研究課題/領域番号 |
20K03608
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
境 圭一 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (20466824)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 埋め込みの空間 / Hochschild複体 / オペラッド / グラフ / 配置空間積分 / Vassiliev不変量 / Fox-Hatcherサイクル / Gramainサイクル / 埋め込みのなす空間 / operad / 多重ループ空間 / 配置空間 / Operad / Gerstenhaber代数 / Hochschildホモロジー / 有限型不変量 / 特性類 |
研究開始時の研究の概要 |
結び目理論は低次元トポロジーにおいて主要な位置を占めるのみならず,たんぱく質やDNAの構造解析に応用されるなど,自然科学全般においても重要な対象である.本研究では,結び目の分類において有用な「有限型不変量」について,結び目全体のなす空間の位相幾何学という大局的な立場から調べることを目的とする.結び目全体のなす空間にまつわる様々な幾何学的対象の「特性類」として有限型不変量を特徴づけることが目標である.
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き,埋め込みのなす空間,特にn次元Euclid空間内のlong knotと呼ばれるタイプの埋め込みの空間K_nについて,その位相幾何学的性質を,Vassiliev不変量との関連を意識した立場から調べた. 2023年度は,Julien Ducoulombier氏(Universite Paris 13)との共同研究で,Hochschild複体の変種にGerstenhaber構造を導入し,その性質を明らかにする研究を進めた.これまでの研究で,Hochschild複体へのlittle disks chain operadの作用を構成し,その系としてG-構造の存在を示すことに成功していた.一方で,Hochschild複体は余単体的空間のtotalizationのホモロジーを記述するものであり,totalizationには位相的なlittle cubes operadが作用することが知られている.2つのoperad作用の関係が課題であったが,これらの作用が導くG-構造が一致することを証明できた.このtotalizationの例として結び目の空間があり,本研究結果は結び目の空間に応用される.その場合,Hochschild複体は結び目の空間のホモロジー群を記述し,その双対としてVassiliev不変量の空間とも関わる. ホモロジー群上のG-構造の一致のみならず,Hochschild複体とtotalizationのチェイン複体がlittle disks chain operad上の代数として擬同型であることが期待される.これは今後の課題の1つである.この枠組みをさらに空間対に「相対化」することが目標で,それが完成した時点で論文を作成し投稿したいと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は埋め込みの空間の位相幾何学とVassiliev不変量の関連を明らかにすることである.Vassiliev不変量は埋め込みの空間のコホモロジー類の一種とみなせる.2023年度の成果は(コ)ホモロジー群の代数構造をHochschild複体により記述することを可能にするが,この結果はその一部にVassiliev不変量全体の代数構造の解明を含む.その意味で2023年度に得た結果はVassiliev不変量を調べる立場から重要である.2023年度の成果は,今後取り組みたい「相対化」への足掛かりとしても重要である.この「相対化」は絡み目の空間を含む空間対への拡張を念頭においたもので,結び目と絡み目のVassiliev不変量が相互作用する様子を捉える,といった応用も期待される.本研究においては埋め込みの空間が主な応用例となるが,同様にHochschild複体や余単体的空間のtotalizationにより表せる空間,例えば何らかの条件をみたす写像のなす空間であれば,同じような結論を導くことができ,幅広い応用が期待できる. 以上のような観点から,進捗状況としてはおおむね順調と考える.
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今後の研究の推進方策 |
既に述べたように,2023年度に得た結果の相対化が目標の1つである.応用例として絡み目の空間への結び目の空間の「作用」をHochschild複体の言葉で記述したい.そのために必要なswiss chees operad(これはlittle disks operadの相対版である)のモデルはA. Quesney氏により導入されたものがあり,これを使うことで解決の見通しがつくと考えている.また絡み目の空間への結び目の空間の作用はDucoulombier氏とE.Batelier氏により導入されたものを使う. またHochschild複体はグラフのなすチェイン複体の双対とみなせる.グラフに付随する配置空間積分により埋め込みの空間のde Rhamコホモロジー類を作れることは以前から知られているが,その非自明性はなお懸案のままである.双対的にホモロジー類を構成する方法に乏しいことが困難の原因である.Hochschild複体の代数構造を明らかにすることを通して,配置空間積分の非自明性を示すためのホモロジー類を構成することも目標の1つとしたい.
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