研究課題/領域番号 |
20K03346
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
山本 睦 (夏堀睦) 常葉大学, 保育学部, 教授 (60434536)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 保育者 / 就業継続 / 資格の高次化 / 日英比較 / 創造性 / 保育者効力感 / 分業システム / イギリスEY施設 / インタビュー調査 / 分業 / 保育マネジメント / 英国ナーサリーのCOVID-19対策 / キャリア発達 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,2014年以降英国が採用した「保育資格の高度化政策」に伴う保育現場での「分業」体制に着目し,分業システムが保育者効力感と就業継続意志に及ぼす影響を精査する。英国と日本の保育者を対象に,3つの比較研究を実施する。第1研究;各分業システムの実態と就業継続意志に及ぼす影響の検討(現職保育者70名へのインタビュー調査;新卒から3年間の追跡調査対象20名含む)。第2研究;インタビューから分業システム下での保育者効力感をP:指導計画-D:保育実践-C:教育評価の保育業務ごとに尺度化し日英比較。第3研究;効力感と養成段階での学習経験との関連性の検討(インタビュー調査;3年追跡調査対象者20名)。
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研究実績の概要 |
2023年度発表業績 1.学会研究発表 第89回日本応用心理学会(2023.8.27) 「英国保育施設管理職のマネジメントの特徴:就業継続支援の観点から」第89回大会論文集,p91. 2.論文 「指針改訂に伴う英国保育施設管理職の対応:カリキュラム・マネジメントの視点から」 常葉大学保育学部紀要,11,1-12. 3.論文 「創造性を育む英国の保育実践:『本物の学習』に着目して」 保育・幼児教育研究年報(常葉大学幼児教育支援センター),1,25-36. 1.2. 2022年6月の渡英時に調査した4施設5名の管理職のインタビューを分析した。この4施設のコロナ禍での離職者数を施設の収容児数や職員数と関連づけて比較を行った。その結果、次の点が明らかになった。第1に就業継続は日本では「人間関係が離職の原因」と言われているため、管理職が苦心している配置の問題ではなく、特に働く時間の融通性に関わる雇用条件の影響が大きい。第2に、多くの管理職がMA(修士号)を取得しており、2014年以降、英国で推進した資格の高次化は、国の指針(EYFS)の改訂に対応したカリキュラム・マネジメントが見られ、保護者に対する説明責任を果たしていた。また、各施設内ではMAを持った管理職、四大卒有資格保育者、無資格だが保育経験によりレベル3を取得した保育者、レベル2の保育助手と階層があり、行う業務も明確に分かれていた。日本の管理職が高卒、新卒が四大卒といった<捩れ>が見られないことから、資格区分や職階レベルに基づく業務内容が明確なこともあり、人間関係が離職の原因になることはないと発言があった。これらは資格の高次化の効用と考えられる。 3. 訪問した施設の写真を交えて、子どものフロー(没頭・没入)を保障し、専門的な領域と結びついた「本物のauthentic」学習が成立している様子を紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度から2021年度はコロナ禍で渡英ができず、大幅な遅れを取った。しかし2022年度に2回渡英調査が実施でき、その際コロナ禍以降保育者の流動制の高さと施設の運営が不安定なこともあり、同じ保育者にインタビューを3年間実施する10段研究案が不可能であることが明らかになったことで、雇用システムの違いとそこから波及する職場の人間関係、特に子育て中の保育者の現状と見守る管理職の視点への影響に比較の視点を絞り込むことができた。 それによって2023年度は、県内5市町の公立保育所、こども園全園を対象に、管理職と子育て中の正規保育職員56名からインタビューを録ることができた。分析の視点は定まりつつあるものの、まずは周辺的な分析として、管理職の語りに注目し、1名で回答した内容と比較して、副園長や主任も含めた2名で回答したケースの語りの比較を開始している。まだ途中であるが日英でその語り方には相違があり、管理職としての園長の意識、実際の役割の違いなどが反映されている可能性がある。詳細な分析結果は、今年度学会発表で報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
実際に調査はほぼ終えたが、最初のコロナによる2年間の遅れは大きく、また一人ひとりの会話量が相当多いので分析に時間がかかりそうである。また報告書も日本語と英語と2バージョン作成するつもりであるので、今年度中の完成は難しいと考える。 本年度中に、管理職の話者数の違いに関する周辺的な分析論文と、この研究の結論部分に相当する「就業継続のためのマネジメント・システム」に関する論文を執筆する予定である。 できれば1年研究期間を延長して、研究全体の報告書の作成(日本語・英語)に集中的に取り組みたいと考えている。
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