研究課題/領域番号 |
20K03502
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
田積 徹 文教大学, 人間科学部, 教授 (10410961)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | プラナリア / 塩水 / 馴化学習 / 学習の表出 / 条件性手掛り選好学習 / Y迷路 / 明暗弁別 / 条件性忌避学習 / 触覚刺激 / 明暗刺激 / 嫌悪刺激 / 消去 / 復位 |
研究開始時の研究の概要 |
プラナリアは動物の脳の基本型となる脳構造を持ち、各種神経伝達物質を産生していることから、学習・記憶の機能を有していると考えられる。プラナリアは以前に報酬などを得た場所の手掛かりを好むようになることが示されてきたが、嫌悪刺激を用いた場合にはその場所を避けるようになること(条件性忌避学習)を示した研究はない。 本研究では、プラナリアにとって嫌悪刺激である塩水を用い、条件性忌避学習の獲得や、獲得したことを消去させることを試みる。これらが可能であることが明らかになれば、動物実験の基準理念である「3Rの原則」のうち、低位の動物種の使用(Replacement;代替)を実現できる可能性がある。
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研究成果の概要 |
当初の計画課題では、塩水を嫌悪刺激として条件性場所手掛り忌避学習をプラナリアが獲得できることを示すことであった。この計画は塩水がプラナリアにとって嫌悪刺激であることが前提となっているが、塩水はプラナリアにとって報酬でも嫌悪でもなく、明るい領域を忌避する行動の馴化を妨げることが明らかとなった。このことから、条件性忌避学習の消去、復位、さらに、条件性忌避学習の獲得に関与する神経伝達物質の同定のための実験は遂行できなかった。しかし、研究計画を変更することによって、塩水は脱馴化を引き起こすトリガー刺激でなく、学習の表出を阻害する薬理学的な作用をもつ可能性があるという非常に興味深い知見が得られた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
近年、ヒトにおける塩分過剰摂取が認知症リスクを高めることが報告されている。また、塩分過多のエサを摂取したマウスは記憶の低下を示すことが報告されている。本研究では、塩水はプラナリアの学習の表出を阻害することが明らかにされた。この知見は学習や記憶への塩分のネガティブな効果が系統発生的に生物の進化の早い段階から存在することを示唆し、ヒトは何たるかを明らかにする学問領域である人間科学に、ヒトを進化的な観点から理解する視座を提供できたことに意義がある。また、プラナリアからヒトに共通する塩分のネガティブな効果に基づいて、ほ乳類などの実験動物の代替として、プラナリアを使用した実験を行える可能性がある。
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