研究課題/領域番号 |
20K03239
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 人間環境大学 |
研究代表者 |
吉武 久美 人間環境大学, 心理学部, 教授 (90706665)
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研究分担者 |
光井 能麻 名古屋大学, 減災連携研究センター, 博士研究員 (20435837)
中川 和之 静岡大学, 防災総合センター, 客員教授 (10836521)
坪井 裕子 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (40421268)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 熊本地震 / 地学教育 / 心の減災 |
研究開始時の研究の概要 |
2016年に発生した熊本地震の事例について、地震による被害を受けた益城町の小学校で理科の教鞭をとっていた元教員および、その教え子であった成人を対象に面接調査を行い、事前の地学教育(地震や断層に関する教育)が被災者の心理状態や被災体験の捉え方やそこからの回復などとどのように関わっているのかを探索的に検討する。会話内容の分析により心理的プロセスの仮説を生成し、さらに、アンケート調査で仮説を検証し、事前の地学教育と被災時の心理状態との関係を明らかにする。これにより、学術的根拠をもって地震学の適切な社会普及を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、地震学の社会的普及を目指し、被災生活と地震学の関係を理解するために、地震学を含む事前の地学教育から被災時のストレス軽減に至る過程を想定し、事前の地学教育と被災による心理状態との関係を明らかにすることを目的としている。 本年度は、2022年に実施したインタビュー調査の会話データを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いた分析を行い、つぎのようなことが示された。子どもの頃の授業内容を思い出した人たちと思い出さなかった人たちで比較したところ、(1)被災時に強い恐怖を感じ、不安を感じていること、地元に対して愛着を持っていること、また震災後に災害への備えを意識していたことは共通していた。災害意識や防災行動に関して、特に(2)思い出した人たちは、災害を前向きに受け止め、高い防災意識による備えが見られた。(3)思い出さなかった人たちでは、初めて経験する大きな揺れへの驚きや非日常がもたらす高揚感への言及が見られた。 これらの結果から、授業のことを思い出した人たちは、自分が体験している地震がどの地域でどのように発生したのかを「わかった」という感覚を得たことで、地震の揺れへの強い恐怖を感じながらも、余震の不安を抑えることにつながったり、高い防災意識にもとづく防災行動や災害に対する前向きな受け止めにつながったりといった心理的プロセスが示された。 さらに、このインタビュー調査の結果を受けて、事前の地学教育(地震に関する知識)が災害の受け止めや防災意識に及ぼす影響について明らかにすることを目的として、2月末にアンケート調査を実施した。これにより、熊本地震で被災した862名(18歳~86歳)のデータを得ることができ、現在、分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では研究期間中に面接調査とアンケート調査をそれぞれ1回実施することで、当初計画したつぎの2点について検討する考えである。1.本事例の対象者への面接を実施し、会話内容の分析を通じて、事前の地学教育から被災時のストレス軽減に至る心理的プロセスの仮説を生成する。2.対象者と同年代の被災者へのアンケート調査を実施し、仮説を検証する。この2点について、進捗状況をつぎに示す。 1.心理的プロセスの仮説生成を行った。面接調査では当初計画よりも多い、18名の参加者のインタビューを実施することができた。会話データは983.57時間にもおよび、これら得られた会話データは逐語録によるテキストデータとした。このデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析した結果を2023年9月に学会で発表した。これにより、事前の地学教育が余震への不安を低減し、災害の前向きな受け止めや高い防災意識につながるプロセスが示された。 2.心理的プロセスの仮説を検証するため、2024年2月末にアンケート調査を実施し、対象者と同年代の被災者だけでなく、さまざまな年代のデータを得ることができた。今後、9月に学会発表し、その成果を論文化する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
事前の地学教育から被災時のストレス軽減に至る過程を明らかとするため、面接調査で得られた会話内容の分析で仮説の生成を行った。ここで明らかとなった心理的プロセスについて、仮説を検証するためにアンケート調査を実施することができた。現在、得られたデータの分析を進めており、その成果を今秋に学会発表する。また、ここまでで得られた成果を論文化していく予定である。
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