研究課題/領域番号 |
20K02933
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09050:高等教育学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
加藤 毅 筑波大学, 大学研究センター, 准教授 (10233800)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 大学マネジメント / 建学の精神 / 大学職員 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、大学マネジメントの現場をフィールドとするインテンシブな調査研究を通じて、第一に、私立大学のマネジメントにおいて、建学の精神を具現化する取り組みについて、どの程度計画的に進められているかを明らかにする。第二に、建学の精神の具現化に取り組む先進的な大学マネジメントの事例について収集・分析を行うとともに、そこで展開されているマネジメント手法のモデル化を行う。第三に、建学の精神の具現化を推進するための、実効性あるマネジメント手法の開発に向けて試行を展開する。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、建学の精神に関連する政策動向のインパクトおよびICTやAIが急速に進展するなかで建学の精神が果たすべき役割の検討、そしてインテンシブなフィールド調査を中心とする調査研究活動を実施した。 第一に、私学法の改正について政策議論が進められ、評議員の位置づけを大きく変更するという方針が打ち出された。私立大学が社会の信頼を得て一層発展していくという目的を達成するため、役員近親者や教職員等の割合に一定の上限が設けられ、理事との兼職が禁止され、幅広い関係者の意見を反映させることが求められることになる。法人の意思決定にあたり今後は、従来は自明とされてきた建学の精神について、重要な意思決定にあたり明確な説明が求められることになる。また10月に施行された大学設置基準の改正は、デジタル・グリーン等の成長分野への再編・統合・拡充を促進するという政策目的を実現するための手段として明確に位置付けられた。同時期に閣議決定された「人への投資」施策パッケージでは、リスキリング教育の拡充が重点課題とされた。これら国家的課題への対応は、今後の大学のあり方を強く規定するものであることから、建学の精神との関連について説明することが必要となる。 第二に、DXが急速に進展するなか、Society5.0を支えるデータ連携基盤の整備が重要な政策課題となっている。大学が、多様なステークホルダーが集うデータ連携基盤との建設的な関係性を構築するにあたり、建学の精神に対して重要な役割を担うことが期待されるのではないか。 第三に、インテンシブなフィールド調査等を通じて、マネジメント課題の質的転換に対応した、建学の精神を活用したマネジメント手法について検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では当初、建学の精神に期待される機能として、停滞する改革を推進するうえで有効なマネジメントツールを構想していた。ところがこの数年の間に、高等教育およびイノベーションを対象とする内閣府主導の政策が進められ、大学に対して政府の政策手段としての役割とそのための変革が強く求められるようになった。同時に、ICTやAIの急激な進展は社会における知識生産のあり方を大きく変え、社会における知の基盤的施設としての大学の役割についても自明性が揺らぎつつある。少子化の進展等も含めて存続自体が問われる厳しい状況を迎え、大学にとって変革が不可避となったのである。 当初予定していた停滞する改革を推進するためのマネジメントツールの開発と並行して、これまで、研究開始時に前提していたNPOとしての大学のマネジメント環境の変化についても整理・分析を重ねてきた。そしてそこでの知見を踏まえて、大学に対して、NPOという組織体としてのあり方が問われているという構図に即して議論を深めている。
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今後の研究の推進方策 |
この数年、高等教育およびイノベーションを対象とする内閣府主導の政策が進められ、大学に対して政府の政策手段としての役割とそのための変革が強く求められるようになった。このことにより、固有の社会的価値(建学の精神)を存在意義とするNPOとしての大学と政府の間の緊張関係が高まりつつある。同時に、AIの急激な進展は社会における知識生産のあり方を大きく変え、社会における知の基盤的施設という大学の役割自体の自明性が揺らぎつつある。 最終年度は、大学にとって変革が不可避となった新しい状況に対応するため、これまで開発してきた建学の精神を活用したマネジメント手法の見直しと再構築を行うことを計画している。
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