研究課題/領域番号 |
20K03515
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
権 寧魯 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (30302508)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 跡公式 / セルバーグゼータ関数 / 不定値直交群 / ジーゲルモジュラー多様体 / ワイルの法則 / ヒルベルトモジュラー群 / 高階の導関数 / 非ユニタリ表現付き跡公式 / 跡公式の単純化 / 跡公式の多重差分 / 純四次体 / 素測地線型定理 / 擬尖点形式 / 保型形式 / ゼータ関数 |
研究開始時の研究の概要 |
セルバーグ跡公式は保型形式やゼータ関数を研究するための強力な道具の一つであるが,扱う群の実階数が高い場合,跡公式自身が非常に複雑な形をしており,直接的な整数論への応用に向かない形をしている.本研究では,跡公式から得られる数論的情報を取捨選択する一つの手法として,「擬尖点形式」という試験関数を用いた“カルタン部分群”に沿った「跡公式の分割」の理論の構築,更なる一般化や細分化を研究する.さらに,得られた「跡公式の分割」を用いて,多変数のセルバーグゼータ関数,関連する保型形式,数論的な応用の研究を行う.
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研究実績の概要 |
階数1の局所対称空間に対して定まるセルバーグゼータ関数とその数論的応用はよく知られているが、これらを階数2以上の場合に一般化することを主目的として、現在まで研究を実施してきた。特に階数2以上、非コンパクトで体積有限な場合が、数論的応用において重要であるが、現在まであまり研究されてこなかった。過去の筆者らの研究により、(A) 実数体上と複素数体上の2次の特殊線形群複数個の直積を代数体の整数環成分の離散部分群で割った商空間、(B) 実数体上の3次の特殊線形群を有理整数成分の離散部分群で割った商空間、両者の場合に、1変数または2変数のセルバーグ型ゼータ関数を定義し、その解析的性質を明らかにすることで、代数体の類数分布の漸近公式などの数論的応用が得られていた。 今年度は、今まで扱っていなかった (i) 実数体上の階数1の不定値直交群複数個の直積を離散部分群で割った商空間、(ii) 種数2のジーゲルモジュラー多様体、の両者の場合に研究を実施した。 (i)では、直積因子が二つで次元の積が偶数の場合、1変数のセルバーグ型ゼータ関数が定義されて、全平面に有理型に解析接続されることがわかった。Kタイプとして“隣接する基本表現の組”を持つセルバーグ跡公式を組み合わせて、単純化した跡公式を得ることがポイントであった。 (ii)について、ある階数1の放物型部分群に共役な元からなる“1型双曲共役類”を定義し、それから構成される1変数のセルバーグ型ゼータ関数を定義した。このゼータ関数は自然な形のオイラー積を持ち、ある種の仮定のもとで、全平面に有理型に解析接続されることがわかった。 以上の結果をさらに精密化して、数論的な応用を得ることはこれからの課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
階数2以上の群に対するセルバーグ型ゼータ関数を新たに構成し、数論的な応用を得ることは研究の主目的のひとつであった。今年度新たに、 (i)不定値直交群ふたつの直積で次数の積が偶数の場合 (ii)種数2のジーゲルモジュラー多様体 の場合にも、Kタイプの異なる跡公式をいくつか組み合わせることにより、跡公式の単純化を導き、それらを用いてセルバーグ型ゼータ関数が定義できること。 以上のことが分かったので、研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
階数2の跡公式をより“直接的”に単純化するために、 階数2の群上の“特異点を持った”異なるKタイプをもつ一般化Whittaker関数の線形結合から「擬尖点形式」を具体的に構成する。構成された「擬尖点形式」を試験関数として用いて、跡公式を単純化して、セルバーグ型ゼータ関数を定義し、解析的性質を調べる。あわせて、数論的応用も研究する。 上記の跡公式の単純化と“階数1の非ユニタリ表現付きの跡公式”を比較検討する。これらと関係が深いと予想される“PollicottとSharpによるHigher Teichmuller理論に現れるゼータ関数”との関連をより詳細に調べたい。
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