研究課題/領域番号 |
20K03603
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
永野 幸一 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30333777)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | リーマン幾何学 / リーマン多様体 / CAT(k)空間 / アレキサンドルフ空間 / ホモロジー多様体 / アレキサンドロフ空間 / アレクサンドロフ空間 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,大域リーマン幾何学と幾何学的トポロジーの観点から,曲率が上に有界な測地的完備距離空間の幾何構造を研究する.研究対象はCBA(k)空間,すなわち各点がCAT(k)空間である近傍を持つ曲率がk以下の距離空間である.測地的完備なCBA(k)空間に対して測度距離空間の微分幾何学の手法が有効である.また境界の無いCBA(k)ホモロジー多様体は測地的完備である.研究主題は,測地的完備性に焦点を当てて,微分幾何学と位相幾何学の両者の手法を用いながら,測地的完備なCBA(k)空間の計量構造と位相構造の詳細を解き明かし,CBA(k)ホモロジー多様体などに対して大域リーマン幾何学を展開することである.
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研究実績の概要 |
当該研究の研究主題は,微分幾何学と位相幾何学の両者の手法を用いながら,曲率が上に有界な測地的完備距離空間の幾何構造を解き明かし,曲率が上に有界なホモロジー多様体などに対して大域リーマン幾何学を展開することである. 令和5年度は,令和4年度に引き続き,一つ目の研究課題として,曲率が上に有界な距離空間の壁型特異性の研究を推進した.局所コンパクトで曲率が上に有界な測地的完備距離空間の点がn次元壁点であるとは,その点における接空間が(n-1)次元ユークリッド空間と3個以上の点からなる離散距離空間上のユークリッド錐との直積空間に等長的であるときにいう.具体的な研究成果として,一般的なn次元壁点の近傍の位相特異構造と計量構造を詳細に記述する壁型特異性定理や,特異点集合の余次元が2以上であるための特徴付けに関する壁型正則性定理,さらに特異点集合の余次元が2以上であるCAT(1)空間に対する体積球面定理やCAT(0)空間に対する漸近的位相正則性定理などを示した.なお,本研究成果について単著研究論文を執筆中である.二つ目の研究課題として,塩谷隆氏(東北大学)と山口孝男氏(筑波大学)と共同で,曲率が上に有界な2次元測地的完備距離空間の幾何構造の研究を推進して共著研究論文を執筆した.具体的な研究成果として,曲率が上に有界な2次元測地的完備距離空間に対する多面体ホモトピー近似定理,および適切な曲率測度に関するガウス・ボンネの定理などを示した.三つ目の研究課題として,CAT(0)空間の漸近的位相正則性の研究において新たな知見を得た.具体的な研究成果として,測地的完備なn次元CAT(0)空間が(n-1)次元標準的単位球面と十分近いティッツ理想境界をもつならばn次元ユークリッド空間とリプシッツ同相であることを主張する漸近的幾何学的正則性定理を示した.なお,本研究成果について単著研究論文を執筆中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度において,当該研究の主題に沿った一つ目の研究成果として,曲率が上に有界な距離空間の壁型特異性の研究を推進して,壁型特異性定理や壁型正則性定理などを示した.本研究はおおむね研究課題開始当初の研究計画の通りに得られた研究成果である.また,二つ目の研究成果として,曲率が上に有界な2次元測地的完備距離空間に対して,多面体ホモトピー近似定理を定式化すること,および適切な曲率測度に関するガウス・ボンネの定理を確立することなどに成功した.本研究もおおむね研究課題開始当初の研究計画の通りに得られた研究成果である.さらに,三つ目の研究成果として,CAT(0)空間に対する漸近的幾何学的正則性定理を示した.本研究も研究課題の目的に沿う意義のある研究成果である. 以上の理由により,「おおむね順調に進展している」と評価する.
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は,令和5年度に引き続き,一つ目の研究課題として,曲率が上に有界な距離空間の壁型特異性の研究を推進して,すでに得られている壁型特異性定理 と壁型正則性定理を含む単著研究論文の完成と出版を目指す.本研究目標を達成することにより,曲率が上に有界な測地的完備距離空間の幾何構造を特異点集合の構造を含めて深く理解できることが期待される.二つ目の研究課題として,CAT(0)空間に対する漸近的幾何学的正則性定理を含む単著研究論文の完成と出版を目指す.本研究目標を達成することにより,曲率が上に有界な距離空間に対する大域リーマン幾何学の新たな展開が期待される. また令和6年度は,三つ目の研究課題として,カントール多様体の認識問題について研究を開始する.コンパクトで測地的完備な至る所n次元である曲率が上に有界な距離空間がn次元カントール多様体であることと,任意の反復方向空間が連結であるか2点集合であるという性質は同値であろうという問題である.この問題の解決のために,カントール多様体の壁点による特徴付けに取り組む.すなわち,コンパクトで測地的完備な至る所n次元である曲率が上に有界な距離空間が壁点を許容しなければ,n 次元カントール多様体であろうという特徴付けである.この特徴付けを用いて,カントール多様体の認識問題が帰納的に証明できることが期待される.さらに令和6年度は,四つ目の研究課題として,測地的完備性の同相写像保存性の問題について研究を開始する.曲率が上に有界な2つの距離空間が同相であり,一方が測地的完備であれば,他方も測地的完備であろうという問題である.この問題の解決のために,測地的完備性の位相的特徴付けに取り組む. これらの研究課題に取り組むことによって,曲率が上に有界な測地的完備距離空間に対して,その幾何構造を解き明かしていき,大域リーマン幾何学の展開を推進していく.
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