研究課題/領域番号 |
20K03370
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
藤田 豊 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (60238590)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 感覚刺激と描画過程 / 感覚統合と感性の発達 / 感性の発達と学習過程 / 幼児・児童の感性の発達と教育 / 感性の発達 / 感覚刺激と感性 / 感性と学習過程 / 感性教育 / 感性保育 / 感性の発達構造 / 幼児・児童 / 認知・情動的足場作り / 感性を土台にした学習-教授理論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では,まず,幼児期から児童期にかけての「感性」の発達特性および発達の様相について検討する。次に,幼児期の保育における学びと「感性」の関係,児童期(接続期)における授業における学びと「感性」の関係について吟味・検討する。最後に,「感性」の発達を育む教育とは何か,子どもの内発的な知の活動を支える保育者・教師の役割とは何か,また求められる教育や発達支援のあり方とは何かを明らかにする。以上の分析結果を踏まえ,学習者主体の内発的な知的活動を促す「感性の発達」「感性と学習」「感性を土台にした学習-教授過程」の3つの要因から主要な因子を抽出し,発達構造モデルを提案する。
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研究実績の概要 |
令和3年度の研究実績概要:本研究課題の基本計画は,幼児期から児童期にかけての子どもの「感性」の概念定義を行い,実験変数を設定した上で(1)感性の発達的特徴について,(2)感性の発達と学習過程との関係について,(3)感性を土台にした内発的学習を育む保育・教育の方法について,それぞれに実験課題(あるいは保育・授業実践課題)と効果測定のための評価尺度を開発し検証することである。本研究計画は当初3年間で実施する計画であったが,コロナ禍による当該期間中の感染拡大防止から保育現場での研究が困難であったため,令和5年度,6年度と計画期間を延長して実施するものである。令和4年度については,上記研究目標 (2)に係る子どもの感性と内発的な学習過程との関係について,海外での教育実践に係る研究のレヴューを通して,理論的枠組について整理を行っている。それと併行して,特に幼児期から児童期にかけての多感覚的な情報処理過程(視・聴・触などの感覚器官の独立性や相互性等)について,コロナ禍以前に幼児期(5,6歳児)の子どもを対象に実施した実験データの分析作業を継続して行っている。令和5年度は,本研究目標(3)に関連して,描画活動やその他関連する制作(体験)活動を通した内発的学習過程について検討した。具体的には,令和2年度以前に実施した児童期高学年の国語科の授業場面における子ども同士の自律・協働の学習過程について,認知的・メタ認知的機能の観点から分析を行い,国際学会で発表を行った。全体的な研究の進捗状況について,現在は幼児期の多感覚器官を通した認知過程を重視した保育プログラムについて検討を行っており,令和6年度まで本研究の実施に係る補助事業期間延長申請について承認されたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の目的は,子どもの感性に支えられた学びとそれを促す教育や発達支援に焦点を当て,令和2年度に(1)幼児期から児童期にかけての「感性」の発達特性について,令和3年度度以降は(2)周りの世界を学び始める過程に「感性」がどのように作用しているのか幼児期から児童期にかけての保育活動や授業場面における発達的関係性について検討する計画であった。しかしながら,本研究計画3年目も,コロナ禍による感染拡大防止のため,保育・学校現場での視覚・聴覚・嗅覚・触覚などの感覚器官を総動員させながら実験(実践)研究の実施は困難であると判断し,当初予定していた本研究目的(2)について検討することが十分にできなかった。そのため,令和4年度(および5年度も継続して)については,令和2年度までに収集していた先行実験データの分析を通して,幼児の描画過程における各感覚器官の機能の特長と,それが子どもの描画過程 (線,点,輪郭・形,色使い,全体・部分表現等)に齎す影響について,子どもの言語プロトコルから推察される課題刺激の参照過程と関連づけながら課題解決過程の詳細について分析を行った。それと併行して,令和5年度は,児童期以降に描画活動やその他関連する制作(体験)活動が,授業での理解過程(内発的学習過程)に及ぼす影響について検討を行い,認知的・メタ認知的プロセスに焦点化した児童の自律・協働の学習過程について国際学会で発表を行った。これまでの研究の進捗状況に鑑み,令和6年度は(a)幼児期の描画活動における多感覚器官を通して得られる感覚情報の影響過程に係る理論化・論文化の作業と(b)描画や制作といった体験活動を踏まえた,保育・教育プログラムの開発が主な課題である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の推進にあたっては,当初の3年計画での成果を上げることが困難であると判断し,令和4年度に補助期間の延長を申請したが,十分な目標達成に至らず,令和5年度も引き続き期間延長の承認申請を行ったところである。 令和5年度については,令和3,4年度において実施することが困難であった3つの研究計画のうち,研究計画(3)について,児童期における感性を土台にした学習支援のための授業のあり方について,対象を高学年まで広げて検討を行った。具体的には,描画とそれに関連した制作活動が,文章読解に係る授業場面において子ども同士の自律・協働の相互作用を刺激し,認知的・メタ認知的に著者の意図を多角的かつ再帰的に吟味することに関連していることを示唆した。これら一連の分析結果については,国際学会にて発表を行った。これに対して,研究計画(1)については,視覚・触覚・嗅覚刺激に対する感性の発達的特長について,自然のなかで観察した色々なもの(要素,要素と要素の繋がり,全体構造)を,感覚器官を積極的に働かせて多様に表現させる課題(令和2,3年度の描画課題)の遂行過程に係る分析作業に時間を費やした。そのため,子どもの様々に探索する活動が,感覚器官の違いによって,どのように異なるか,探索過程やその後の発話プロトコルに現れる表象(イメージ)の機能分析に時間を要してしまい,論文化までには至らなかった。令和6年度は,本研究計画の最終年度として論文化・理論化する作業に注力する。研究計画(2)については,子どもの感性と内発的な学習過程とはどのような関係にあるか,という本研究の研究目的とも併せながら,幼児期と児童期の感性と学習過程との発達関係モデルを構築する予定である。
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