研究課題/領域番号 |
20K03302
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
上瀬 由美子 立正大学, 心理学部, 教授 (20256473)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 偏見 / ステレオタイプ / 拡張接触 / アクションリサーチ / 社会的・制度的支持 / 刑務所 / 社会的包摂 / 接触 / 出所者 / 社会政策 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ステレオタイプ・偏見低減研究において効果的接触の成立条件とされる「社会的・制度的支持」の一形態として「可視化した社会システム」を位置づけ、現実の社会政策におけるその有効性を「拡張接触」の促進に焦点を当てて検証する。本研究では、可視化した社会システムを政策として導入した事例に注目し、被スティグマ化された集団に対する人々のステレオタイプ・偏見が、どのようなプロセスを経て変容したかを、地域成員間の接触の拡張プロセスに焦点をあてて分析する。
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研究実績の概要 |
本研究では、ステレオタイプ・偏見低減につながる社会政策の中で、システムの可視化が当該の政策をどのように有効にしていくのか、「拡張接触」の促進に焦点を当てて検証することを目的とした。2022年度は前年度に行った刑務所近隣住民調査のデータの詳細な分析を行った。刑務所の運営や地域・社会貢献がどのような形で市民に可視化されたのか、どのようにして刑務所や受刑者に対する態度が変容したのかを検討する中で、特に、刑務所と地域の連携という枠組みの中での地域代表者(施設で働く民間職員やボランティア)の影響について注目した。その結果、まず両地域とも住民の中で施設に対する情報共有が進行し、地域変化に関する可視化が進行していたことが明らかになった。また住民は様々な形で施設に接触し、この各種の接触は刑務所制度への信頼を高め、出所者への受容的態度に結びついていた。さらに身近に地域代表者がいる場合には、住民は刑務所開設による地域変化や施設の地域貢献度を強く感じていた。この点に基づいて拡張接触の影響と効果に関するプロセスがモデル化され、拡張接触については従前の研究が扱ってきた成員間の個人的な親しい関係だけでなく、成員間の協働という状況の構築によっても促進される可能性が示唆された。一方、本研究が取り上げた事例においては、地域代表者(民間職員やボランティア経験者)が地域の中で限定・固定化されおり時間が経過しても地域全体に広がりにくいこと、さらに彼らが他の地域住民に知識を提供するような行動は積極的に行われていないことが示された。本研究によって社会的包摂を試みた社会政策の有効性が検討され課題が示されたとともに、学術的にはステレオタイプや偏見の低減に関する拡張接触の効果について新たな知見が提示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では海外での事例調査も予定していたが、COVID-19により海外渡航が難しかったことから、既に報告の通り、本研究についてはアクションリサーチの対象を日本の官民協働刑務所の開設事例に変更している。2021年度には刑務所近隣住民の面接調査と、郵送法を用いた刑務所近隣住民の意識調査の2つを行った。2022年度は前年度までに実施したデータを用いて、研究目的に沿った内容の分析を進め、偏見低減プロセスに関して新たに提出された知見を既存の社会心理学研究の中に位置付けるとともに、現実の政策導入の効果検証を行うことができた。結果をまとめた報告書を作成し、関係者に配布するとともに学会発表も行った。この点から、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究の主たる目的は達成されたが、研究の社会貢献の必要性から、調査地域で研究成果を報告することが必要である。このため翌年度に、本年度まとめられた報告書の内容について、住民向けのシンポジウムで発表を行う。また研究成果について再検討し、学会誌への投稿を行う。
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