研究課題/領域番号 |
20K03103
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
油川 さゆり 玉川大学, 学術研究所, 助教 (60858281)
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研究分担者 |
高平 小百合 玉川大学, 教育学部, 教授 (80320779)
大森 隆司 玉川大学, 工学部, 教授 (50143384)
鈴木 美枝子 玉川大学, 教育学部, 教授 (30638218)
小酒井 正和 玉川大学, 工学部, 教授 (50337870)
小原 一仁 玉川大学, 教育学部, 教授 (20407729)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | プログラミング教育 / プログラミング的思考 / 教育ロボット / キュベット / 幼児 / 小学校低学年 |
研究開始時の研究の概要 |
優秀なIT人材やプログラミング的思考の育成を目指し、2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化される。しかし、情報機器の操作が困難な幼児や小学校低学年において、教材がプログラミング的思考の育成に促進的な影響を与えるのか、未だ明らかではない。 そこで本研究は、年中・年長児、小学校1・2年生を対象に、遊びの中でプログラミング的思考を育むことを目的とした教育ロボット(キュベット)と関わることが、子ども達にどのような影響を与え、年齢とともにどのように変容し、いかにその後のプログラミング教育の移行に繋がるかを行動、社会性、認知の3つのレベルで、横断的かつ縦断的に検証することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、幼児と小学校低学年の児童が、一斉保育や授業内で、プログラミング的思考の育成を目的とした教育ロボット(キュベット)と関わる様子を観察・分析し、その影響と変化を3つのレベル:①行動レベル(活動時間や動機づけ);②社会性レベル(仲間との関わり);③認知レベル(プログラミング的思考)で、横断的かつ縦断的に明らかにすることである。 2022年度には、幼稚園年長児2クラス40名、小学校1年生4クラス134名、小学校2年生4クラス126名を対象に、教育ロボットを用いた活動を行った。前年度同様、年長児に対しては45分間の活動を4回行い、1・2年生は、90分の活動を2回行った。1年生と前年度教育ロボットの授業を行っていない2年生の英語クラス(2クラス)に対しては、担任がオリジナルの絵本を用いて授業を行った。前年度教育ロボットの授業を行った、2年生の日本語クラス(2クラス)に対しては、オリジナルの指令カードを用いて担任が授業を進めた。いずれも1~2組に1名の割合で教員や大学生をファシリテーターとして設置し、活動の支援を行った。 活動の後、前年度同様、認知課題と質問紙を行い、プログラミング的思考や動機づけ、仲間との関わりを確認した。2022年度の2年生の認知課題の平均得点は7.49点/9点(SD=1.35)で,1年時と比較して有意に高くなった(t(1,57)=-5.23, p<.01)性差は見られなかった。1年と2年の認知課題得点の間にやや強い正の相関関係(r=.62, p<.01),動機づけの間にやや強い正の相関関係(r=.63, p<.01),仲間の協力の間にやや強い正の相関関係(r=.49, p<.01),協調性の間に弱い正の相関関係(r=.31, p<.05)が見られ、2年間で傾向がある程度一貫していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルス感染症拡大の影響が懸念されたが、前年度同様、会場を大学の講堂や幼稚園のホール等の広いスペースに設定することで、子ども達同士の距離を十分に取り、全員がマスクを着用する等して、感染症対策を講じながら活動を行った。 感染症の影響で、2020年度は年長児と1年生の一部、2021年度は年長児、2年生と1年生の一部でしか実施できなかったが、2022年度は当初の予定通り、年長~小学校2年生の全員が活動に取り組むことができた。しかし、感染症による学級閉鎖等で、活動のスケジュールが変更になることも度々あった。 ファシリテーターの大学生は10~14日間の健康観察をした上で、対面で幼児や児童の活動のサポートを行った。2020~2021年度は、zoomを用いてファシリテーターにオンライン上で活動のファシリテートをしてもらった時期もあったが、お互いに声が聞き取りづらくコミュニケーションが困難であった。対面でのファシリテートは子ども達との会話がスムーズに行われ、特にキュベットへの動機づけの低い幼児、児童に対する働きかけができたと感じている。 2020年度から3年間にわたり、幼児や児童に対して行った認知課題や質問紙、保護者に対して行った質問紙から得られたデータに加え、2022年度には、小学校から学業成績のデータを得た。現在3年分のデータを用いて、子どものプログラミング的思考に影響を与える背景要因を明らかにするため、縦断的な分析を行っている。 また、活動に際し、全てのグループにビデオカメラを設置し、行動記録を行ったが、児童の行動とプログラミング的思考の関連、行動の性差等を確認するため、児童の行動をカテゴリー化(例:ブロックを入れる回数、教育ロボットに触れる回数)し、現在行動解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は2022年度同様、年長児から小学校2年生まで全てのクラスで教育ロボットを用いた授業を行い、その影響や変化を3つのレベル、①行動レベル(活動時間や動機づけ);②社会性レベル(仲間との関わり);③認知レベル(プログラミング的思考)で縦断的に検討することを目指す。これまでの授業の教材として、オリジナルの絵本2冊、マップ2枚、指令カード2種類を作成したが、2023年度以降もこれらを用いて授業を設計していく予定である。また、研究が終了した後も、幼稚園と小学校で教育ロボットを用いた授業を継続できるよう、ファシリテーターの育成や授業を担当する教員を支援する仕組みづくりを行っていきたい。 これまで、幼児・児童、保護者、ファシリテーター・教員より以下のデータを得た。①幼児・児童;プログラミング的思考に関わる、活動の定着度を確認する認知課題,動機づけや社会性を問う質問紙、②保護者;子どもの背景要因(パーソナリティや電子機器に触れる頻度、保護者のプログラミング教育の意識)を問う質問紙、③ファシリテーター・教員;担当した子どもの定着度、動機づけや社会性を問う質問紙、④学業成績;各学期末時点の国語・算数・英語の5段階評価、算数の思考力テストの点数。2023年以降も、これらのデータを用いて子どもの動機づけ、社会性、プログラミング的思考を測定し、その影響や変化について、①行動レベル;②社会性レベル;③認知レベルで、横断的、縦断的に分析を行う予定である。 また、行動解析の方法について再検討し、グループにおける活動に対する児童の積極性の程度を測定し、プログラミング的思考の関連を確認していきたい。
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