研究課題/領域番号 |
20K03508
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
張間 忠人 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (30258313)
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研究分担者 |
和地 輝仁 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30337018)
五十川 読 熊本高等専門学校, リベラルアーツ系理数グループ, 特任教授 (80223056)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | アルティン完全交叉環 / レフシェッツ性 / 中心単純加群 / コロン安定な完全交叉 / ゴレンスタイン環のレフシェッツ性 / 余不変式環のレフシェッツ性 / Macaulay双対 / Macaulay双零化原理 / 完全交叉環のレフシェッツ性 / 高階弱レフシェッツ性 / Primitive Space / Specht polynomial / Hilbert Series / 完全交叉環 / 強レフシェッツ性 / 余不変式環 / シューア・ワイル双対性 / アルティン・ゴレンスタイン環 / Cohomological Blowup 代数 / 多項式で生成されるアルチンゴレンスタイン次数環 / 概均質ベクトル空間 / Specht ideal / Principal radical system / 代数学 / 可換環論 / 完全交叉 / ジェネリックイニシャルイデアル |
研究開始時の研究の概要 |
完全交叉環のレフシェッツ性問題に関する研究を行う。完全交叉環は強いレフシェッツ性をもつことが予想されている。我々の最終目標は、この予想を肯定的に解決することである。本研究では、まず、対称群の作用で不変な完全交叉環のクラスに注目しそのレフシェッツ性問題について、研究分担者、研究協力者の皆さんと研究を始める。
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研究実績の概要 |
張間、五十川、渡辺は、次数が連続するベキ和対称多項式で生成された完全交叉の中心単純加群に関する研究を継続した。その結果、第1次、第2次と順次、全ての中心単純加群を決定することができ、同時に、ベキ和対称多項式で生成された完全交叉は、変数でコロンを何度取っても(一般にはゴレンシュタイン性しか従わないが)完全交叉性が保たれる、コロン安定な完全交叉であることが分かった。これにより、ベキ和対称多項式で生成された完全交叉のみならず、それから派生する全ての完全交叉の中心単純加群が強いレフシェッツ性をもつ完全交叉であることが分かった。これらの成果を論文にまとめ投稿した。 和地は、引き続き、複素鏡映群の余不変式環のレフシェッツ性について研究を進め、新しい知見も盛り込んで再度論文投稿を行った。また、多項式から生成されるゴレンスタイン環のレフシェッツ性についても研究を継続した。多項式としてキルヒホッフ多項式を考えた場合は、城西大学小木曽氏、統計数理研究所中島氏との研究で進展があった。多項式として概均質ベクトル空間の相対不変式を考えた場合は、京都大学の元大学院生の長岡高広氏との研究成果が、論文として受理された。 本研究の最終目標は、“次数付きアルティン完全交叉環が強いレフシェッツ性をもつ”ことを証明することである。20世紀初頭にF.S.Macaulayによって導入されたMacaulayの双零化原理は最近になり、漸く体系的な研究が始まった。例えば、A. Iarrobino,C. McDaniel, A.Secelianu, J.Watanabe等の研究がある。これらの研究により、パラメータを含む完全交叉環のMacaulay双対を自由に扱えるようになった。渡辺は、2023年5月トロントにおける研究会でSpecht polynomialに関する恒等式を紹介し、その恒等式を一般化することが、2次式で生成されるアルティン2次式完全交叉環の強いレフシェッツ性の証明に繋がることを予想問題として口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
張間と五十川は、渡辺の協力のもと、研究実績の概要で述べた結果について、共著で論文投稿することができた。また、より一般的に、対称群が作用する完全交叉に関して、中心単純加群を計算することにより強いレフシェッツ性を持つ完全交叉のファミリーを生成する道筋が見えてきたので「おおむね順調に進展している」と判断した。 和地は、昨年度まではやや遅れ気味であった研究も、研究集会への出席や研究打合せを繰り返すことで、一定の進展が見られた。余不変式環のレフシェッツ性については、ほぼ研究が完成し、また特に、相対不変式から生成されるゴレンスタイン環のレフシェッツ性については、得られた結果の論文も受理されたため「おおむね順調に進展している」と判断した。 渡辺は、C. McDanielとL.Smithによる論文“Bott-Samelson algebras and Watanabe’s bold conjecture”を解読し多くの示唆を得た。これによって、Hochster-Eagon によって(1971年に)導入された“Principal Radical system”が極めて広い応用をもっていることに想い至り、取り分け、一次式の積を極小基底にもつ完全交叉環のDefect([次数の総和]マイナス[変数の数の2倍])をCohomological Blow Upによって下げることが解明できた事などにより「予想以上に進展している」と判断した。 以上の進捗状況から、全体としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
五十川は、渡辺の提案に基づき、ある漸化式をみたす対称多項式で生成された完全交叉に関する中心単純加群を決定し、その強いレフシェッツ性を導きたい。また、コロン安定な完全交叉については、第1次の中心単純加群が比較的容易に求められるのではないかと考えている。どのような場合に、コロン安定な完全交叉性が中心単純加群に遺伝するかについても解析を進めたい。 和地は、多項式で生成されるゴレンスタイン環のレフシェッツ性の研究について、多項式としてグラフのキルヒホッフ多項式を考えた場合の研究を中心に進める。特に、キルヒホッフ多項式が、ある概均質ベクトル空間の相対不変式になっている場合に良い振る舞いがあると思われる。この設定では、等質錐や概均質ベクトル空間の知見を必要とする研究であるため、引き続き、小木曽氏、中島氏との研究を行う。 隣合った次数をもつベキ和対称多項式はニュートンの恒等式と呼ばれる漸化式をみたす。ニュートンの恒等式に現れる係数を変えると、新しい対称式が定義されて、それがベキ和対称多項式と同様に扱えることが十分期待できる。また、コホモロジー的なBlow up Gorenstein 代数を考えると、これらの対称式で生成されるイデアルの「Defect」をさげることが可能である。(すなわち,2次式完全交叉環に埋め込みに近くすることが可能である。)渡辺は、今後の研究課題として、(1)漸化式で定義される不変式を生成系とする完全交叉がSLPをもつことを証明し、(2)「Central simple modules defined by a linear form」が、単項加群になる条件を求める。 張間もまた引き続き、五十川と渡辺の協力のもと、ある漸化式から導かれる対称多項式たちで定義される完全交叉の強いレフシェッツ性について考察を進める。
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