研究課題/領域番号 |
20K03380
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 東北文教大学 (2021-2022) 東北文教大学短期大学部 (2020) |
研究代表者 |
松田 浩平 東北文教大学, 人間科学部, 教授 (30199799)
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研究分担者 |
佐藤 恵美 東京富士大学, 経営学部, 教授 (20569975)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | パーソナリティ / 前頭脳血流 / 反応時間 / 個人内変動 / 類型化 / 前頭血流 / 人格特性 / 人格類型 / クラスタ分析 |
研究開始時の研究の概要 |
パーソナリティ評定を課題とし,生理・行動指標による客観指標から被験者の類型化を行い,人格特性論との関連性と新たなパーソナリティ研究の実証性を検討する。評定時の定量的データをさまざまな角度から検討するため,単純反応時間やいくつかの評定条件に分け,その過程をラップトップPCに接続されたバイタルモニタ(T7500M)で生理的指標を制御し,評定時の反応時間(E-Prime3)を行動指標として測定し,これらの定量的データをSPSSで解析する実験となる。生理・行動指標による客観的な定量的データと従来の質問紙法による心理指標としてのパーソナリティ特性との比較を行い,特性との関連性を検討する研究である。
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研究実績の概要 |
バイタルモニタにHEG(Hemoencephalography),EEG(脳波F1, F3)とEKG(心電図)を設定した。E-Prime3の制御による生理指標・反応時間の対面実験を実施した。手続きは,1.実験説明と書面による同意確認,2.POMS-Ⅱ,機器装着しHEG測定開始,3.主要5因子性格検査,4.唾液アミラーゼ測定,5.閉目安静3分,パーソナリティ特性語の音声・視覚提示の正誤反応時間として,6. 練習試行,7. 本試行(単純反応試行)として主要5因子より各4語の20語をマッチング条件6回とアンマッチ条件6回の計240試行,8.特性語の自己評定各5回計100試行,9.同文章提示の評定試行, 10. BIS/BAS質問紙,11. 唾液アミラーゼを測定,装置を外し終了。実施時間は,事前打合せと説明等を含め1名あたり60~90分。67名の参加者に実施。 HEGからは,手続き3~5,7~9における6条件の前頭脳血流をHEGで測定し,前頭脳血流の平均値を検討した。分散分析により6条件で全て有意差が認められた(F(5,363)=14.11, p.<.01)。閉目,質問紙とPCでのパーソナリティ評定条件で前頭脳血流に有意差を認めた。また評定条件による個人内変動からWard法により階層的に4クラスタを確認した。これらのクラスタは,相互に独立性が高く定量的で群内変動を許容すれば類型化が可能と確認した。 反応時間からは,特性語を聴覚刺激と視覚刺激を弁別でき,適合条件による反応時間の差が明らかとなり反応時間から個人特性の検出可能性を示した。さらに,特性語に対するパーソナリティ評定において参加者間で反応時間に個人間差をしめした。また,各特性によって反応時間が異なることが明らかになった。特に,協調性で反応時間が速く,外向性で反応時間が遅い傾向があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は東京都新宿区と山形市相互における出張および分担研究者と対面による装置構成の共同作業,実験デザイン,打ち合わせと機器のセットアップやチューニングも難しい状態が続いたがバイタルモニタの調整と実験準備を整えることまではできた。COVID-19への感染に注意しながら今年度からようやく対面実験が可能になった。研究の本拠地を本学としているため研究代表者ならびに分担研究者による実地での機器調整や実験デザインの確認に時間を要した。さらに,唾液アミラーゼの測定では細心の注意を要し,さらには不織布マスクを装着した状態でnIR-HEGおよび前頭葉脳波の電極等を装着することによる実験参加者への心理的負担や,実験前後には,装着機器の消毒ならびに接触部分への充分な洗浄を行う必要があり当初計画よりも実験に時間を要した。 分担研究者と協議しながら,東京と山形で併せて男性32名、女性35名、計67名の参加者に対して実施した。実施にあたっては,実験者効果やジェンダーバランスに配慮して分担研究者がインストラクターを務めた。山形市での実験では分担研究者が山形市まで出張し,東北文教大学3号館33研究室にて実施した。目標の70名には届かなかったが,この実験に伴う感染者を出すこと無しに2022年内で無事に予定数の実験を終えることができた。 引き続き,データセキュリティの関係から東京富士大学と東北文教大学のPCに保管しているデータは、SSDに記録して研究代表者が持ち運びデータの統合を行った。これまでに、アーチファクトの処理や反応時間の尚早反応ならびに遅延反応の処理を含めたモデル式による数量化を行った。令和5年(2023年)度については1年間の研究期間の延長を認めていただいたので詳細なデータ解析と報告書の作成にあたる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,詳細なデータ解析ならびに報告書の執筆作業にあたる。反応時間から,質問紙検査や面接および規定要因(因子,反応キー,個人間差など)との関連性を解析する。生理指標は,評定条件と脳血流・α波の左右同期・心電図などを用い,特性語への反応が扁桃体優位か前頭前野優位など反応時間では測定できない要因を検討する。これをもとに,異なる評定条件による生理・行動指標の変化を明らかにし,1)参加者内相対的変動,2)参加者間相対的変動,3) 参加者内相対的変動×参加者間相対変動で階層および非階層的クラスタ分析を行う。クラスタに含まれる参加者の生理・行動指標から特徴とクラスタ内での特性の変化を従来の研究結果と比較検討し報告書を冊子として作成する。 実験結果より,独立した特性間で生じる個人内変動による個人間差をクラスタ分析で類型化し,類似した特性内で生じる小さい個人間差を性格特性とし,従来からの特性論だけでなく新たに類型論を融合させた新たな相互作用に基づくパーソナリティ理論を検討する。HEGの個人内変動による個人差の検出は日本心理学会第87回大会で発表する。また反応時間の個人内変動による個人間差の検出は日本パーソナリティ心理学会第32回大会で発表する。さらに詳細な分析結果は,研究期間外となるが33rd International Congress of Psychologyで発表しそこでの討論結果をもとにBehavioral Sciences等に投稿したい。
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