研究課題/領域番号 |
20K03668
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
鬼塚 政一 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (20548367)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ダイヤモンドアルファ差分方程式 / h-差分方程式 / q-差分方程式 / 微分方程式 / 漸近挙動 / 有限長性 / ウラム安定性 / 擬軌道尾行性 / 定性的研究 / リヤプノフ安定性と振動性 / 有限長性とフラクタル次元 |
研究開始時の研究の概要 |
ダイヤモンドアルファ差分方程式の定性理論を構築し、後退、前進、中心差分方程式の定性理論を統一的に表すこと、及び、解の定性的性質の変化をパラメータαによって判別し、後退、前進、中心差分方程式の類似性・差異性を明確にすることを目的とする。特に、これまで取り組んできた解の定性的性質: (i) リヤプノフ安定性と振動性 (ii) 有限長性とフラクタル次元 (iii) ウラム安定性 について考究する。加えて、刻み幅がh>0のh-差分方程式の解の定性的性質と対応する常微分方程式のそれとの違いをhによって判別し、常微分方程式と同様の定性的性質を保存するhの幅を特定する。
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研究実績の概要 |
本年度は、ウラム安定性に関する学術論文6件、リヤプノフ安定性に関する学術論文1件が出版され、前年度に引き続き、多数の成果を得ることができた。特に、ダイヤモンドアルファ差分方程式のリヤプノフ安定性の結果を得たことで、大きな進展があった。差分方程式の刻み幅に対応するパラメターh、後退、前進、中心差分方程式を一般化するために導入されたパラメータα、そして、固有値に対応するλを用いて、安定性領域を明示するに至った。今回提示される安定性領域は、3種類あり、1つ目はλが実数である場合に限り、αλ-平面上に、漸近安定、安定、不安定の集合を特定し、安定性領域を明示した。2つ目はλが純虚数ηiの場合に限り、αη-平面上に、安定、不安定の集合を特定し、安定性領域を明示した。3つ目は、通常の前進差分方程式の場合によく知られる事実である「複素平面上のヒルガーサークル上、内部、外部に固有値λがあれば、それぞれ安定、漸近安定、不安定である」を拡張した安定性領域を得た。具体的には、ヒルガーサークルに対応する楕円を特定し、「楕円上、内部、外部にλがあれば、それぞれ安定、漸近安定、不安定である」ことを証明した。また、別の角度から捉えれば、ヒルガーサークルは前進差分方程式の虚部と呼ばれ、その内部は実部の負の部分、外部は実部の正の部分と呼ばれる。この度の成果により、ダイヤモンドアルファ差分方程式の虚部と実部を特定することに成功したと言える。これにより、後退、前進、中心差分方程式の虚部と実部に対する統一理論を確立することができた。さて、この結果以外にも2階線形微分方程式、2×2定数行列を係数にもつ微分方程式、クレロー型微分方程式、2次元非線形系、n次元の非線形方程式のウラム安定性に関連する結果、および、ある関数方程式のhyperstabilityに関連する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、D. R. Anderson氏(Concordia College, USA)との共同研究を推進し、そのうち2件が既に出版され、4件を投稿中である。さらに、田中敏氏(東北大学)との共同研究が結実し、1件を投稿中である。また、Iz. El-Fassi氏(S. M. Ben Abdellah University, Morocco)との共著論文2件が既に出版されており、その内1件は、A. Najati氏(University of Mohaghegh Ardabili, Iran), T. M. Rassias氏(National Technical University of Athens Zografou Campus, Greece)との共著論文である。また、El-Fassi氏とは2件を投稿中である。加えて、既に鬼塚の単著論文2件が出版されている。さらに、本年度は、国際会議 Equadiff15 において常微分方程式の分野における招待講演を成功させた。この集会での講演がきっかけとなり、L. Backes氏(Universidade Federal do Rio Grande do Sul, Brazil), D. Dragicevic氏(University of Rijeka, Croatia), M. Pituk氏(University of Pannonia, Hungary)との多国籍共同研究を実現し、共著論文1件がオンライン上で出版された。 上記をまとめると、7件出版、7件投稿中となり、当該年度は予想以上の成果が得られ、研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ダイヤモンドアルファ差分方程式を中心に、h-差分方程式、q-差分方程式のウラム安定性の研究を推進する。2023年度は、国際会議 The 28th International Conference on Difference Equations and Applications (ICDEA 2023) において、特別セッション「Stability Theory for Difference Equations」を世話人の一人として運営予定であり、また、ダイヤモンドアルファ差分方程式の安定性領域(Stability regions for a diamond-alpha difference equation)について講演予定である。本研究が世界的に注目を浴びるチャンスであるので、入念な準備を行い、特に、差分方程式のリヤプノフ安定性やウラム安定性に関して、活発に研究を推進したい。また、ICDEA 2023 では、これらの安定性以外の定性的研究の情報収集にも注意を払い、この講演の機会を有効に活用したい。加えて、昨年度に引き続き、微分方程式のウラム安定性については多くのアイデアがあるため、今後も研究の発展が期待できる。ダイヤモンドアルファ差分方程式のみならず、常微分方程式の安定性の研究も強く推し進めることを目標とする。
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