研究課題/領域番号 |
20K02935
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09050:高等教育学関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
太田 浩 一橋大学, 森有礼高等教育国際流動化機構, 教授 (70345461)
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研究分担者 |
伊多波 良雄 同志社大学, 研究開発推進機構, 名誉教授(嘱託研究員) (60151453)
山崎 その 京都外国語大学, 付属図書館, 事務長 (70449502)
渡部 由紀 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (60600111)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 大学国際化 / 大学マネジメント / 大学評価 / 階層化意思決定法 (AHP) / 高等教育 / 階層化意思決定法(AHP) |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本の大学の国際化に対する取り組みを実証的に検証・考察し、様々な制約の下で戦略的に国際化を行う際に必要なマネジメント手法を開発することを目的とする。国際化は大学の教育、研究、社会サービスの改革や改善を図るための手段やプロセスであり、個々の大学がその理念や特徴に応じて、独自の方法で取り組むものである。しかし、国際化のマネジメント手法が開発されていないために、国際化が目的化したり、画一的かつ表面的な国際化に留まったりしている現状がある。特に、国際化関連の公的補助金の獲得が難しい大学、地方の中小規模大学等、日本の大学のマジョリティが実用可能な手法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
パンデミックを経て、大学国際化はICTを活用した学生の国際移動に依拠しない国際教育が広がるなど変化が起きている。一方、渡航制限がなくなり、学生の国際流動性に依拠した国際化も復活している。ただし、地政学的リスク、安全保障、環境問題などの影響もあり、国際化の再検討・再構築の議論が欧米を中心に広がっている。これらの動向を受けて大学経営及び国際化のマネジメントという観点から情報収集・調査、文献調査、聞き取り調査を行いつつ、その成果を発表した。 太田は、東・東南アジアにおける大学国際化を分析・考察した英文による書籍を海外の研究者と共に完成させた。また、ICTを活用した国際教育の研究に関する論文を英語で2編執筆し、欧米の書籍に収められた。教育の国際化と留学生獲得の課題に関する2編の論文も発表した。研究分担者の渡部は、大学国際化の関連で、留学促進に向けた課題に関する論文が学会誌に掲載された。 太田は、国際化の動向について学会等で12本の発表・講演を行った。それらを通して、渡航による国際教育とICTによる国際教育を組み合わせることで、相乗効果生み出し、多くの学生と教職員を取り込んだ包摂的な国際化が可能になるという方向性を示し、その実施には大学のマネジメントと執行部のコミットメントが鍵になると論じた。 渡部は地方大学の国際化と地方創生に関する研究で、東アジアの比較分析を行ない、国際化が如何に地方創生に貢献できるかといった本研究課題に寄与する研究を進めた。 太田と渡部は、国際化の評価指標に関する研修を行い、大学の教職員と国際化のマネジメントに関する議論を通して現場の情報収集を行った。伊多波と山崎は最近の大学経営の変化について情報収集を行い、山崎は私立大学の経営に関する学会発表を行った。全体として、今後の国際化の方向性や方策を整理しつつ、その変化が大学のマネジメントや評価に及ぼす影響や課題を把握できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、大学における国際化の実態、課題、障害を把握するために国際化を進める日本国内の大学に対して、質問票調査を実施する予定であった。しかしながら、研究代表者がハーバード大学の招へい学者に採用され、8月から一年間のサバティカルを取ったため、質問票の中身については検討することができたが、実際の調査を行うことは延期した。遠隔での質問票調査の実施も検討したが、質問票への問い合わせや調査分析の指示をリアルタイムで行うことが不可能であるため延期せざるを得なかった。 一方、大学国際化の政策・戦略と概念の変化に関する文献調査やポストコロナにおける国際化を阻む地政学的リスクの高まり、安全保障の強化、移民問題など環境的変化に関する情報収集は十分に行うことができた。また、日本の私立大学の52%が定員未充足となる状況で、留学生を増やして大学の経営の安定化を図ろうとする事例も調査することができた。これについては韓国でも同じ状況が起きており、その情報を収集することができた。 文献調査からは、米中対立など地政学的リスクの高まりや安全保障の優先から、米国の大学では国際化の戦略を見直したり、国際教育や研究協力の実施面で影響が出ており、国際化のマネジメントにも大きな変化が起きていることが分かった。カナダ、豪州、オランダ、英国などでは住宅問題、移民問題、右派政権の誕生等、国内問題により留学生を減らす政策も出ており、留学生を増加させたい東アジアとの違いが大きくなっている。中国との関係でも、孔子学院を廃止する欧米や豪州と、それを維持する東・東南アジアの違いが大きくなっている。 このような大学を巡る環境的変化や外的要因により、国際化が大学経営・評価という点からも重要な課題となっている。大学国際化は政策と実践で大きな変化が起きており、そのマネジメント手法開発をテーマとする本研究に寄与する有益な知見を得ることを優先させた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、前年度の文献・資料調査、事例調査で得られたデータの分析を行ない、ポストコロナにおける大学国際化のマネジメントに関わる環境的変化や外的要因の影響、及び新しい政策や戦略の動向を整理する。そのうえで大学における国際化の実態、課題、障害を把握するために、国際化に前向きに取り組む日本国内の大学に対して、オンラインによる質問票調査を実施する。その際、調査で使う質問票は、上記文献・資料調査で得たデータの分析結果を反映させるため、再度全体的に見直したうえで完成させる。 次に、質問票調査で得られたデータの統計分析と大学国際化マネジメント手法開発のための試行用テンプレート作成を行う。そして、そのテンプレートを使って、質問票調査に回答してくれた大学を中心にワークショップを実施するとともに、質問票調査で得られたデータの分析結果をもとに、学会発表を行い、併せて論文を執筆する。調査結果については英訳し、海外の大学国際化の研究者や国際化に取り組む大学にも発信したい。
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