研究実績の概要 |
本研究の目的は,全盲者と弱視者両者が同時に利用できる“「しゃべる」触図教材”を開発することである。視覚障害者の協力を得て評価・試作を繰り返し,その制作ノウハウなどの成果を全国の特別支援学校や視覚障害施設に提供し,晴眼者と共に学べる学習環境を実現することを最終的な目標とする。 我々は,タブレット端末を触図と連動させることで,図表に音声情報を付加して理解する新規教材の開発を行ってきた。タブレット端末一つに,機能をまとめオールインワンにすることで,視覚障害者にとっての学習ツールがよりポータブルな形となることを目指している。令和2年度~令和3年度は,授業用教材の触図の解説を音声ファイルへと変換しドットコードへの組み込み,さらにタブレット端末と触図の連動を行った。令和4年度は,学内の倫理委員会の承認を得た「視覚障害学生のための触図と音声を付加したパワーポイント教材を連動させた新規学習ツールの開発」を進めた。 令和5年度は,新規学習ツールによる自主学習を行い,小テストおよびアンケートなどによって,教材の学習に対する効果および使用感についての検討が可能になった。 その成果は,第64回日本神経学会学術大会「視覚障害学生への神経内科学教育:「しゃべる触図」とタブレット学習ツールの開発.」(白岩 伸子, 鮎澤 聡,大越 教夫.)筑波技術大学テクノレポート 2023;31(1) 19-23. 「視覚障害学生のための触図と音声を付加したパワーポイント教材を連動させた新規学習ツール:「しゃべる触図教材」の開発.」( 白岩 伸子,周防 佐知江,大越 教夫.)第64回弱視教育研究会全国大会.2024-1-19(広島)「視覚障害者のための触図と音声を付加したパワーポイント教材およびドットコードを連動させた新規学習ツールの開発.」(白岩 伸子,周防 佐知江,大越 教夫.)にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画上①まずドットコードの技術をさらに発展させ,触図に取り入れる:令和2年度は、授業用教材の触図や図表の解説を人工音声変換によって音声ファイルへと変換しドットコードへの組み込み作業を行った。②読み上げ機能を付加したタブレット端末と触図の連動:令和3年度は、タブレット端末に触図を載せて、触図を触りながらタブレット端末の音声情報を聴くという方法を検討した。タブレット端末一つに機能をまとめてオールインワンにすることで,携帯できる「読む」ツールが可能になる。 令和4年度は、本学視覚障害学生に新規音声触図教材の使用感などを聞き、それに基づいてさらに改良を加えていく予定であったが、本学の新型コロナ(COVID-19)感染予防対策として遠隔での講義が長期だった為支障が生じた。 令和5年度5月より,新型コロナウイルス感染症の位置付けが2類から5類感染症へと移行したことに伴い,学内で感染予防対策の変更点に十分注意を払った上で,対面での授業が行われるようになった。それによって,開発してきた新しい図表教材「しゃべる触図」を墨字使用者・点字使用者共に視覚障害学生の授業に取り入れ,その使用感や学習効果を墨字使用者・点字使用者毎に確認することが初めてできるようになった。また,本学医療センターで実施している視覚障害のあるあはき師のリカレント教育の研修の一環として,上記教材による自主学習の効果および使用感を検討した。具体的には,学内の倫理委員会の承認を得た「視覚障害学生のための触図と音声を付加したパワーポイント教材を連動させた新規学習ツールの開発」を進めた。新規学習ツールによる自主学習を行い、小テストおよびアンケートなどによって、教材の学習に対する効果および使用感について検討を行った。
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