研究課題/領域番号 |
20K03195
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 神戸女子大学 (2022-2023) 九州産業大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
久木山 健一 神戸女子大学, 文学部, 教授 (10387590)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | ソーシャルスキル / SST / スマートフォン / 大学生 / ソーシャルスキルトレーニング / セルフSST / アプリ開発 / 遠隔授業 / SNS / ビデオ会議 |
研究開始時の研究の概要 |
現代はスマホを利用してスケジュールや自己管理を行う者が多い。本研究ではそのスマホの利点を活かし,これまで個人のみではモチベーションの維持が困難であるとされていた自分によるソーシャルスキルトレーニング(以下セルフSSTと略す)に活用することで,大学生の自発的なソーシャルスキル向上のサポートを効果的に行えるアプリの開発を目的とする。 上記のアプリを用いたセルフSSTの研究を継続することで,これまで検討が困難であった日常生活の中の自然な状況における自発的な対人関係能力の発達プロセスについて理解する足掛かりになるとも考えられる。
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研究実績の概要 |
本研究は,自分で自分のソーシャルスキルを高めるためのトレーニングを行うセルフSSTを実施する際に,スマートフォンのさまざまな機能によるサポートを加えることでより効果的なセルフSSTを可能とすることを目的として計画された。 しかし,新型コロナの感染拡大予防のため対人コミュニケーションが極度に制限されたことにより,そのような状況下でのソーシャルスキルおよびSST研究を行うことは従来の研究結果との齟齬を生む可能性が残っていたため,令和4年までは本来の研究を実施することができず,基礎的な研究を行うことに留まっていた。 令和5年度は,これまで行ってきたセルフSSTの改善及び実施状況からの見直しと,学校などでのSSTとは異なりセルフSSTでしか伸長できないスキルの側面を明らかにする研究を主に行った。 セルフSSTの改善に関して,前年度までに行ってきたセルフSSTのデータより,調査期間中にセルフSSTを継続することができなかったため,セルフSSTの効果を検討する研究では分析対象とならなかったものをもとに,その失敗の原因を検討することを行った。その結果,ターゲットスキルをセルフSSTするための場面を得られないことや,設定されたトレーニング内容のレベルの不一致が問題となる可能性の指摘や,セルフSSTの実施のためのリマインドやフィードバックの重要性などが考察された。 大学等での集団SSTでのトレーニングが困難であり,セルフSSTでしか伸長できないスキルとして,大学外での食事,飲み会,野外活動,祭などといった活動での対人適応を取り上げ,それらについてどのようなセルフSSTが有効であるかを検討した。その結果,同世代ではなく異世代との交流が行われる場合に問題を感じる者が多く,特に祭やスポーツなどを異世代と行う際に問題を感じる者が多いことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時は,新型コロナによる従来の対人コミュニケーション研究ができないことに加え,研究代表者が申請時と異なる大学に所属が代わり,調査協力者の属性の偏りの問題やサーバーを利用したアプリケーションをもちいたセルフSSTを実施できなくなるなど,申請時に計画していた通りの進捗をしめすことが困難な状況であった。しかし,そのような状況の中,性別・年代・社会経済地位などが大きく異なる他者との相互作用が起こる状況をターゲット環境として想定し,ターゲットスキルとして「異世代交流スキル」を想定したセルフSSTについて研究することを目的として令和5年以降の研究を継続することとした。 また,大学生以外を調査対象者としてセルフSSTを実施する場合,調査会社に依頼して調査協力者を募集することは可能であるが,専用のアプリケーションのインストールを行った上でセルフSSTを実施するなどの研究を行うことは技術面・予算面の両方で困難であることが考えられた。そのため,現在では主にスマートフォンのスケジュール機能および通知機能を活用したセルフSSTに限定した検討を行うこととした。 上記の計画見直しを経て,実際に調査を行うことが可能となり,発表できる成果も出てきたため,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで,調査は大学生を主な対象として行ってきた。しかし,セルフSSTを活かせる対人場面として,祭や飲み会などでの異世代との交流が有効であることが分かったため,大学生以外の年齢層にも調査を行う必要性が生じた。 そのため,ネット調査会社などの外部サービスを用いて幅広い年代の社会人に調査を行う必要が出たため,令和5年度の研究は所属の研究費で賄えるものを主とし,令和6年度に残余の資金を集中してネット調査を行う予定である。 また,セルフSSTなどを通じて対人関係を良くしようとするモチベーション的要因として,これまでの研究からBig Fiveの外向性や協調性などの要因が関与しうることが想定された。しかし,異世代との交流を求めるためには他の要因の関与も考えられるため,エリクソンの世代性の要因も導入し,セルフSSTとの関連について検討することを予定している。 さらに,これまではセルフSSTを実際に行っているところを観察したことが無かったため,実際にセルフSSTを行う際にどのような問題が生じ,そのため継続ができなくなっているかを検討することができなかった。そのため令和6年度では,模擬的な立食パーティー場面を開催し,そこでセルフSSTを体験してもらい,セルフSSTの実施者の行動を観察することを通じてセルフSSTの実施上の問題点を理解し,また効果的にセルフSSTを行えている参加者にインタビューを行うことで,セルフSSTの改善を目指す。 最後に,令和6年度は本課題の最終年度となるため,これまでの研究成果を国際心理学会(33rd International Congress of Psychology)で発表し,海外の研究者からの意見をいただいた上でまとめる作業を行う。
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