研究実績の概要 |
本年度も、線型符号のゼータ関数に関する研究を行なった。これは、1999 年に Duursma によって導入された比較的新しいゼータ関数であり、符号の重み多項式の母関数として特徴づけられるものである。特に興味が持たれている問題は、自己双対符号の場合に、よい符号はリーマン予想を満たすか、というものである。線型符号は応用数学、ゼータ関数は整数論という純粋数学に属するものであることから、応用、整数論両面で興味が持たれてきたテーマである。より具体的に述べると、extremal と呼ばれる一連の自己双対符号はリーマン予想を満たすか、という問題である。これは一部の系列を除き、完全には解決されていない。研究代表者らは、少し別の方向を探ることで、このゼータ関数の本質に迫ろうとしてきた。それは必ずしも線型符号と関連をもたない不変式への拡張である。その方向でも様々な興味深い性質が明らかとなってきた。例えば、MacWilliams 変換で不変という条件のみを課した場合には、非常に幅広い領域にリーマン予想を満たす不変式が存在することなどである (Chinen, 2008)。逆に符号と関連をもたない不変式の集合には、extremal と呼んでよい不変式で、リーマン予想を満たさないものがある、といったこともわかった(Chinen, 2019)。本研究期間全体では、自己双対符号の重み多項式にきわめて近い不変式において、実在の符号の場合と類似の性質を証明し(Chinen, 2020 および 2021)、種数が3および4の自己双対重み多項式の場合に、そのゼータ関数がリーマン予想を満たすための一つの必要十分条件を導出した(Chinen-Imamura, 2021)。このように一定の成果が得られた。本年度はこの方向をさらに推し進めるべく、一般の種数に関する結果を目指して研究を行なった。
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