研究課題
基盤研究(C)
申請者のこれまでの科研費研究により、学級の心理的環境が児童の社会的コンピテンス、動機づけや適応と関連することを明らかにしてきた。一方で、これまでの研究は単純な一時点の相関や場面統制の強い実験(場面想定法)など、実際の因果関係に言及するうえで様々な限界があった。本申請研究では、学級環境→社会的コンピテンス→適応・動機づけのプロセスについて、これまでの研究を更に発展させた以下の2つの研究を行う。(1)縦断調査により特に社会的コンピテンスが適応・動機づけに及ぼす影響を検討する。(2)学校・学級環境への介入実験により、それらが社会的コンピテンスに及ぼす影響を検討する。
最終年度では、中学生を対象とした縦断データの3時点目を収集した。昨年度からのデータと紐づけ3時点の縦断データとして分析を継続中である。本年度は昨年度の2時点のデータを用いた分析を行い学会で2つの研究発表を行った。1つは友人との学習活動と動機づけの相互的な関係に関するものである。友人との学習活動を行う者ほど、後に勉強に対して興味を持つことが分かった。また、学習への興味は自己効力感を促進させていた。2つ目の研究は、向社会的行動と共感性、および援助効力感の相互的な関係についての分析である。援助効力感は後の向社会的行動を予測すること、共感性のうち認知的共感性が向社会的行動、援助効力感を予測することが分かった。期間を通じて、3つの研究を行った。1つは上述の縦断研究である。2つ目について、本研究期間開始と同時にコロナ禍で学校が一斉休校および行動制限が行われ、調査等の実施が不可能になった。この為、研究計画の変更を余儀なくされ、当初予定になかったメタ分析による既存の縦断研究の統合を行う研究を行った。向社会的行動と友人からの受容の関係についてのメタ分析である。小学生でのみ友人からの受容は向社会的行動に結びつくこと、向社会的行動を行うと友人から受容されること、中・高校生ではいずれも無関係であることが示された。3つ目は介入研究である。社会コンピテンスの一つとして援助要請行動に着目し、生徒同士で話の効き方や声がけの方法について学ぶプログラムを考案、実施した。その結果、統制条件と比較した。援助効力感について本プログラムは一定の効果があることが示された。
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