研究課題/領域番号 |
20K03283
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
浪川 幸彦 椙山女学園大学, 教育学部, 客員教授 (20022676)
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研究分担者 |
白井 朗 椙山女学園大学, 教育学部, 教授 (70454345)
塩澤 友樹 椙山女学園大学, 教育学部, 講師 (50813812)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 数学リテラシー / 数学教員養成教育 / 数学的な見方考え方 / 教科内容学 / 理数教育の現代化 / 量の理論 / 教育数学 / 教育の現代化 / Bruner / OECD Education 2030 / 数学の見方考え方 / 科学高等教育 |
研究開始時の研究の概要 |
1.数学リテラシー概念を文献研究・国際調査に基づき再構築すると共にリテラシー概念を教科を越えて一般化する。 2.今世紀日本人の持つべき数学リテラシー具体化の研究を,「科学技術の智」プロジェクト報告書の今世紀版への改訂および「数学の見方考え方」の明確化として行う, 3.中高数学教員の持つべき数学リテラシーの具体化とその教授法の開発を教科教育法の教材研究として実践的に研究する。ここで大学入試問題を活用する。
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研究実績の概要 |
本研究は,数学の教科内容を,数学リテラシー概念を基礎に「今世紀すべての人が持つべき(体系的な)知識」として,学校数学教育カリキュラムを理論的に基礎付け,さらに「数学教員の持つべき数学リテラシー」を具体化して(理系学部での)数学教員養成課程における教授法を研究することを目的とし,以下の3方面で研究を進める。 当初計画は3年間であったが,新型コロナ感染症による研究活動の停滞から,最終的に2年間延長された。本報告年度はその第4年目に当り,以下の成果を得た。 1.数学リテラシー概念の再構築とリテラシー概念の教科を越えた一般化:本年度,通常の研究集会は徐々に再開されたが,なお文献研究が主となった。中心は,前年度出版された数学および数学教育の歴史についての重要文献および関連文献の研究である。特にリテラシー概念の一般化に関わるリベラルアーツ教育について,歴史的観点に基づく研究を教科教育内容学会で発表した。 2.今世紀日本人の持つべき数学リテラシーを具体化する研究:「科学技術の智」プロジェクト報告書の改訂および「数学的な見方考え方」の明確化を目指し,文献研究が中心。特に「言語としての数学」の観点から,「科学技術の智」の改訂版として,前年度開催された「教育数学」研究会の報告原稿をまとめた。また遠山啓の「量の理論」について諸外国の研究と比較検証する方向に向けて考察を進めたが,成書とするには至らなかった。 3.中高数学教員の持つべき数学リテラシーの具体化と教科教育法の教材開発としてその教授法を実践的に研究:名古屋大学で「数学科教育法Ⅰ」「同III」として当該内容についての授業を引き続き担当し,実践研究を実施した。初等関数の体系性等に関し,高校数学教員を対象とする講演を行うとともに,一部を雑誌に公刊した。また小研究集会,Facebook等を通じた現職教員等の意見交流も引き続き行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染症による研究活動の停滞から,本計画を次年度まで延長することが認められた。進捗状況の報告はこの修正された計画を前提とする。 1.研究代表者による前回課題計画「リテラシー概念の教科を超える一般化」を,STEAM教育と関連付けて具体化する日本教育内容学会の新プロジェクトに前年度から参加し,今年度は大学でのリベラルアーツ教育と関連付ける形でプロジェクトでの位置付けを明確にした。数学教師教育はその一部と見ることができる。一方で前年度重要な文献の公刊があって,それらについて現在研究途上にある。特に遠山啓の「量の理論」の歴史的重要性が明らかになった。一方で,その現代的意義についてはもう一歩の考察を必要としている。 2.3.数学教育に関する文献研究においては,数学史および日本の数学教育史の浩瀚な研究が前年度公にされ,その研究から得られた日本の教育の中での本課題の位置付けに基づく研究を推し進めて,部分的に公開した。 一方名古屋大学における「数学科教育法I」の授業を引き続き実践し,その中で「科学技術の智」報告書の内容を深く振り返っている。また授業実践そのものが「数学教員の持つべき数学リテラシー」を考えることになっている。加えて「科学技術の智」プロジェクトに続く,「教育数学」プロジェクトの研究報告として,「言語」の観点からの研究を一部公開した。さらに高校教員対象講演会,一般市民対象の講演会,一般対象数学講座等の機会を通して「数学リテラシー」の具体化を批判的に実践しつつある。 以上から,論考としては中間発表的なものを部分的に公にした段階であるが,研究としてはその方向性がさらに明確なものとなったとの意味で,ほぼ順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本計画最終年度であることに鑑み,従来と方針は基本的に変わらないが,最終的にまとめる方策を示す。 1.数学リテラシー概念の再構築と一般化:Bruner 研究を踏まえ,70年代日本の「数学教育現代化」の批判的検討を進め,リテラシー概念そのものを現代までの教育の流れを踏まえて捉え直し,現在の教育の方向性への示唆を与えるものとして再構築する。教科内容学会内に立ち上げられたSTEAM教育を中心とする新たな研究プロジェクトでは,古典的リベラルアーツからの歴史的流れを重視し,その観点からの提言をまとめる。 2.日本人の持つべき数学リテラシーの具体化:上記「現代化」の批判的検討を踏まえた数学教育カリキュラムの基礎付けの素案を提示する。これは「科学技術の智」報告書の改訂としての研究代表者による「教育数学」の提示である。特に日本における上記「現代化」の批判的検討および遠山啓等の同時代の著作の批判的検討を踏まえる。一方数学史的研究の与える数学教育カリキュラムへの示唆についての論考をまとめたい。 3.中高数学教員の持つべき数学リテラシーの具体化とその教授法の開発:名古屋大学での「数学科教育法」の3年間の講義を総括し,これを教科書,あるいは一般向け著作として公にすることを目指す。 4.今までの研究成果を Webにおいて公開し,さらなる研究の進展に資する。
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