研究課題/領域番号 |
20K03112
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
石毛 弓 大手前大学, 現代社会学部, 教授 (50515327)
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研究分担者 |
合田 美子 熊本大学, 教授システム学研究センター, 准教授 (00433706)
椿本 弥生 東京大学, 教養学部, 特任准教授 (40508397)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 学修サポートセンター / 質的調査 / アンケート調査 / インタビュー調査 / チュータリング / 成果の可視化 / チューティー / ピアサポーター / 学修支援 / 効果測定 / ラーニングアウトカム / 学習支援 / アセスメント / アウトカム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、高等教育機関における学修支援活動の成果を「アウトカム・ベースで評価するフレームワークと手法」を開発することである。これまでの学修支援活動の成果報告は、アウトプット・ベースが中心だった。アウトカム・ベース評価では、利用学生の行動やチュータリングの変化等を可視化することで、学修支援活動を質の面からも評価することができるようになる。計画としては、まず評価のフレームワークを作成し、それに合わせて学修支援の効果を測ることができる手法を複数開発する。この評価方法の導入によって学修支援活動がいっそう活性化し、学生により効果的なサポートを提供できるようになることが本研究のねらいである。
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研究実績の概要 |
学修サポートセンターの運営や学生に対する成果の可視化を測定する手法を検討し、具体化することが本研究の主旨である。2022年度は、前年度まで行ってきたデータ収集を引き続き行うことと、その分析を主として行った。研究代表者の勤務先を主なフィールドとし、毎学期末に全学生を対象としたアンケート調査を実施した。また、学修サポートセンターの利用者に対するインタビューをおなじく毎学期末に行った。アンケート調査の結果は前年度と比較して分析し、質問項目の再考を行った。今年度の新しい試みとして、学修サポートセンター利用者の特定科目群に関する利用時間や利用回数、またリピート率等についての比較検証をIRの視点から行った。インタビュー調査は、複数年にわたってインタビューを継続している学生の動向や変化について検討した。また、本研究においてこれまでインタビューしてきた学生の調査結果を個別にまとめる「リーフ」を作成した。さらに当該年度からの試みとして、学生がどのような場面で学修支援を求め、また行動するかというアカデミック・ヘルプシーキングに着目した。このトピックについて、学修サポートセンターの利用データやインタビュー結果からみた行動や、特定科目における振る舞いの分析等を行った。さらに、インタビューデータの分析手法の一例としてテキストマイニングによる可視化についての研究にも着手した。これまでの分析方法では文脈の読み取りが重要だったが、テキストマイニングにより異なる観点からのアプローチが可能となった。本年度のこのような成果は、カークパトリックの4レベルをモデルとするフレームワークの妥当性を検証するデータとして活用すると同時に、同フレームワークを活用する際の事例として用いることを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況で(3)を選択した理由は二つあり、一つは当初3年で計画していた内容をCOVID-19まん延の影響により4年に延長したためである。そのため、予定していた2022年度ではなく2023年度が最終年度となった。もう一つは、下記に示す「ライティングの測定メソッド」の開発が遅れている点である。ただし、インタビューデータのテキストマイニングなど、他の手法の開発は進めることができた。以下、2021年度の研究計画に基づいて、主要となる3点について進捗状況を報告する。 ①フレームワークの確認:フレームワークは前年度に設定した内容と同一のものを使用した。すなわち4レベル5項目(レベル1「反応」、レベル2a「態度・認識の改善」、2b「知識・スキルの習得」、レベル3「個人の行動の変化」、4「組織の利益」)の分類であり、これを基準として問題がないことを確認した。 ②測定メソッドの構築と検証:これまでの研究に基づき、アンケート調査とインタビュー調査、また学修サポートセンターの利用状況データを、フレームワークに合わせて分類した。また種々のデータを、学修支援活動の成果として客観的評価を得ることができるかたちでみせる方法について検討している。ライティングに関する測定メソッドの開発が遅れているが、データとなるレポートの収集や組織的な学修サポートの方法についての検証は行っている。インタビュー調査のデータについては、従来のKJ法に加えてテキストマイニングによる分析の開発に取り組んでいる。 ③それぞれのレベルの目標を設定するシートの開発と検証:シートについては、まず基本となるものを作成した。この基本シートは、レベルの目標を設定したり、測定メソッドを決定したりするために役立てるものとなる。基本シートの活用方法については現在検討中である。また、特定の学修支援に特化したシート(たとえばライティング)の作成を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、表題にあるように学修サポートセンターの成果を測定できるフレームワークと測定するメソッドを開発することである。最終年度となる2023年度は、本研究の成果を第三者が利用できるかたちにまとめることを目標とする。 フレームワークは、カークパトリックのモデルを参照しつつ、「現在までの進捗状況」で述べたように4レベル5項目のものを用いる。このフレームワークに基づいて、学修サポートセンターの成果を可視化するメソッドを提案する。また各項目の目標やメソッドを整理するためのシートを併せて提供する。これを基本モデルとして、特定の分野や科目におけるフレームワークやメソッド、シートを作成する。現在予定しているのはライティングに特化したものである。基本モデルには、使用した際のサンプルとなる資料をつける。これは、本研究で収集したデータの一部を、外部資料として参照可能なかたちに調整したものを基に作成する。 測定メソッドは、基本モデルではアンケート調査とインタビュー調査、学修サポートセンター利用データ等を用いる。これらの項目を紹介したりデータ分析の手法を解説することで、利用者が自分の環境に合わせるかたちで調整して利用できるようにする。また基本モデル以外では、その内容に応じた測定メソッドを紹介する。 さらに2023年度の新たな試みとして、学修支援の環境デザインを測定する指標について調査する。たとえば学習スペースの評価システム(LSRS)を用いることで、学修サポートセンターの学修環境が整備されているかどうかをチェックすることができる。このチェック項目もまた、学修サポートセンターというものをハード面から評価する測定メソッドとなりえると考える。
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