研究課題/領域番号 |
20K03303
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
村上 隆 中京大学, 文化科学研究所, 特任研究員 (70093078)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 多重対応分析 / 主成分分析 / 斜交回転 / 正規直交性 / 潜在クラス分析 / 重み行列の回転 / Quartimax 回転 / 社会調査 / 心理測定 / 正規直交アレイ / 潜在構造分析 / 直交多項式 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,村上(2016, 2019,2020) によって開発された正規直交主成分分析の実用的価値と,結果に現れる未解明の現象(特に,馬蹄現象)の発生機序を明らかにし,心理測定や社会調査のデータ分析技法の改善を目指すものである。この方法によって,3次元以上の構造をもつ大規模な社会調査データの分析や,主観的評価尺度項目における評価者の反応スタイルの解明が可能になることが期待できる。
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研究実績の概要 |
今年度の方法論的展開としては,2点をあげることができる.1点目は,多重対応分析の回転の副産物として,多次元解から2次元を選んで,この分析方法のいわば定番である,2次元空間へのカテゴリーと個体の分布を図示することを試みたことである.これは,回転によって,個々の次元を他の次元と一定程度分離することができることのメリットである.もう1点は,同様の図示において,個体を潜在クラス分析によってクラスに分け,記号を分けて図示することである.これについては,従来から多様なデータによって試みてきたが,今回,比較的少数次元のデータに関して,回転の前後の図を比較することにより,明確に回転後の解が解釈的に優位であることを確認した.これについては,23年度の日本行動計量学会大会において発表する予定である. 出版の関係では,Effects of Rotation applied to the multiple correspondence analysis: Reanalysis of Le Roux and Rouanet’s data. と題した論文を単独で執筆,これは,Okada Akinori et al, (eds.) "Facets of Behaviormetrics." Springer. に掲載が確定している.これについては,次年度に文献欄に記載できるものと考えている.もう1点,大阪大学足立浩平教授の論文に第3著者として参加した.現在校正段階に入っており,これも次年度に掲載できるかと思う. これ以外には,不安と抑うつに関する共同研究,潜在構造分析の解説書の執筆等に多くの時間を費やしている.これらは,本課題で開発中の方法を適用するデータ,あるいは,同一データへの適用による比較研究などに活用されることとなろう.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の欄に記したように,申請書に記載の計画については,おおむね達成できたと考えている.その時点では予定していなかったこととして,方法論的には,潜在クラス分析との併用が予想外に有効であることを発見したこと,応用面では社会学における文化資本の概念を,イギリスのデータの分析を通じて,より明確にすることができたことがある.これらについて,特に後者については,今後の専門分野の研究者による評価を待つ必要がある.成果の発表については,隣接分野,特に臨床的尺度の研究について,時間を要しているにもかかわらず,論文の投稿にも至っておらず,この点が「おおむね」という修飾を用いざるを得ない理由である.
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今後の研究の推進方策 |
多重対応分析の(より)多次元の展開,特に回転をともなう方法的展開である正規直交主成分分析については,ほぼ完成の域に達したと考えており,より多くのデータへの適用を通じて,使用方法の細部を詰めていくとともに,理論の詳細で形式的に整った記述をすすめていく必要がある. この方法を用いた,やや大きな問題として,心理測定と社会調査の項目が混在するデータの適切な分析方法の手順をいくつかの面から追及することがあげられる.本来,個人差の信頼性の高い尺度の構成を目指す心理測定と,集団の意識の多様性を記述する社会調査では,質問項目に要求される性質が異なっており,これらを共通の分析に混在させると,心理測定項目の変動の説明だけに偏ってしまい,社会調査が目的とする多様性の表現が制約されてしまう.このことは従来,研究者によってもあまり意識されておらず,特に社会調査においては,心理測定尺度から1~2項目を選択して用いるといった解決策が用いられてきた.しかし,これでは心理尺度が測定を目指す構成概念の一部しか取り上げられておらず,調査全体の妥当性を損なう恐れがある.これについて筆者は,潜在クラス分析により心理測定尺度を少数のカテゴリーに縮退させる方法や,心理測定項目のみを分離して尺度化する方法等で対応してきたが,これらについても,正規直交主成分分析の理論の中に取り込めるような方策を考える必要がある.この点を今年度のもう1つの研究課題として取り組んでいきたい.
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