研究課題/領域番号 |
20K03428
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
津田 恭充 関西福祉科学大学, 心理科学部, 准教授 (80635665)
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研究分担者 |
高沢 佳司 皇學館大学, 文学部, 准教授 (70781574)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 強み / 謙虚 / 人生満足度 / 主観的幸福感 / キャラクター・ストレングス / ポジティブ心理学 / ストレングス / 潜在的認知 / 潜在連合テスト |
研究開始時の研究の概要 |
「防衛的悲観主義」や「機能的なサイコパス」に代表されるように、ある認知や特性のネガティビティ(ポジティビティ)は普遍的というよりは可変的である。このことに基づき、本研究では、「強み」がポジティブな特性であるという前提に疑問を投げかける。 強みを扱う心理教育では価値観が関わる事柄を扱うことが多いため、受講者によっては価値観の押し付けを感じるなどのネガティブな影響を受ける可能性がある。 これらの背景を踏まえ、本研究課題では、強みや強みを伸ばすことを目的とした心理教育がネガティブな効果をもたらす条件を明らかにし、強みという概念についての新しい観点を提案する。
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研究実績の概要 |
強み(character strengths)は幸福感と関連する、ないしは強みを高めることで幸福感も高めることができると仮定されており、実際にそのことが多くの数量的研究によって確かめられている。ただし、謙虚さの強みは例外で、謙虚さと幸福感の関連に関しては正の相関を報告している研究がある一方で、ほとんど相関がないとかむしろ負の相関がみられるという報告もあり知見が一貫していない。これにはいくつかの理由が考えられるが、そのひとつの可能性として、謙虚さを自己報告によって測定しようとすると、謙虚な人は謙虚さを尋ねる質問自体に謙虚に回答してしまうという回答バイアスの存在が考えられる。そこで、どのようなときに謙虚さが幸福感と関連するのかを以下の2つの研究を通じて明確にした。
[研究1]上述のように、謙虚さを自己報告によって測定しようとすると回答バイアスが生じる可能性がある。そこで、そのバイアスを避けるために潜在連合テストによって謙虚さを測定する謙虚―傲慢潜在連合テストの日本語版を開発した。謙虚―傲慢潜在連合テストと他者評定によって測定した謙虚さは中程度ないしは強い正の相関を示し、謙虚―傲慢潜在連合テストの妥当性が確認された。
[研究2]自己報告式の質問紙によって測定した顕在的謙虚と潜在連合テストによって測定した潜在的謙虚がそれぞれ主観的幸福感とどのように関連しているかを調査した。分析の結果、顕在的謙虚は人生満足度(主観的幸福感の指標)と有意な相関を示さなかったが、潜在的謙虚は人生満足度と有意な正の相関を示した。年齢と性別を統制しても同様の結果が得られた。これは、謙虚は単なる社会的美徳ではなく、自分自身にとってもポジティブな行動特性であるという仮説を支持するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1で行った他者評定による謙虚測定には人的コストがかかり、オンライン等でのデータ収集も難しいタイプのデータであったため、新型コロナウィルスの影響により研究に遅れが生じていた。しかし、昨年度から対面による研究が本格的に可能となったため、研究に進展がみられた。今年度中には新たな研究に着手し結果をまとめることができる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では、主観的幸福感を測定するために先行研究にならってDiener(1985)の人生満足度尺度(Satisfaction With Life Scale)を用いてきたが、幸福感のとらえかたには文化差があるため、日本においてはこの尺度で十分に幸福感をとらえきれない可能性がある。例えば、アメリカではポジティブな体験や感情、能力などを有すれば有するほど幸福であると考える人が多いのに対して、日本ではそれらが「ほどほど」であるのがちょうど良いという考え方もある(e.g., Uchida & Kitayama, 2009)。そこで、今後はこうした幸福感の文化差を念頭に入れた研究を行うことを計画している。
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