研究課題/領域番号 |
20K03062
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
新井 達也 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 教授 (70331303)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 聴覚障害学生 / eラーニング / 動画コンテンツ / 聴覚障害 / 高等教育 / 数学教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,高等教育機関に学ぶ聴覚障害学生のための非同期型eラーニング教材の開発と評価を目的とする. 学習者がPCや携帯端末等を用いていつでもどこでも繰り返し学習できることや紙媒体では表現しにくい内容を動画等の利用により臨場感を持って伝えるられることなどのeラーニングの特徴を生かしつつ,聴覚障害への配慮を前提とした教材設計を検討する. 作成する動画教材では,講師が手話・音声等で内容を説明し,図や数式を含む字幕の提供を試み,話者とスライド,字幕等の配置の工夫による学修効果等への影響を検証する.また,日本語力を必要とするような数学の教材を考案し,教科横断的教材の開発を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究は,高等教育機関に学ぶ聴覚障害学生を対象とした非同期型eラーニング教材の開発と評価を目的としている.聴覚障害学生にeラーニング用動画コンテンツを提供する際には字幕が多用されるが,講師が指示語を使う場合などに字幕の出現タイミングによっては,説明映像との適切な対応付けが困難な場合がある.そこで,説明スライドと字幕との対応付けを手助けするために字幕画面の中に文字情報と同時に数式や図表を提示する字幕(ハイブリッド字幕)を用意し,文字情報のみを提示する字幕(通常字幕)との比較実験を実施した.その結果,ハイブリッド字幕が,通常字幕と同等以上に授業内容の把握に寄与することが示唆された.実験では,3つの注視対象(講義映像,字幕映像,配布資料)間の受講者の視線行動を定量的に分析し,注視対象間の視線移動は循環型ではなく,講義映像を中心とした往復型の視線行動であることなどの知見を得た.また,講師の行動と受講者の視線行動の関係について,講師の板書行動に伴い,字幕映像への視線移動の回数が減少し,配布資料への視線移動が増加することが確認できた.その傾向は,通常字幕に比べてハイブリッド字幕に顕著に表れた.また,研究協力者が開発した映像視聴システム(captioNoveL)を利用した数学の教材を試作した.通常,映像内の音声に従って字幕が表出されるが,captioNoveLは画面上に表示される字幕リストの操作により,対応する動画像を提示するシステムである.captioNoveL教材と通常の動画視聴型教材との比較実験を通して,両教材が同程度の学習効果を有することが確認できた.さらに,captioNoveL教材利用時に短時間で1回目のコンテンツ視聴を終え,必要な部分の理解のために時間を使うなど通常の動画視聴型教材とは異なる多様な視聴行動が見られ,より能動的な学習が促されることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
聴覚障害学生を対象とするeラーニング教材に利用するための動画コンテンツの作成に向けて,講義で利用される字幕の違いによる学習効果への影響や講師の行動と受講者の視線行動の関係について定量的に分析し,いくつかの知見を得ることができた.具体的には,(1)ハイブリッド字幕が,通常字幕と同等以上に授業内容の理解を助けること,(2)ハイブリッド字幕・通常字幕に共通して,注視対象(講義映像,字幕映像,配布資料)間の受講者の視線移動は循環型ではなく,講義映像を中心とした往復型の視線行動であること,(3)講師の板書行動に応じて,受講者の字幕映像への視線移動は減少し,配布資料への視線移動が増加するが,その傾向は通常字幕に比べてハイブリッド字幕において顕著であること,などである.また,数学のリメディアル教材として,既存のeラーニングシステムを利用して,スモールステップで演習問題に取り組めるように工夫した教材を試作し,学生の個別学習のために提供した.さらに,字幕リストの操作により,学習者が自由に動画コンテンツの再生位置を調整できるシステム(captioNoveL)を利用して教材を試作し,captioNoveL教材と通常の動画視聴型教材との比較のための実験を実施した.その結果,両教材が同程度の学習効果を有することが定量的に確認できたと同時に,captioNoveL教材利用時は,短時間で1回目のコンテンツ視聴を終え,必要な部分の理解のために重点的に時間を使うなど,通常の動画視聴型教材とは異なる多様な視聴行動が見られ,より能動的な学習が促されることが示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
captioNoveL教材と動画視聴型教材との比較実験では,両教材の利用により同程度の学習効果が期待できることが定量的に確認でき,captioNoveL教材利用時の視聴行動の多様性や能動的学習を促す可能性があることなどが示唆された.動画視聴型教材利用時は,動画コンテンツを途中で止めたり,戻ったりすることは少なく,再生時間と視聴時間が一致することが多い.一方で,captioNoveL教材は,字幕リストの文章を選択しながら,利用者のペースで学習を進めることができ,動画視聴型教材よりも早い時間でコンテンツの視聴を終えて,残りの時間で必要な個所を再び確認するなど利用者のニーズに合わせた学習が可能である.今後,実験を通して得られた操作ログのさらなる解析に基づき,各教材の特性をより詳細に把握し,学習進度に応じた個別最適な学習環境の提供やコミュニティ機能の実装などを目指す.
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