研究課題/領域番号 |
20K03491
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
和田 博美 北海道大学, 文学研究院, 特任教授 (90191832)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 自閉症 / マウス / 超音波 / 母仔分離 / レジデント / イントルーダー / 社会的相互交渉 / マウスモデル / 超音波発声 / コミュニケーション / 自閉症マウス / B6.129S7-Dp1Taku / Chd8L |
研究開始時の研究の概要 |
自閉症は世界中で深刻な問題となっており、原因の解明や治療法を開発するため、自閉症患者と同じ遺伝子異常を持つ自閉症マウスが開発されている。しかしこれらの自閉症マウスでは、自閉症の主要な症状であるコミュニケーション障害の解明が不十分で、モデルマウスとしての妥当性に疑問がある。そこで申請者がこれまでラットのコミュニケーション研究で行ってきた解析法を自閉症マウスに適用し、社会的場面でのコミュニケーションと異常行動を対応づけることで、コミュニケーション障害の実態を明らかにする。自閉症マウスの妥当性を確立すれば、病態の解明や治療法を開発することも可能になる。
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研究実績の概要 |
ヒト15番染色体q11-13重複と同じ変異を持った7Hマウス、およびヒト14番染色体chd8遺伝子欠損と同じ変異を持ったchd8マウスを被験体として用いた。 実験1 新生仔マウスの超音波コミュニケーション: 新生仔マウスを母親から分離して超音波発声を測定し、母親を呼ぶコミュニケーションの変異を明らかにした。7Hは超音波の発声回数が爆発的に増大した。1回の発声が15~100ミリ秒と長く、2~3音節から成り、周波数を複雑に変化させる発声の頻度が増加した。chd8の変異は散発的であった。7Hは脳内セロトニンの減少が確認されている。セロトニン低下に加え母仔分離によって不安が亢進し、母親を呼び寄せる発声が爆発的に増大したと考えられる。 実験2 非接触型レジデント‐イントルーダー場面における成熟マウスの超音波コミュニケーション: レジデントとイントルーダーが雌‐雌、雄‐雌、雄‐雄の3場面で、イントルーダーに対するレジデントの対他個体コミュニケーションの変異を明らかにした。7Hでは、雌同士で発声回数が減少し、15ミリ秒以下の短い発声や周波数変化のない単純な発声頻度が増加した。雄雌ペアおよび雄同士には変異がなかった。chd8では、雄雌ペアは周波数を変化させる複雑な発声頻度が増加した。雄同士では2音節の発声や周波数を変化させる発声の頻度が減少した。雌同士には変異がなかった。7Hの雌同士の変異は新生仔期に見られた変異とは正反対であった。脳内セロトニンは成熟後も減少したままで、不安の高い状態が続いていると思われる。しかし成熟マウスは行動的対処(嫌な相手を避ける、逃げる)が可能なため、パニック様の発声が生じないと考えられる。7Hはレジデントが雌のとき超音波に変異が生じ、chd8はレジデントが雄のとき変異が生じた。遺伝子変異の影響には性差があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自閉症の原因遺伝子を受け継いだヘテロマウス2種類について実験を行った。新生仔期および成熟期における社会的相互交渉場面について、20匹/20ペア前後の十分な個体数を確保し、超音波コミュニケーションデータと動画データを収集した。 しかし新型コロナの感染拡大の影響があり、データの解析が遅れている。そのため令和5年度に繰越して解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に収拾した社会的相互交渉場面での超音波コミュニケーションデータと動画データを解析し、成果を国内外の学会で発表するとともに論文にまとめて学術雑誌に投稿する。
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