研究課題/領域番号 |
20K03638
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
河添 健 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 名誉教授 (90152959)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 非可換調和解析 / ヤコビ解析 / 特異積分論 / アトム分解 / クウォーク分解 / 実ハーディ空間 / アーベル変換 / ハーディ空間 / 半単純群リー群 / 特異積分 / Hardy空間 / Hausdorff作用素 / 表現論 |
研究開始時の研究の概要 |
研究計画で述べたように二つの方向がある。一つは変換の拡張であり一つは諸理論の構築である。変換に関しては1変数のアーベル変換から多変数のアーベル変換へ拡張する流れであり、諸理論の構築は既知のユークリッド空間の特異積分論の再構築からユークリッド空間では見られない特異現象の解析である。この二つ流れがクロスする形の研究である。期待される成果としてPaley-Wiener型定理に現れる留数積分項の表現論との結びつきをより具体的に記述できること、またKunze-Stein現象のようなユークリッド空間では見られない特異現象の新たな発見が期待される。
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研究実績の概要 |
最終年度においてはヤコビ解析で得られた特異積分論の理論を高次元化することが目的であった。しかしSU(n,m)の具体的な例においても難しく新たなアプローチを模索した。そのために改めてヤコビ解析の場合を振り返って理論を整えることから始めた。その結果、従来とは別の方法により実ハーディ空間H1を特徴付けることができた。具体的にはトリーベル・リゾルキン空間を用いた特徴づけであり、従来の方法よりは容易にアトム分解を構成することができた。さらにアーベル変換の逆変換をアトムに適用することにより、アトムの更なる分解としてクウォーク分解を導入することができた。このクウォークを用いて作用素の有界性を示す方法は新しい手法と言える。具体的な例として膨張作用素のH1有界性を証明することができた。ただしユークリッド空間の場合と異なりアーベル変換が分数積分を含むとき、若干定義域のH1空間を狭くする必要がある。 この事実は非常に重要である。ユークリッド空間の場合は、特異積分の有界性は、アトムに作用させたとき、それがアトムあるいはモレキュールに写ることにより示される。ヤコビ解析の場合、とくにアーベル変換が分数積分を含むときにこの事実が崩れる。これはアトムの局所性がアーベル変換により弱まることによる。そしてこのことは、アトムをクウォークに分解したときのクウォークの局所性に対応する。以上のことから、ヤコビ解析においてH1空間での特異積分論を論じる場合は、クウォークに作用させたときの有界性が本質的であることが分かった。今後の研究における大きな指針を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実績の概要で述べたように、ヤコビ解析の高次元化は非常に難しく、SU(n,m)の具体例を中心に進めているが、一般化には至っていない。とくにアーベル変換によりアトムの局所性が弱められること、原点中心のアトムとそうでないものがアーベル変換像からでは区別できないことが困難さの一因と考えている。この意味では、高ランクな半単純リー群において、ペリー・ウィナー型定理を精密化する必要を感じた。すなわち原点を中心としない球に台を持つ場合の球フーリエ変換像の特徴づけである。しかしこの課題も難解であり、多くの研究者が解析的な特徴づけを試みているが、よい成果は得られていない。以上のことから高ランクな半単純リー群における特異積分論の難しさの一因が、調和解析の出発点であるペリー・ウィナー型定理の解析に回帰した感じであり、その意味で研究の進捗がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
実績の概要および進捗状況のところで述べたように、特異積分作用素のクウォークへの作用を明確にすることおよび高ランクな半単純リー群におけるペリー・ウィナー型定理を精査することなどが、研究の遅れを取り戻す鍵となる。ともにブレークスルーが必要であり、もっとも期待しているのがソース作用素と呼ばれている微分作用素である。この作用素を用いることにより高ランクは半単純リー群上のペリー・ウィナー型定理を精査することができ、原点を中心としない球に台を持つ関数をとらえることができるのではないかと考えている。この部分が明らかになれば、当初の目標通りに、アーベル変換はユークリッド空間における調和解析と、半単純リー群上の調和解析をつなぐ変換なので、特異積分論を半単純リー群上に展開できる。とくに実ハーディ空間H1をトリーベル・リゾルキン空間を用いて特徴づけることにより、H1上での作用素の有界性に関する結果が得られるものと期待される。
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