研究課題/領域番号 |
20K03381
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 大分大学 (2022) 別府大学短期大学部 (2020-2021) |
研究代表者 |
向井 隆久 大分大学, 教育学部, 准教授 (30622237)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 問い生成 / 小学生 / 観察学習 / 社会科 / 道徳科 / 問題発見力 / 質問 / 深い学び / 児童 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、小学校の授業において深い学びにつながるような問いを、児童が生成する力を高める支援法の開発と、問いの生成プロセスの解明に貢献することを目指す。そのため主に以下の3点について調査・研究を行う。1. 児童の文脈構成力(学習内容や学習状況の展開を考える力など)を高めることで、学びを深める問いの生成を促す支援法の効果を検証する。2. 授業で児童が生成する問いと、日常生活で抱く問いとの比較分析を通して、授業に特有の問い生成に関わる困難さを明らかにする。3. 幼児から小学生及び大学生を対象に、日常や授業で発せられる問いの内容や構造の発達的変化を調べ、発達段階に応じた支援法を検討する。
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研究実績の概要 |
昨年度までの研究において,児童の問い生成力を高めるための支援策の開発に繋げるため,基礎的な問題の検討・検証を行ってきた。その成果の1つとして,児童は授業中に学びを深めるための「説明要求の問い」や「仮説・予測的な問い」「精緻化・発展的な問い」を生成することが難しいことが示された。またその原因として,子どもたちが上記の問いの具体的なイメージが持てていない,あるいは問う意義(学習効果)の認識が希薄であるという可能性について検討した。昨年度は小学4年生を対象に,上記の問いを含む5つのタイプの問いについて,問いの形式や一般的な具体例を示し,学びを深めるための効果(意義)の解説を行うことに加え,教師が授業中に発した問い(発問)を取り上げ,その問いのタイプや意義についても解説した。しかし,統制群よりも問い生成が向上することはなく,児童の問い生成の困難さは,単に問いのイメージや問う意義が把握できていないことが原因ではないことが示唆された。またこの結果は,児童は教師が頻繁に繰り返す問い生成を観察学習することが困難なことも示唆していた。 そこで令和4年度は,観察学習に関する文献研究を行い,観察学習(モデリング)の認知プロセスに関する理論的モデルなどを調べ,上記の研究の結果と突き合わせることで観察学習が困難であることの原因を検討した。その結果,観察した行動を認知的に分化・組織化することや再体制化することに難しさがある可能性や,結果的に産出される問い(行動)ではなく,直接観察が不可能である認知的な問い生成プロセスの学習に難しさがある可能性が示唆された。また,今年度は観察学習だけでなく,行動主義の学習理論から認知主義的,状況論的な学習理論への変遷について文献研究を行い,本研究で主張しようとしている問い生成に関する学習理論の位置づけを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画全体の主要な研究目的は,児童の問題発見力を高める支援法の開発に向けて,主に小学生を対象に(1)展望的な文脈構成課題の効果の検証,(2)授業における問い生成過程と日常生活における問い生成過程の違いの検討,(3)問い生成力の発達の調査を進めることであった。 ここまで,小学4年生が社会科と道徳科の授業において生成する問いの特徴や、問い生成における困難さに関する知見を得ることができ,さらに児童の問い生成の困難さの原因として考えられるいくつかの可能性について検証できた。これらの知見は、1つには児童が生成した問いの収集という意味で,上記の研究目的(2)と(3)の達成に、より直接的につながるものである。また分析の中で児童が問い生成の際に,教科(授業内容)の文脈に合わせて問う意義を考慮している可能性が推察されたことや,問い生成の困難さの原因について絞り込みにつながる検証を行えたことは,研究目的(1)を実施する根拠にもなり得る知見といえる。 一方、 研究目的(2)と(3)に直接関連してくる研究として,小学2年生、4年生、6年生を対象に、授業場面と日常場面のそれぞれで子どもたちが生成した問いを収集する調査や,幼児を対象とした園生活内での問い(質問)内容に関する予備調査が完了しており,今年度はデータ分析や追加のデータ取集を行う予定であったが,今年度は勤務先の変更に伴う研究環境の変化や対応などにより,調査・分析の進行が予定よりも遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度までに実施した研究で明らかになった知見に基づき,研究計画の主要目的(1)展望的な文脈構成課題の効果の検証,(2)授業における問い生成と日常生活における問い生成の違いの検討,(3)問い生成力の発達の調査をさらに進めていく。 目的(2)の授業場面と日常場面との比較は,予備調査からいくつかの手続き上の改善点が見えてきたため,改善策を考案し本調査実施を目指す。特に教科の違いによって問いの形式から違いが生じてくる可能性が明らかになったため,教科ごとの問いのデータを収集する必要がありそうである。これまで社会科や道徳で調査を行ない知見を得ているため,これらの教科に中心にデータ収集を行う。ただし,ここまでの研究で教科間での問いの比較から, 目的(1)を実施する根拠や,実施方法のヒントにつながる情報が得られつつあるため,この点にも留意して教科間比較も行なっていく。 この問題は目的(3)の問い生成力の発達を検討する際にもあてはまることである。園生活内での幼児の問いの調査は,予備調査で得られたデータを一度分析する。同時に目的(2)で得られる小学生の問いのデータ分析と合わせて,どういった類の問いが出現しているのかについてカテゴリー分けを検討し,年齢間で問いの特徴や出現頻度の違いなどを比較分析する。その際,今年度文献研究の中で,問いの分類に関する知見が得られたため,その観点も問いのカテゴリー分けに活用していく予定である。また今年度,学習理論や熟達化について幅広く文献研究を行ったため,その成果を生かして,問い生成の学習に関する理論化についても検討していく。さらに今年度は調査フィールドとしてお願いできそうな校園に通い,関係性を構築することもできてきたので,積極的に調査を進めていきたい。
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