研究課題/領域番号 |
20K03201
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
人見 久城 宇都宮大学, 共同教育学部, 教授 (10218729)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 小学校理科 / ものづくり / 授業研究 / 理科教育 / 科学教育 / カリキュラム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,理科学習としてのものづくりの指導方略の洗練化を図り,質の高い指導方法を提案しようとする。具体的には次の3点に焦点化する。 (1)小・中学校理科におけるものづくりに関して,学習内容や指導方法に対する教員の意識や指導観などを調査し,ものづくりの指導に関する課題を焦点化する。 (2)科学と技術的内容の融合を積極的に取り入れたアメリカの教育プログラム等を分析し,理科における技術的内容の扱いや指導方法の特質を探る。 (3)理科におけるものづくりに関して適切な学習内容と質の高い指導方法を提案する。授業実践を通して児童・生徒のものづくりに関する理解や意識等を分析し,指導方略の妥当性を検証する。
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研究実績の概要 |
第一に,理科におけるものづくり活動の洗練化に向けた指導方略の検討として,日本のものづくり活動に類似したアメリカの学習プログラムの特徴を分析した。事例として,カリフォルニア大学で開発された科学教育プログラムFOSS(フォス;Full Option Science System)を取り上げ,同プログラムの教師用指導書や教材ワークシート等を分析した。科学教育に導入されたエンジニアリング・デザインの過程がものづくりを展開する上で大きな示唆を与え,それに沿った内容が学習の中心的教材として具体化していることを再確認した。 第二に,ものづくり活動の創案と評価として,中学校第2学年「電気」単元における活動案を作成し,教材を製作した。学習で獲得を目指す能力は「推論」に焦点化した。製作した教材は,ミステリーカードである。これは,A6サイズの画用紙を2つに折り曲げて,A7サイズ程度にしたカードである。内側の片方の面に,好きな形に切り取ったアルミホイルを貼り付けさせる。もう一方の面には,6箇所の穴をパンチで開けさせる。カードを折り曲げた状態では,穴からアルミホイルしか見えないが,2つの穴に豆電球を含む電気回路を接続することで,その通電結果から内部のアルミホイルの形を推定させるものである。実践した授業において,学習者は通電結果を整理し,カードの中のアルミホイルの形を推定した。授業後の振り返りの記述から,本活動が楽しさを誘うものづくりであり,学習の難易度が適度であったことなどが検証された。 第三に,活動を評価するための知見の整理として,新しい評価観点の一つである「主体的に学習に取り組む態度」に関し,望ましい評価のあり方について論点整理をおこなった。その結果,留意点として,情意面よりも意思的側面に立った評価を進めていくことが重要であるということが抽出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理科におけるものづくりの指導方略の検討を目的として,研究の第3年次である令和4年度は,(1)ものづくり活動の洗練化に向けた指導方法の検討,(2)活動例の作成と実践を通した評価,(3)「主体的に学習に取り組む態度」に関する論点整理に取り組んだ。 研究(1)としては,アメリカにおける科学教育プログラムでものづくりを中心に据えた事例の分析を継続した。研究(2)としては,アメリカの科学教育プログラムから着想を得て,ミステリーカードという教材を作成し,授業を通して効果を検証した。授業時の振り返りの記述から,本活動が楽しさを誘うものづくりであり,学習の難易度も適度であったことなどが検証された。 研究(3)としては,おもに文献研究を進め,その成果日本科学教育学会において口頭発表した(人見,2022)。新しい教育課程の下での新しい評価観点の一つである「主体的に学習に取り組む態度」の評価のあり方の論調は幅広い。その結果,留意点として,「楽しかった」等に代表される情意面よりも,「わかった」等の意思的側面に立った評価を進めることが重要であることが抽出された。この点は,理科におけるものづくり活動の評価に対しても,重要な示唆を与えるものと考えられる。 なお,令和4年度に予定した研究内容の一部は達成できたものの,新型コロナウィルスの影響により,アメリカへの渡航調査は断念せざるを得なかった。授業の参与観察などは,当初の計画に照らして若干の遅れが出ている。令和5年度の研究内容として,(1)ものづくり活動の事例の更なる考案と評価,(2)アメリカ等における科学教育プログラムの分析等を進めていく予定である。(2)については,実施可能であれば渡航調査をおこなう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の研究内容として,(1)ものづくり活動の事例の更なる考案と評価,(2)アメリカ等における科学教育プログラムの分析等を進めていく予定である。(2)については,実施可能であれば渡航調査をおこなう予定である。 (1)については,これまでの実践例をふまえ,ものづくり活動の指導における改善点を検討し,洗練化に沿う指導方略を策定していく。従来の指導方法であった応用的なものづくりの方向を踏襲するとともに,エンジニアリング・デザインの過程に対応する探究型のものづくりを指向した学習の展開を検討していく。 欧米やアジアを問わず,多数の国々で,学校教育や学校外の広範囲な教育活動において,STEM(ステム)/STEAM(スティーム)教育が急速に普及している。これは,科学(Science),技術(Technology),工学(Engineering),芸術・言語等(Arts),数学(Mathematics)等の各教科領域における学習を広く関連付け,課題解決能力を育成しようとする教育で,基礎的学習ではなく,極めて応用重視の学習である。翻って,理科のものづくり活動にも応用的視点が重視されることから,STEM(ステム)/STEAM(スティーム)教育との共通性や親和性を整理することは,ものづくり活動を洗練させていく上で重要であると考えられる。令和5年度は,このような問題意識を中心に,学習内容の選定と学習指導法の検討を継続することを考えている。この作業を通して本研究の特徴を明確にしていくつもりである。
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