研究課題/領域番号 |
20K03577
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
川村 一宏 筑波大学, 数理物質系, 教授 (40204771)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | バナッハ環 / C*環のK群 / 線形力学系 / カオス / 安定次数 / Interval exchanger / 線形作用素の力学系 / 安定化次数 / K-安定性 / AF環 / バナッハ環バンドル / 連結安定次数 / 一般安定次数 / 幾何学的トポロジー / 関数空間 / C*環 |
研究開始時の研究の概要 |
空間の幾何学的・解析学的性質と、その上の関数のなす環(関数環)の代数的・幾何学的・解析学的性質の間の関係を明確にすることは、幾何学・解析学における古典的・基本的な問題の一つである。本研究ではこの問題を、幾何学的トポロジー -野性的な空間を扱う手法の研究手法の一つ- を用いて考察する。また関数空間上の線形作用素の反復合成の漸近的な振る舞いと、底空間の幾何学の関係を明らかにする。これらの研究で得られた知見を非可換環、特にC*環の研究に応用することを目標とする。
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研究実績の概要 |
1. C*環の分類問題:「Pseudo-solenoids」は位相的シェイプ型が位相型と一致するという著しい性質を持つコンパクト距離空間族である。Pseudo-solenoidを底空間とする有限次元行列環のC*環としての同型類はK1群によって決定されることを証明した。この結果により、AF環(real rank 0)の分類がK0群によってなされるという古典的Eliottの定理の類似をreal rank1のC*環の族に対して証明できた。得られた結果をpseudo solenoidからAF環への連続関数環に拡張することで、AT環の分類理論に貢献することが今後の課題である。 2.C*環のK安定性はシェイプ同値によって保たれることを示した。この結果によりC*環のシェイプ理論を再検討する必要性が明らかになった。 3. 無限斉次樹木の理想境界上に双曲型グラフ同型写像が誘導する位相同型写像と連続な重み関数が定める荷重合成作用素のhypercyclicityおよびそのヴァリエーションについて研究した。Pavoneによる1992年の結果を以下の様に精密にまた一般化した:双曲同型写像の不動点における重みの値が適切な条件を満たせば、境界の自然な測度に関するLp空間上の荷重合成作用素はi) frequently hypercyclicかつii)Devaneyカオス的である。またiii) ヒルベルト立方体上のシフト作用素が自然に埋め込める、特に位相的エントロピーは無限大である。また双曲同型写像の有限族についてiv)吸引的不動点が相異なりかつ重みの値が適切なら、それらの誘導する荷重合成作用素はdisjointly hypercyclicであることを示した。これらの結果によってカオス的性質をもつ新たな荷重合成作用素を組織的に構成し、新たな視点と課題を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
線形作用素の力学系に関しては一定の進展を見ることができた。一方でC*環のシェイプ理論に関する系統的な研究および、力学系から決まるC*環の性質-特に相空間の次元が高い力学系が定めるC*環-を研究するための有効な研究手法を見出すことができていない。この点がやや遅れていると判断する理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は無限次元線形力学系の理論についての研究をさらに進めるため、前年度までに得られた結果をGromov双曲群の境界上の荷重合成作用素に拡張する。同時に有向樹木上の荷重シフト作用素の力学系的な性質によって定まるモジュライ空間の幾何学的な性質を研究する。また一般射影極限上のシフト作用素に付随するクロス積C*環の様々な次数と力学系的不変量、特に平均次元、との関係について精査する。 研究集会出席を再開し、位相幾何学、微分幾何学、関数解析学および力学系理論の研究者と対面による情報交換を進める。これらの情報収集のために経費を当てる。
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