研究課題/領域番号 |
20K03223
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
平井 英明 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20208804)
|
研究分担者 |
白石 智子 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 准教授 (00453994)
出口 明子 宇都宮大学, 共同教育学部, 准教授 (70515981)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 土の親しみの尺度 / 泥団子 / 土の癒しの効果(アメニティ) / カレー一杯の白米 / 命を支える土壌の質量 / 体験型土壌教育プログラム / 土壌教育 / Pre-post心理アンケート / ネガティヴな感情・認知 / 家庭内での土体験 / 森林表土 / 疑似的土壌教育教材 / ポジティヴな感情・認知 / 落ち着く / 土壌の形態と機能 / 心の健全性 / 人材の養成 / 持続可能な社会 |
研究開始時の研究の概要 |
都市化が進む現代の社会において,土壌の形態と機能を正しく理解し,伝えることのできる人材の育成を促す土壌教育パッケージを複数開発する。現代社会での炎症性疾患の増大と人類が多様な微生物叢と乖離した生活を習慣化させている実態との関連性が2010年代になって複数の論文で指摘されるようになった。この研究を受けて,多様な形態と機能を統合的に有する土壌に直接素手で触れ,野外フィールドにおいて実体験する土壌教育パッケージを開発実践する。この取り組みを通じて,土壌が地球上の生命のプラットフォームであることを認識し,持続可能な社会の創造に貢献できる統合的な見方・考え方のできる人材を育成する。
|
研究実績の概要 |
コロナウイルス感染症の蔓延の中で体験型土壌教育プログラムへの入門として、市販の泥団子キットを活用して泥団子作りを通じて、その作製する前後における土への親しみが変化するかどうかに関する検証を行った研究結果を論文化し、土壌肥料学雑誌に投稿し受理された。この論文では、土への親しみの尺度を、研究分担者および研究協力者とともに予備的尺度として作成した点に新規性がある。この尺度を用いて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策により遠隔授業の受講を余儀なくされている大学生を対象に,市販製品を利用した泥団子作りの心理的効果について検証した.その結果、泥団子作製前後において,土に関する感情・認知については,土に触ることをポジティブに捉える方向へ変化し,土の特徴を“きれい” と評価する程度が上がり,“きたない”,“くさい” と評価する程度が低下した.泥団子を作製するという疑似的体験であっても,土への親しみが向上する傾向がみられた.これに引き続いて、カレーライス 1 杯に必要なコメを生産する土の面積と質量の作物・土壌学的調査と題して、同雑誌に論文として投稿した。この論文の内容は、宇都宮大学農学部附属農場において30年以上、牛ふん堆肥を連用している水田、化学肥料を連用している水田、稲わらを除去した無肥料の水田において栽培された水稲(ゆうだい21)の生育収量や土壌の質量より、常日頃口にしている白米がどれぐらいの面積や質量の土地や土壌によって生産されているのかを定量的に示す内容となっている。この研究結果を活用すれば、例えば市販のパック御飯を教材として、その御飯を生み出す水稲が生産されている土地の面積、土壌の質量を実感することができるような体験的土壌教育プログラムパッケージの開発につながる。令和4年度は、これらの研究論文内容を踏まえた、体験的土壌教育プログラムを考案し、高校生に対して実践した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルス感染症の蔓延下では、体験型土壌教育プログラムの野外での実践が困難であった。このため、土の親しみの尺度を予備的尺度として開発し、体験型土壌教育プログラムを野外フィールドで実践することができない社会環境の中における、土を疑似体験するプログラムを、市販の泥団子キットを用いて開発した。さらに、土、砂、シュレッダーダストを、ビニル袋に充填して、教室内で3種類の対象物に素手で触れる体験的プログラムを実践し、土の親しみの尺度を活用した、触れる前後の心理的な変化を調査した。さらに、野外フィールドにおいて土壌に触れ、感じる様子を動画に収め、それを視聴する動画教材の開発やそこで直接触れている落葉が分解した腐葉土を高校生が自宅で体験的に触れるという体験的な土壌教育法の開発にも取り組んできた。コロナウイルス感染症の中にあっても、これらの工夫をしながら研究計画の目的の達成に向けて取り組んできた。加えて「泥団子キットを用いた疑似的土体験の心理的効果-体験型土壌教育プログラムへの導入教材として-」、「カレーライス 1 杯に必要なコメを生産する土の面積と質量の作物・土壌学的調査」という2つの論文を投稿することで、土の親しみの尺度の有用性やカレーライスを用いた体験的土壌教育プログラムの作物学・土壌学的側面から解析することで、自分自身の命を支えている土壌を実感を伴いながら定量的に理解する方法を示すことができた。加えて、令和4年度は、これまで実施してきた内容を、農学部附属農場において4日間にわたって複数の体験的土壌教育プログラムパッケージを開発し、高校生に対して実践した。以上の取り組みから、体験的土壌教育プログラムの開発・実践の観点、そして、本プログラムを受講した児童生徒・一般成人が定量的に理解する学術的根拠を示すことができた点を考慮すると、研究がおおむね順調に進んでいると考えられた。
|
今後の研究の推進方策 |
現在投稿している「カレーライス 1 杯に必要なコメを生産する土の面積と質量の作物・土壌学的調査」が現在審査中であるため、この論文の審査結果が出た後、受理することができるように共同研究者と議論を重ねながら取り組んでいく。袋に入れた「土」、「砂」、「シュレッダーをかけた紙」に触れる前後での心理変化に関する研究では、1クラスの高校生をランダムに3つのグループに分け、異なる3種類の袋に触れてもらうような土に触れる体験の前後での心理変化に関する研究を、3つのクラスで行った。この研究結果に関しては、一般心理尺度および土の親しみの尺度の2つの尺度を用いているため、土に触れる前後での心理変化をより詳細に解析できる。このデータを次年度は自由記述共に、統計的な解釈を行い共同研究者間で議論を繰り返しながら原著論文として投稿する。泥団子作りにより疑似的土体験を行った前後の心理変化の内容、さらに、室内でビニル袋に入れた土や市販の砂に触れた前後の心理変化の内容に関する研究結果を踏まえて、附属農場における体験型土壌教育プログラムパッケージを開発し実践した。その実践は、4回実施されており、それぞれ、一般心理尺度、土の親しみの尺度を用いて、体験型土壌教育プログラムを受講した前後での心理変化のデータを取得できている。さらに、前後のコンセプトマップやリフレクションシートのデータを取得することができている。加えて、TAとして参画した大学生や研究支援員が、受講した高校生を観察した結果を取りまとめ、各回に設定された体験型土壌教育プログラムの目標に関する達成度を評価してもらった。以上のデータを取りまとめた上で、理科教育、心理学を専門とする共同研究者に対して、上記の体験型土壌教育プログラムパッケージを説明し、この体験型土壌教育プログラムの評価を行う。この評価に基づき学術論文作成を行い研究成果の公表に努める。
|