研究課題/領域番号 |
20K03559
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
高野 啓児 香川大学, 教育学部, 教授 (40332043)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 相対尖点表現 / 対称空間 / 放物誘導 / 安定放物部分群 / 分裂放物部分群 / 放物誘導表現 / 対称多様体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、系統的な「相対尖点表現」の構成法を考案し、その知識によって対称空間に寄与する既約表現の分類を精密化することを目指すものである。対称空間に寄与する群表現はすべて、分裂放物部分群の相対尖点表現からの誘導で得られることが知られている。そこで基本要素となる相対尖点表現について、安定放物部分群の通常尖点表現からの放物誘導による構成を研究し、幾つかの例では対称空間に寄与する既約表現の完全分類まで可能であると考える。具体例として一般線型群の斜交・直交・ユニタリ対合の3種の空間を扱い、これらを手掛かりに一般の対称空間への拡張を探求する。
|
研究実績の概要 |
本研究は局所体上の対称空間に付随した「相対尖点表現」の系統立てた構成法を探求するものである。このクラスの表現は対称空間に付随するすべての既約表現のいわば building block となるものであり、対称空間の調和解析における基本構成単位とも捉えられる重要なクラスであるが、既知の実例が少なかった。本研究は相対的楕円トーラスと関係した特殊な対合安定放物部分群からの誘導表現によって通常尖点的でない相対尖点表現の新しい系列を組織的に提供しようとするものである。計画初年度にこの方向で、一般線型群の内部対合およびガロア対合の場合で得られた研究成果を発表した。2年目以降の課題は同様の手法を一般線型群の斜交・ ユニタリ・直交対合の場合に適用することであった。適切な放物部分群のリストアップの結果、Siegel型放物部分群からの1種類の系列しか得られず、これは斜交対合では発見済みのものであって本質的には新たな成果とは言い難い。通常尖点的でない相対尖点表現はこの一系列に限られるという可能性もある。計画2年目に、「対合分裂な放物部分群からの誘導はジェネリックには相対尖点的にならない」という一般的な定理を発表できており、この成果を用いて相対尖点的でないと判定できる誘導表現のクラスを調べ上げる研究も行った。しかし判定不能な例外箇所の詳細な状況を明らかにできず、成果は部分的なものにとどまっている。成功した少数の例とともに、直面しているこれらの困難とそれに対するアプローチの現状について、2021年6月の「早稲田整数論セミナー」および2022年12月の「大阪大学整数論・保型型式セミナー」で口頭発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の課題は、一般線型群の斜交・ユニタリ・直交対合で定まる対称空間に付随する非尖点的な相対尖点表現の系統立った構成である。これをある種の楕円トーラスと結びついた対合安定放物部分群からの誘導として得ようとしている。まずはこれらの対称空間で、対合安定な放物部分群とそのレヴィ部分群につくられる対称空間のリストアップ、誘導の際に付加されるレヴィ部分群の指標の計算などは遂行できた。次いで実際に相対尖点表現を与えるクラスの絞り込みを、ある種の楕円型トーラスとの関係から調べられるものと期待したが、斜交・ユニタリ対合で偶数次元の場合で本質的には既知の一系列だけしか残らず、奇数次元や直交対合では候補が消失してしまうことがわかった。非尖点的な相対尖点表現がその一系列に限られる、あるいは存在しないと判定できるなら、それはまた別の意味を持つ重要な結果となる。その可能性を視野に入れて調べることとした。 Offenによる研究で、対称空間に寄与する放物誘導を絞り込む手法が得られている。これを応用し、取り上げている具体的な対称空間で該当する放物誘導をリストアップすることを試みた。一方で計画2年目に得られた成果により、分裂放物部分群からの誘導はジェネリックには相対尖点的でないと判定できる。これらを用いて、対称空間に寄与する放物誘導の「色分け」を試みた。具体的に4次元一般線型群での内部対合、斜交/ユニタリ対合で詳しく状況を調べたが、これら低次元の場合でも判定不能な例外が残ってしまい完了できていない。また直交対合ではすべての相対尖点表現が通常尖点的になってしまうという極端な状況が推測され、それを検証するために Jacquet 加群の分析をおこなったが、Jacquet 加群自体だけでは情報が足りず、その上の不変汎関数の存在について調べ切ることができていない。総合的に進捗はやや遅れていると言わざるを得ない。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響による研究の遅れのため、本研究計画は再延長を申請し認められた。次年度も引き続き、一般線型群の斜交・直交・ユニタリ対合が定める対称空間に付随した相対尖点表現の分類を探る。残っている課題は、候補の一系列以外の安定放物部分群からの誘導がどれも相対尖点的でないと判定できるかどうか、である。対合のタイプごとに問題が異なり、以下のよう絞り込んでいる: (1)斜交対合ではSiegel型放物の尖点表現からの誘導以外はみな相対尖点的でないと予想される。このことはユニタリ表現であればLapid-Offenの研究に含まれていると思われる。一般の許容表現で確認するためにJacquet加群の分析を続ける。またDijols-Prasadの研究によりすべてがSiegel型放物からの誘導を経由するとの解釈もでき、そのLevi部分群の表現だけに絞って調べることも考慮する。 (2)ユニタリ対合では偶数次元の場合が上の(1)とほぼ同様と推測される。また奇数次元の場合は「相対尖点表現がみな通常尖点的」と推測され、下記(3)と並行して進めたい。 (3)直交対合については、「相対尖点表現がみな通常尖点的」という極端な状況を推測している。対合の標準化により放物部分群がすべて分裂的となってしまうので、相対尖点性の判定にすべての放物部分群を用いることになる。判定に用いる放物部分群は通常尖点性の場合と同じになり、Jacquet加群の不変汎関数の消滅と加群自体の消滅とで違いが生じている。後者から前者がしたがうのかどうかが問題だが、各放物部分群のLevi部分群での対合の形を具体的に調べこれについて吟味する。 以上について、一般の簡約群での「相対楕円トーラスを含む極大楕円トーラスの存在」といった構造論的な性質の表現論への反映も意識しつつ研究を進めたい。
|