研究課題/領域番号 |
20K03631
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鄭 容武 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (20314734)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | ランダム力学系 / 大偏差原理 / 極限定理 / 力学系 / 周期確率測度 / 可微分力学系 / マルチフラクタル解析 / 相転移 |
研究開始時の研究の概要 |
大偏差原理を通じて力学系の熱力学形式論を展開する.力学系における大偏差原理の普遍性を示し,レート関数を解析することによって平衡状態や相転移といった熱力学形式論に関連した力学系の諸現象を解明する.さらに,そのアイデアをマルチフラクタル解析やランダム力学系の漸近挙動を理解するために応用する.その方法は, 国内外における情報収集ならびに関連分野の研究者との情報交換,研究協力者との研究打合せおよび数学的議論,上記の活動によって得られた研究結果の統合と論文執筆,成果発表からなる.
|
研究実績の概要 |
新型コロナウィルスの世界的流行により海外の研究者との対面での交流は昨年度に引き続き依然として叶わなかったものの,移動の制限が徐々に緩和され,国内での研究集会や研究打ち合わせは少しずつ行えるようになった. 今年度は特にランダム力学系の大偏差原理や極限定理について調べた.無限個のBernoulli写像から生成されるランダム力学系に対して,焼鈍型及び急冷型の大偏差原理が成り立つことを確かめ,北見工業大にて開催されたエルゴード理論研究集会において発表した.これは今までに大偏差原理が知られていなかったランダム力学系のクラスの具体例であって,ここで得られた考察は今後,ベータ変換や多項式写像族などMarkov性や一様双曲性を持たない写像族から生成されるランダム力学系の場合に,大偏差原理が成り立つための判定条件を得るために役立つものと考えている,この問題について研究集会等の機会を通じて高橋博樹氏(慶応義塾大),山本謙一郎氏(長岡技術科学大)等と議論を行った. さらに,中野雄史氏(東海大),Jens Wittsten 氏(Lund University, Sweden)との共同研究により,拡大写像のU(1)-拡張によって得られる部分双曲型写像族から生成されるランダム力学系に対して,急冷型中心極限定理や大偏差原理,局所中心極限定理といった種々の極限定理が成り立つことを示した.この結果について論文を執筆し,2023年1月 "Quenched limit theorems for random U(1) extensions of expanding maps", Discrete and Continuous Dynamical Systems 43 (1), 2023, 338-377 として公表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに高橋博樹氏(慶應義塾大),山本謙一郎氏(長岡技術科学大学),中野雄史氏(東海大)とJens Witten 氏(Lund University, Sweden)との共同研究によって,平坦な特異点をもつ単峰写像力学系,ベータ変換に代表される区分単調写像力学系,一様双曲性を持たないランダム力学系に対して,大偏差原理が成立するための判定条件に関する成果を得て3編の論文として発表することができたものの,マルチフラクタルや相転移現象の解析については当初予定していた結果が未だ得られていない. したがって,現時点で本課題の進捗状況はやや遅れていると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は,新型コロナウィルスの5類感染症への移行によって研究期間の最終年度にしてようやくコロナ禍以前のように制限なく移動ができるようになるものと期待している. これまでに取り組んできた決定論的あるいはランダム力学系に対して大偏差原理が成立するための判定条件を示す問題,マルチフラクタルや相転移現象の解析に加えて,力学系の大偏差原理に関連して Erdos-Renyi 法則の判定条件を与える問題に取り組みたい.そのために,これまで以上に多くの研究者との交流を深める.例えば,米国 University of Houston の Matthew Nicol 氏,Vaughn Climenhaga 氏と議論したい. また,今年度は研究代表者の勤務校である広島大学にてエルゴード理論研究集会を開催し,研究成果の発信や情報交換の場にしたいと考えている.
|