」所謂「汎用的能力」の育成に資する彫刻表現の教科内容を明示すべく、制作の過程 (プレフィグラツィオン)で働く固有の思考様式「見方・考え方」について、具体的教材と学生の学びの実際から検証する。そして、その固有な思考様式の理解を深める表現や鑑賞の教材を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究では,教員養成系大学の彫刻表現に関わる授業について,制作過程(プレフィグラツィオン)に着目して検証している。先ず,日本教育大学協会全国美術部門に所属する大学のシラバスを分析し,塑造や彫造,集合等の題材を扱っている授業内容の傾向を把握した。併せて,シラバスにテキストや参考書として多く記載されていた著書(彫刻家・岩野勇三著)から示唆される塑造の「見方・考え方」に着目した。そこで,岩野の回顧展で小林古径記念美術館と連携し,岩野の「見方・考え方」検討するシンポジウムを開催し,大学の授業と関連させて実施した教育普及活動について検証した。次いで,シラバスからプレフィグラツィオンを観点として特徴的な彫刻表現の授業を抽出し,その内,福島大学と群馬大学の授業について,実地調査を行った。同時に,両大学で彫刻領域の授業を受講し,現在,学校現場で務めている教師にインタヴュー等を行い,大学で学び現場に立つまでの実際を調査した。また,大学の多くの塑造の授業で経験する「型取り」の題材について,技法研究を通じて,型を成形する際に生じる素材との感性的な対応等,技法独特の造形感覚を確認した上で,各教育課程および教員養成課程での実施を想定した試行授業を行い,学生の取り組みを検討した。検討の結果,幼稚園から高等学校に至る教育課程に通底する学びの連続性を大切にし,制作過程を各教育課程の学びに対応させる題材研究の基盤形成を叶えた。さらに,鑑賞教材の作成に向け,これまで明らかにしてきた研究内容に基づき,重視すべき作例の海外での実地調査を行った。主にプレフィグラツィオンの視座からロダンとミケランジェロについて石膏原型や未完作等を実地調査した。それらの創造の過程を跡付ける作例を検証し,素材との感性的対応と造形的意志の成就とを往還する過程を追体験できるような鑑賞教材の要点を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「型取り」の題材について,各教育課程および教員養成課程での実施を想定して検討した研究内容は,第62回大学美術教育学会香川大会で発表した。併せて,上越教育大学研究紀要第44巻に投稿し,令和6年度8月に掲載予定である。生涯教育としてのアート学習に関する基礎的解説書である『アート学習ハンドブック(仮称)』学術研究出版において,彫刻的な見方・考え方に関する指導のポイントやプレフィグラツィオンの諸段階に基づく3つの様態等,本研究で得られた成果を紹介する内容を岩永が執筆した。解説書は令和6年度刊行予定である。 本研究の重要な目的の一つである教材の作成に向けた作例の実地調査は,コロナウィルスの感染拡大のため,海外へ渡航する調査をこれまで控えていたが,令和5年度になって,感染状況が収束に向かい始めたため,現地で取材することができた。ただし,海外への渡航調査は,研究計画の当初,初年度に行い,その後,調査・収集した資料に基づいて鑑賞教材を考案・作成し試行する計画であったが,最終年度2月に渡航調査を実施した。したがって,当初計画した研究期間内に,海外で実地収集した資料から教材を作成・試行するまでには至らなかった。令和2年度から始まった本研究では,コロナウィルスの影響により海外はいうまでもなく国内の実地調査も制限され,また,大学の授業自体も,試行すべき授業を控える状況が続いたため,研究は当初の計画よりも遅れて進捗した。以上のような研究の遅れを鑑み,研究期間の延長を申請し,承認された。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長した最終年度は,引き続き,シラバス分析から構築した基礎的資料を基に,大学の授業の目的や授業間相互の関連性等をより詳細に分析しつつ,実地調査で得た知見を踏まえ,小・中・高等学校で使用される美術の教科書とも内容を照らしながら検証を重ねていく。特徴的な大学の取り組みを検証しながら試行授業を考案し,代表者,分担者,研究協力者の研究機関で授業を実施する。考案した題材について,小学校の児童等を対象とした授業でも試行し,制作過程を各教育課程の学びに対応させる題材の意義等を検証する。これまで,プレフィグラツィオンの視座から収集した資料や実地調査した授業内容の分析を基に鑑賞教材を作成する。作成した鑑賞教材を活用した授業を試行し,授業実践の検証を継続する。各教員養成課程における一連の授業で,段階的に進展させている学生の理解と資質を分析する。教員養成の授業における効果と改善点を比較し,教員養成系大学に相応しい彫刻領域の授業を検証する。最後に,これまで検証を重ねた研究内容や鑑賞教材の具体例等,プレフィグラツィオンを活用した授業モデルを示した報告書を作成し,各研究機関に配布する。
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