研究課題/領域番号 |
20K03479
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 九州大学 (2020, 2022-2023) 福岡大学 (2021) |
研究代表者 |
錢 昆 九州大学, アジア・オセアニア研究教育機構, 准教授 (60736354)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 知覚心理学 / 文化心理学 / 認知心理学 / 文化間比較 / 異文化 / フィールド実験 / 錯視 / 錯覚 / フィールドワーク / 知覚 / 心理学 |
研究開始時の研究の概要 |
錯視とは,視覚における錯覚現象であり,基礎心理学の分野では多くの研究がなされてきた。錯視は低次の視覚情報処理過程で生じたものだと考えられ,錯視に関する先行研究の多くは,実験室ベースでの実験に基づくものであり,錯視に対する文化的コンテキストからの影響はこれまで検討されていない。 しかし,果たして錯視現象は高次の認知処理や文化的コンテキストに影響されるか。この問いを解明するために,本研究はフィールド実験という新しい手法を用いて,複数の文化的コンテキストにおいて錯視研究を実施する。タイ,フィンランド,ケニア,日本の4カ国での横断的比較研究を通じて,多文化環境における錯視現象の生起因を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は,フィールド実験研究を通じて錯視現象の文化比較を目的として進めてきた。予定していた最終年度としての今年度は,中国やタイでのフィールド実験などを実施できたが,研究開始の2020年度から始まった新型コロナウイルスの世界的流行の影響を受け,最初の2年間はフィールド調査ができなかった。その遅れを取り戻すために,コロナ禍収束後の昨年度から海外でのフィールド調査地を訪ね実験実施を行い,今年度もタイに複数回渡航し,予定していた実験をほぼ完了できた。しかし,フィールド調査に時間を多く使ったため,研究論文などの成果公表は間に合わなく,1年間延期することになった。 今年度は主にタイ,中国,日本で実験室実験とフィールド実験を行った。タイには6月に北部,8月に中部,中国では8月に華北,11月に華東地域でのフィールド調査を行い,日本では主に実験室実験とオンライン実験を行い,計200名以上の参加者からデータを集めた。これらの実験の結果をまとめた論文1編は現在審査中である。また,本研究に関連する共著論文1編,国際学会発表1報との業績もあげた。 本研究の次の発展として,タイ・ラオス北部の狩猟民族を研究対象とする実験心理学研究を考案し,日本学術振興会研究拠点形成事業(アジア・アフリカ学術基盤形成型)に採択されたのも今年度の一つの大きな実績であった。 以上のような学術的研究実績のみならず,錯視や関連する知覚心理学研究について小学生や一般社会へのアウトリーチ活動も積極的に実施し,今年度は4回の公開講座等を実施し,幅広い年齢層への研究成果の発信ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究は4年間計画であったが,最初の2年間はコロナ禍によって実施が大幅に制限された。3年目にあたる昨年度はコロナ禍の終盤で世界的な感染が収束していない中,いち早くタイや中国での予備実験を実施し,各方面での実験と研究が再開でき,4年目になる今年度は予定していた実験が全て終了したという,想定以上のスピートで推進することができた。結果としては1年延期することになったが,コロナ禍による影響を最小限に抑え,後半は早いスピードで実施できたため,「おおむね順調に進展している」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は1年間延期し,2024年度が本研究計画の最終年度である。前述のように,計画していた実験は全て完了したため,最終年度は研究成果の取りまとめとして,論文の執筆と学会発表に専念する。また,本研究の成果と経験を踏まえ,構築してきた共同研究ネットワークを活かし,次期計画として科研費基盤研究(A)を提案する。基盤(B)ではこれまでのタイ・フィンランド・日本での研究を継続し,ケニアでのフィールド実験も実現させ,さらに中国やベトナムなどの新しい調査地を追加する。また,本研究の一人での研究体制から複数研究者での共同研究チームに発展し,多文化状況での錯視研究の可能性を広げる。
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