研究課題/領域番号 |
20K03379
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
伊田 勝憲 立命館大学, 教職研究科, 教授 (20399033)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 動機づけ / 課題価値 / アイデンティティ / ジェンダー / 高校生 / 内発的目標 |
研究開始時の研究の概要 |
高大接続改革及びSDGs(特にジェンダー平等)の文脈を踏まえて,少ない負担感と所要時間で実施が可能な,生徒の自己理解と同時に教師の生徒理解を深めることに資する新しい測定項目を開発する。それを用いた調査により,コミュニティへの貢献や自己の成長などを目指す「内発的目標」を促進する教師の指導・支援やその環境条件について明らかにする。その際,外発的目標(経済的成功等を目指す)が内発的目標を促進する可能性についても留意し,地域・社会・文化的な背景と日常の様々な教育活動における経験内容,さらには,生徒の持つ目標と教員の持つ目標との一致・不一致などに着目しながら,内発的目標を促進する要因について検討する。
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研究実績の概要 |
高校生を対象として,自己の成長とともに他者とのつながりやコミュニティへの貢献などを目指す「内発的目標」と,名声や経済的成功などの獲得を目指す「外発的目標」に着目し,2021年度に開発した簡易な方法で測定する質問紙を用いて,新たな縦断的な調査を行った。具体的には,特色ある教育プログラムを多角的に展開している調査協力校において,任意参加となっているプログラムへの参加度が「内発的目標」「外発的目標」等に及ぼす影響について検討した。その結果,より多くのプログラムに参加している生徒は,入学当初(1年次)より「内発的目標」が高いこと,また,課題価値理論におけるコスト(負の価値,主観的な負担感)が低かったことから,余力がある生徒層であることが示唆された。加えて,プログラムへの参加を通して1年次後半から2年次にかけて「外発的目標」の上昇が見られること,その際にコストの得点が高まり余力が減少すること,それでもなお「内発的目標」が高い水準を維持していること等が明らかになった。いくつかのプログラムのうち,特にジェンダーの視点に着目した企画として,女性の研究者(大学院生)と高校生が交流する懇談会への参加者(男子を含む)の変化が顕著であることから,ロールモデルとの出会いが目標志向性を高める条件になりうることも示唆されるとともに,「外発的目標」が「内発的目標」を阻害せず,むしろ統合的な調整が促進されている可能性があることも示された。コストの得点変化を踏まえると,日常の授業等における負担感の少なさが,特色ある教育プログラムへの主体的な参加を可能にしている面もあると推察され,例えば校内成績が上位であるかどうか等,高校生活全体の中でのリソースの配分等と統合的調整との関係についても整理することが今後の課題として示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画に加えて,ジェンダーギャップ等に着目しながら,地域的条件を踏まえた内発的目標等の促進要因の検討を行うことにして研究期間を1年延長していた。その後,継続的な調査結果の分析を踏まえて,関連要因の整理と検討が必要であると判断したが,大規模な調査に向けての項目内容の再検討に時間を要しており,研究期間をさらに1年延長することとした。研究開始時点での計画からは大規模調査の実施が「遅れている」が,継続して実施している調査結果の分析を通して,当初計画をより具体的に掘り下げる形で拡張的な形での理論の整理が予定以上に進んでいる面があることを勘案し,総合して「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
地域的な要因を含めた検討を行うために,全国の高校生を対象としたオンラインによる調査を実施するとともに,必要に応じてインタビュー等の方法による質的な追加調査の可能性も模索したい。大学進学率等のジェンダーギャップに地域差が見られるが,具体的には,生徒の保護者の価値観やきょうだいの有無といった個別の条件に影響を受けている現象であると推察される。よって,保護者からの進学期待(抑制を含む)の観点を踏まえた調査項目づくりの検討を行いたい。また,学校風土等の校内環境にも着目する必要性を認識していたが,2022年度から2023年度にかけての縦断的な調査結果から,特に課題価値理論におけるコストの概念の位置づけを踏まえ,客観的な校内環境というよりはむしろ生徒本人にとっての主観的な校内環境,例えば,余力に影響を与えると想定される校内成績の位置づけ等を含めた形で,地域の特徴,主観的な校内環境,そして本人の目標内容志向性等を捉える大規模調査の実施を目指したい。
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