研究課題/領域番号 |
20K03519
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田中 孝明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (60306850)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 代数的独立性 / 線形回帰数列 / 群作用 / 無限積 / Mahler関数 / 非対称性 / 超越数 / 空隙級数 / 代数学 / 数論 / 解析数論 / 超越数論 |
研究開始時の研究の概要 |
超越数の実例の構成は困難な問題である。特に、代数的独立であるような、即ち 有理数係数の多項式で表される関係式で結び付けられないような、多数の超越数を構成することは容易ではない。本研究は、代数的独立な超越数の実例を一つの関数を用いて最も効率良く構成することを目的とする。具体的には、一つの関数であって、その定義域内にあるすべての代数的数における値(或いは、そのような点における任意の階数の微分係数)をすべて併せても代数的独立となる、という著しい性質をもつ関数を構成する。
|
研究実績の概要 |
2022年度は以下の2課題について研究した。ひとつは微分完全代数的独立性を有する空隙的な冪級数の指数が成す数列に関して残された課題の解決であり、もうひとつは完全代数的独立性の拡張概念の実例となる多変数関数の構成であった。ここで、関数が完全代数的独立性を有するとは、その定義域内にある、代数的数を成分とするすべての点における関数値から成る無限集合が代数的独立となることをいう。さらに、そのような点における任意の階数の微分係数をすべて併せても代数的独立となるとき、その関数は微分完全代数的独立性をもつという。 前者の課題に関しては冪級数の指数が成す数列として最も簡単な形の線形回帰数列を与えることが課題であった。つまり、線形回帰数列が指数として現れる冪級数で定義される関数が微分完全代数的独立性を有するためには、指数を成す線形回帰数列が十分に複雑である必要があるが、最低限どの程度複雑なものであれば必要十分か確定させる問題が残されていた。研究代表者の2021年度までの研究において、そのような線形回帰数列の最も簡単なものは等比数列と等差数列の和であることが解明されていた。しかし、等差数列の公差の絶対値が2以上であって微分完全代数的独立性をもつ例の存在性が問題であった。2022年度の研究により、この問題が否定的に解決された。即ち、k番目の項の指数が 等比数列+k または 等比数列-k の場合に限り微分完全代数的独立性を有することが証明された。 後者の課題は現在進行中であるため詳細は下記「8.今後の研究の推進方策」欄において述べる。2022年度の成果は位数の小さい2面体群の作用に関して完全代数的独立性の拡張概念の実例となる多変数関数を構成できたことである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である「完全代数的独立性の高次元化」と「完全代数的独立性の拡張」に関して、前者は目的を達した。それらの結果をまとめた3編の論文のうち、微分完全代数的独立性を有する空隙的な冪級数の決定に関する結果をまとめた2編は、査読付き学術誌および研究集会の講究録に掲載された。残る1編は微分完全代数的独立性の高次元化である偏微分完全代数的独立性を有する多変数関数の構成に関するものである。偏微分完全代数的独立性とは、代数的数を成分とするすべての点における値および、そのような点における任意の階数の偏微分係数をすべて併せても代数的独立となる、という多変数関数としての著しい性質である。この論文では、任意の個数の変数を持つ複素整関数であって、偏微分完全代数的独立性を有するものが構成されており、学術誌に投稿し現在査読中である。 後者に関しては、具体的な研究対象の関数が確定し、位数の小さい2面体群の場合には研究代表者の先行研究で用いた手法の拡張により扱えることが分かった。
|
今後の研究の推進方策 |
補助事業期間の最終年度である2023年度は「完全代数的独立性の拡張」の研究に集中する。その研究内容を具体的に述べると次のようになる。多変数関数であって、ある有限群が当該関数の定義域に作用し、同一の関数値を与える点はすべてこの群作用による同一の軌道に属するものを考える。即ち、当該関数はこの群作用に関してinvariantである。そして、この群作用に関する軌道全体の集合上の写像が自然に定義される。この写像が「完全代数的独立性の拡張」となる性質を有するのは、代数点に代表される任意の相異なる軌道における値がすべて代数的独立となるときである。つまり、群作用に関する軌道全体の集合上で定義された、完全代数的独立性を有する写像の構成という形で、完全代数的独立性の概念が拡張される。2023年度は任意の位数の2面体群を固定したとき、その作用に関して完全代数的独立性の拡張概念の実例となる多変数関数を構成することを目指す。これは、非可換群の作用に関してinvariantであり、完全代数的独立性を拡張した性質を有する関数の構成という全く新しい方向性の研究である。
|